ガイドライン

(旧版)エビデンスとコンセンサスを統合した潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン ―難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班 プロジェクト研究グループ

書誌情報
 
この診療ガイドラインについて


1.発刊にあたって

厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」
主任研究者:
日比 紀文
慶應義塾大学医学部 消化器内科

炎症性腸疾患は、根本的な原因は明らかとなっておらず、いまだ根本的治療も確立されていないため、治療に難渋する難治例や手術が必要となる例も少なくない。特に患者の多くが青少年者であるために、仕事、学業や生活に支障を来してQOLが低下することが多く、患者数の増加もあり、社会問題となっている。
本研究班では主に臨床面から病因や増悪につながる因子を追求し、新しい治療法の開発および予防法の確立をはかることを目的とし、本症患者のQOL向上に努めるとともに、正しい医療情報の伝達・普及にも力を注いでいる。その一環として、本研究班では診断基準、治療指針案の改訂やPouchitisの内視鏡アトラスの作成を行い、さらにクローン病肛門病変、癌化サーベイランスと内視鏡などの各種アトラスの整備も進めている。
この度、上野文昭先生を中心とするプロジェクト研究グループにより潰瘍性大腸炎の診療ガイドラインが作成され、その成果を発刊することとなった。本ガイドラインはエビデンスのみに偏ることなく、専門性の高い潰瘍性大腸炎の診療の特徴に鑑み、科学的に形成された専門医のコンセンサスを統合させることで、より実際の診療の場で利用しやすいガイドラインとなっている。
多くの方々に本ガイドラインを参考していただき、今後の診断・治療ならびに患者さんのQOL向上に繋がることを切に願っている。



プロジェクト研究グループ
責任者:上野 文昭
大船中央病院

昨今エビデンスに基づいた診療ガイドラインが世界の趨勢となり、わが国のIBD診療においてもこの動向を無視できなくなってきた。しかし病態が複雑で新しい知見が続々と得られているIBDでは、専門医の意見も十分に汲み入れることが必要と考えられる。詳細はガイドライン前半部分の記載を参照していただきたいが、本ガイドラインの基本はエビデンスとコンセンサスの統合である。
エビデンスとコンセンサスという異質なものを統合することには異論もあろう。しかしながら、あらゆるガイドラインの推奨指標には、最終的に作成者の意見が介在しているのも確かであり、なおかつその部分は不透明である。本ガイドラインでは専門家の意見を取り入れながらも、エビデンスとコンセンサスの対比が明瞭な、透明性の高い推奨グレードを設定したことが際立った特徴といえる。
開発当初から標準的なガイドラインの規準を遵守しながら、科学的妥当性を保つように努めた。しかも実際の臨床における判断も反映しているため、利用コンプライアンスも十分に維持されたガイドラインであると考えている。
言うまでもなくガイドラインはあくまでも診療の支援ツールである。診療現場の医師の裁量を規制することは目的に反するので注意されたい。個々の症例において最良の判断を下すために、健全に利用されることを望む次第である。
長い間にわたり大変な作業にご協力いただいた作成委員の方々に心からの謝意を表したい。特に今回の特徴ある開発手法につき仔細にご教示いただいた尾藤誠司氏のご尽力なしには、このガイドライン開発は成し得なかったことを申し添えたい。このガイドラインが適正に使用され、多くの潰瘍性大腸炎患者のアウトカム改善に貢献することが作成グループ全員の願いである。

 

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