ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

書誌情報
 
第1章 予防


● はじめに
肝細胞癌は,B型およびC型慢性肝炎,あるいはウイルス性肝炎以外の種々の慢性肝疾患を背景として発生し,その多くは肝硬変を合併している。肝細胞癌の予防を考える場合,これら背景肝疾患の予防,特にウイルス性肝炎の発生を抑止することが,肝細胞癌の発生を抑止するであろうことは,自明の理である。よって,B型肝炎母子感染の予防,輸血を含む医療行為によるC型肝炎の予防は,慢性ウイルス性肝炎,肝細胞癌の二次予防として強く推奨されるべきものである。B型肝炎については,1986年以降の母子感染の予防によって,C型肝炎については,1989年以降の献血のスクリーニングによって,共に新規のキャリア発生は非常に低いレベルに抑えられており,その意味ではウイルス性肝炎に起因する肝細胞癌の根絶はいずれ達成されるといってもよいかもしれない。
肝細胞癌の二次予防として,既に肝炎ウイルス感染が成立し慢性肝炎となっている患者においてウイルスを駆除あるいは抑制することが肝細胞癌の抑制につながることが想定される。C型慢性肝炎においては,インターフェロン療法を中心に国内外のエビデンスが示されている。その多くは,インターフェロン単剤療法を用いたものであるが,現在標準治療であるペグインターフェロン・リバビリン併用療法は,より高い著効率を示しており,今後さらに大きい発癌抑止が得られることが期待される。
B型慢性肝炎については,核酸アナログ製剤が治療の中心となりつつあり,長期投与によって,肝予備能を改善させ,肝の線維化を寛解させるという知見が定まりつつある。発癌抑止効果についてのエビデンスはいまだ十分ではないが,今後より強力かつ長期のウイルス抑制が発癌を抑止するというエビデンスの集積が期待される。
近年,肥満の増加に伴い,ウイルス性肝炎以外にメタボリックシンドロームを背景とする肝細胞癌の増加が国内外で示唆されている。これらの疾患は,生活習慣の改善によって軽快することが示されているが,生活習慣の改善によって肝細胞癌を予防することができるかは,今後の検討課題である。

 

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