ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

書誌情報
第5章 放射線療法

 
A.外照射
CQ6  〔効果と治療成績〕外照射と前立腺全摘除術に治療効果の差はあるのか?

推奨グレード B
局所限局性前立腺癌に対する根治的外照射後の生化学的非再発生存率(bRFS)は前立腺全摘除術や小線源治療と同等である。
推奨グレード C
局所進行性前立腺癌に対する根治的外照射の治療成績は内分泌療法併用や線量増加により向上しつつある。

 背 景
旧来の外照射はX線シミュレーションを用いた二次元的照射で50-70Gyの低線量を照射していたため,生化学的非再発生存率(biochemical relapse free survival:bRFS),合併症ともに満足できる成績ではなかった。しかし,安全に高線量を照射できる三次元原体照射(3D-CRT)や強度変調放射線治療(IMRT)が普及しはじめ,線量の増加とともに治療成績の向上が報告されている。

 解 説
50-70Gyの低線量で行われていた旧来の放射線治療の成績は満足できるものでなく,局所限局性前立腺癌に対するこの時代の治療成績は他の治療法の報告と比べて劣る傾向があった。Kubanら1)(III)の報告によると,T1b-T2の多施設4839例に対して60Gy以上照射した結果,生化学非再発生存率は5年で59%,8年で53%であった。
近年,ITなどの技術革新によって三次元原体照射(3D-CRT)や強度変調放射線治療(IMRT)などの新しい照射法が可能となり,障害を増加させずに安全に高線量を照射できるようになったため,治療成績の改善が明らかになりつつある。Pottersら2)(III)の報告によると,T1-T2の1819例に対する外照射単独療法の成績は,70Gy以上の外照射療法(EBRT)で7年生化学非再発生存率が77%であり,小線源治療の74%,前立腺全摘除術の79%とほぼ同等であった。Kupelianら3)(III)のT1-T2の2991例に対する治療成績比較(21%にネオアジュバント内分泌療法施行)では,7年生化学非再発生存率が前立腺全摘除術:76%,72Gy未満の外照射療法:48%,72Gy以上の外照射療法:81%,小線源治療:75%,小線源治療と外照射療法併用:77%であり,72Gy未満では成績不良だが72Gy以上の外照射であればいずれの治療とも同等の成績であった。これらの遡及的研究により,T1-2症例の生化学的非再発生存率は前立腺全摘除術や小線源治療と同等であると認識されている。
局所進行性前立腺癌に対しては,AkakuraらがB2およびC期の100例を対象として60-70Gyの放射線治療と前立腺全摘除術(ともに再発まで内分泌療法併用)の成績を比較した無作為化比較試験を報告しており,初期の報告では無増悪生存率,疾患特異生存率ともに有意に放射線治療が劣っていた4)(II)が,長期の経過観察にて10年における臨床的非再発率,PSA非再発率,疾患特異生存率,全生存率は,いずれも両群間に有意差を認めなかった5)(II)。前立腺全摘除術との無作為化比較試験は他にないが,局所進行性前立腺癌に対する根治治療として,欧米の実地臨床では内分泌療法を併用した放射線治療が一般的となっている6)
一方,さらなる線量増加による成績向上も報告されている。Pollackら7)(II)のT1-T3の305例に行った70Gyと78Gyの無作為化比較試験によると,6年生化学的非再発生存率はそれぞれ64%と70%であり,PSA>10ng/mlの群でのみ線量増加効果が認められた(43%vs62%)。Zelefskyら8)(III)の単施設の遡及的研究によると,T1c-T3の1100例に対して3D-CRTもしくは強度変調放射線治療IMRTを施行し,低リスク群(治療前PSA≦10ng/ml,stageT1-2,Gleasonスコア≦6の3指標が合致),中リスク群(1指標のみ逸脱),高リスク群(2指標以上逸脱)の5年生化学的非再発生存率は,75.6-86.4Gy照射群ではそれぞれ90%,70%,47%であり,64.8-70.2Gy照射群の77%,50%,21%に比べていずれのリスク群でも高線量群で有意に高かった。
高線量療法はより有効か,標準線量と同様に安全かを証明するために,RTOGでは3D-CRTによる72.93Gyと82.28Gyの第III相比較試験(RTOGP-0126)が進行中であり,結果が注目される。


 参考文献
1) Kuban DA, Thames HD, Levy LB, et al. Long-term multi-institutional analysis of stage T1-T2 prostate cancer treated with radiotherapy in the PSA era. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2003;57:915-28.
2) Potters L, Klein EA, Kattan MW, et al. Monotherapy for stage T1-T2 prostate cancer:radical prostatectomy, external beam radiotherapy, or permanent seed implantation. Radiother Oncol. 2004;71:29-33.
3) Kupelian PA, Potters L, Khuntia D, et al. Radical prostatectomy, external beam radiotherapy<72 Gy, external beam radiotherapy>or=72 Gy, permanent seed implantation, or combined seeds/external beam radiotherapy for stage T1-T2 prostate cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2004;58:25-33.
4) Akakura K, Isaka S, Akimoto S, et al. Long-term results of a randomized trial for the treatment of Stages B2 and C prostate cancer:radical prostatectomy versus external beam radiation therapy with a common endocrine therapy in both modalities. Urology. 1999;54:313-8.
5) 赤倉功一郎,鈴木啓悦,井坂茂夫,他. 前立腺癌治療戦略 局所進行前立腺癌に対する前立腺全摘除術+内分泌療法と放射線外部照射+内分泌療法と比較する無作為化比較試験の長期成績.日本癌治療学会誌.2004;39:313.
6) Prostate Cancer(PDQ®):Treatment. Physicians Data Query(PDQ®)National Cancer Institute:http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/treatment/prostate/HealthProfessional/.
7) Pollack A, Zagars GK, Starkschall G, et al. Prostate cancer radiation dose response:results of the M. D. Anderson phase III randomized trial. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2002;53:1097-105.
8) Zelefsky MJ, Fuks Z, Hunt M, et al. High dose radiation delivered by intensity modulated conformal radiotherapy improves the outcome of localized prostate cancer. J Urol. 2001;166:876-81.

 

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