ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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第2章 診断およびサーベイランス


第1節 サーベイランス

CQ5 肝細胞癌の危険因子を有する症例に対する定期的スクリーニングは,肝細胞癌患者の予後を改善するか?

推 奨
定期的な肝細胞癌に対するスクリーニングによって,早期に肝細胞癌が検出され,根治的な治療につながる。また予後改善効果をもたらす可能性がある。
(グレードB)

■サイエンティフィックステートメント
肝細胞癌に対する定期的なサーベイランスが,予後改善効果をもたらす可能性を示したランダム化比較試験(RCT)が1報(LF106251) Level 1)報告された。B型肝炎ウイルス感染症例において,6カ月毎にAFP測定と超音波検査による定期的サーベイランスを行った群では,未施行群と比較してより小結節の段階で発見され,肝切除可能症例が有意に多く,生存率の改善を認めた。また死亡率も37%改善した。
またRCTではないが肝硬変症例に限定したprospectiveな検討(LF019822) Level 2a)でも超音波検査とAFP測定による定期的サーベイランスは生存期間延長効果をもたらし,またlead time biasを補正して検討したretrospectiveな検討(LF100863) Level 2b,LF108494) Level 2b,LF102745) Level 2b)でも定期的なサーベイランスが生存率の改善をもたらしたと報告しており,定期的サーベイランスが予後改善効果をもたらす可能性が示された。
また,サーベイランスによる肝細胞癌の早期発見が根治的な治療を受けることにつながるかを検討すると,慢性肝炎症例において,定期的にAFP測定,超音波検査を用いたサーベイランスを受けて検出された肝細胞癌は,サーベイランスを受けず有症状で検出された肝細胞癌と比べ,肝切除術や穿刺局所療法,TACE等の根治的治療が可能である症例が多い(LF021146) Level 3,LF038227) Level 3,LF106251) Level 1,LF100863) Level 2b,LF019822) Level 2a)。しかし定期的サーベイランスを施行しても肝切除の機会が増えないとの報告(LF039058) Level 2a)もある。

■解 説
肝細胞癌サーベイランスの有用性が真に示されるためには,定期的なスクリーニングで早期発見が可能で,早期発見によって根治性の高い治療が施行でき,さらに予後の改善がもたらされることが必要である。肝細胞癌のサーベイランスにおいて,これらの条件を満たした論文は少数にとどまり,慎重に結論づける必要があると思われる。
慢性肝炎と肝硬変症例の違いによるサーベイランスの有効性を直接比較した論文はなく,またB型慢性肝炎とC型慢性肝炎の違いや,性別,年齢,アルコール摂取の多寡など危険因子の違いによるサーベイランスの有効性の違いを直接比較した論文もない。それぞれの報告でのサーベイランス対象は少しずつ異なっており,その点を踏まえたうえで解釈することが求められる。肝発癌の年率から検討すると,肝硬変症例が多く含まれていた検討で肝細胞癌発生率が高く,肝細胞癌高危険群に対する定期的スクリーニングによって,肝細胞癌が単発,小結節で検出される頻度が高まり,根治的治療につながるとの報告が多い。


■ 参考文献
1) LF10625 Zhang BH, Yang BH, Tang ZY. Randomized controlled trial of screening for hepatocellular carcinoma. J Cancer Res Clin Oncol 2004;130(7):417-22.
2) LF01982 Bolondi L, Sofia S, Siringo S, Gaiani S, Casali A, Zironi G, et al. Surveillance programme of cirrhotic patients for early diagnosis and treatment of hepatocellular carcinoma:a cost effectiveness analysis. Gut 2001;48(2):251-9.
3) LF10086 Trevisani F, Cantarini MC, Labate AM, De Notariis S, Rapaccini G, Farinati F, et al. Surveillance for hepatocellular carcinoma in elderly Italian patients with cirrhosis:effects on cancer staging and patient survival. Am J Gastroenterol 2004;99(8):1470-6.
4) LF10849 Tanaka H, Nouso K, Kobashi H, Kobayashi Y, Nakamura S, Miyake Y, et al. Surveillance of hepatocellular carcinoma in patients with hepatitis C virus infection may improve patient survival. Liver Int 2006;26(5):543-51.
5) LF10274 Yu EW, Chie WC, Chen TH. Does screening or surveillance for primary hepatocellular carcinoma with ultrasonography improve the prognosis of patients? Cancer J 2004;10(5):317-25.
6) LF02114 Yuen MF, Cheng CC, Lauder IJ, Lam SK, Ooi CG, Lai CL. Early detection of hepatocellular carcinoma increases the chance of treatment:Hong Kong experience. Hepatology 2000;31(2):330-5.
7) LF03822 Tang ZY, Yu YQ, Zhou XD, Yang BH, Ma ZC, Lin ZY. Subclinical hepatocellular carcinoma:an analysis of 391 patients. J Surg Oncol Suppl 1993;3:55-8.
8) LF03905 Colombo M, de Franchis R, Del Ninno E, Sangiovanni A, De Fazio C, Tommasini M, et al.Hepatocellular carcinoma in Italian patients with cirrhosis. N Engl J Med 1991;325(10):675-80.

 

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