ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第3章 治療総論


6 待機療法

(4)限局性前立腺癌に対するPSA監視療法

さらに今日ではPSAによるモニタリングが一般的となっており,より早期の前立腺癌に対し根治療法を即座に施行した場合,あるいはPSAによる経過観察を行い浸潤性前立腺癌になる前に根治療法を施行した場合との比較が検討されている。どのような症例がPSA監視療法の適応になるかはいまだ一定の見解はないが,Gleasonスコアが6以下でPSAが20ng/ml以下,臨床病期T1-2が一つの目安となるだろう。期待余命および針生検における癌の広がりも考慮の対象となる。経過観察項目としては3〜6カ月ごとの直腸診とPSAのチェックが必要であり,必要に応じて再生検を施行すべきである。二次治療に移行するタイミングとしてはPSAの倍加時間を考慮した報告が多く倍加時間が2年以内の症例については二次治療に移行している割合が多いようである4),5)(III)
PSAテストが普及するにつれlow riskの前立腺癌が多く発見される傾向が報告されている。しかし米国のデータではPSA監視療法を選ぶ人はむしろ減少してきている。このPSA監視療法選択比率が減少した分は小線源治療と内分泌療法選択比率の増加となっている6)(III)。治療法選択の変化の背景には,治療法選択に際しての医療側の要因と患者側の要因があると思われるが,QOL調査を含めた今後の詳細な解析を待つ必要がある。各種治療法間のQOLの比較に関しての情報はまだ乏しいが,米国での800例あまりの横断的解析では,PSA監視療法群は前立腺全摘除術群にくらべSF-36の8つの下位尺度のうち身体機能と全体的健康感で有意に低下していた。しかし,放射線外照射や内分泌療法群では8つの下位尺度のほとんどで前立腺全摘除術群より有意に低下していた。このことからPSA監視療法中の健康関連QOLの低下が,必ずしもPSA監視療法の選択率の低下の直接の原因になっているとは考えにくい7)(III)。癌を告知された状態で,何も治療を開始しない不安感を患者が抱くことが要因の一つとして考えられるが,PSA監視療法を選択するか否かは医師側の説明に大きく依存するだけに8)(IV),患者へのカウンセリングに有用な科学的情報,特に日本人での情報の蓄積が急務と考えられる。現在日本人患者においても,小病巣・高分化癌と推定される症例に限って,一定の選択規準を設けて,PSA倍加時間をモニタ-しながらPSA監視療法に関するfeasibility studyが進行中である9)(III)

 

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