ガイドライン

(旧版)エビデンスとコンセンサスを統合した潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン ―難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班 プロジェクト研究グループ

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この診療ガイドラインについて


10.ガイドラインの問題点と今後の課題

今回のガイドライン開発ではエビデンスとコンセンサスの統合を図った。エビデンス・レベルと推奨グレードとの相関が直線的でないという批判もあろう。順序として先に文献情報を収集した後、これを基に診療ステートメントを作成した上で専門家がその適切性を評価した。評価に際して各項目の引用文献の構造化抄録とエビデンス・レベルを付記したので、エビデンスを無視した個人的見解のみによる評価とは考えがたい。さらに推奨グレード決定の段階で、再度エビデンス・レベルが介在するため、結果として推奨グレードにはエビデンスが十分に反映されていると考えられる。
一方、推奨グレードがエビデンス・レベルのみに規定されていない利点も見出せる。今回のエビデンス・レベルの設定は純粋に研究デザインのみを検討した結果であり、研究の質まで評価するに至らなかった。また優れた研究から得られた結果であっても実際上あまり有用とは考えられない診療行為もある。逆にエビデンスが不足していても有用と考えられる診療行為や、もはや自明との理解で臨床研究を欠く診療行為もある。これらを適切に取捨選択する上で、専門医による評価を推奨グレードに反映させることは有用と考えられる。さらに実際の診療から大きく逸脱せず、公表後の適用コンプライアンスが高まることも期待できる。
今回のガイドライン開発のために収集された文献情報は過去20年の英語論文が中心であり、それ以前の原著研究や英語以外の論文は直接引用されていない。現行の標準的診療行為の中には20年以上前の研究に基づくものが含まれており、また日本語論文を包括していない点も批判の対象となろう。この点を少しでも是正するため、UCの診療における既存のガイドラインや総説論文を参照し、重要な記載や引用文献をステートメントに反映させた。また主要論文の欠落の有無の指摘を専門家パネルに依頼し、情報の網羅性を高めるよう努めた。
本ガイドラインはプロジェクト研究グループにより作成され研究班内部の専門医の審査を経た段階であり、外部審査を検討中である。利害関係を有する団体との調整や診療現場における試用による有効性の確認も今後の課題である。
診療ガイドラインは新しいエビデンスの蓄積と共に見直しが必要となる。UCの診療における臨床エビデンスが今後どのように変貌するかは不明であるが、診療ガイドライン開発の原則に従い公表後3年を目処に改訂する必要があると考える。改訂に際しては診療現場における評価も検討対象とするため、利用者からの建設的なフィードバックを期待したい。

 

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