ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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肝癌診療ガイドライン Clinical Question・推奨一覧


CQ
No.
Clinical Question 推  奨 グレード
第 1 章
予防
1 インターフェロン療法
  1 インターフェロン療法は,肝細胞癌の発癌予防に有効か? C型慢性肝炎・代償性C型肝硬変患者の発癌予防には,インターフェロンを中心としたウイルス駆除療法が推奨される。 B
2 肝庇護療法
  2 肝庇護療法は肝細胞癌の発癌予防に有効か? C型慢性肝炎患者に対する発癌予防としてグリチルリチン製剤静脈内投与が推奨される。 B
3 B型慢性肝炎患者に対する核酸アナログ製剤投与は肝細胞癌の発癌予防に有効か? B型慢性肝炎患者に対する発癌予防として核酸アナログ製剤が推奨される。 B
第 2 章
診断
および
サーベイ
ランス
1 サーベイランス
  4 定期的肝細胞癌スクリーニングは,どのような対象に行うべきか? 肝細胞癌の危険因子は,肝硬変,C型慢性肝炎,B型慢性肝炎,男性,高齢,アルコール摂取,肥満,糖尿病である。その中でもC型慢性肝疾患患者,B型慢性肝疾患患者,および非ウイルス性の肝硬変患者は肝細胞癌の定期的スクリーニングの対象として推奨される。 B
5 肝細胞癌の危険因子を有する症例に対する定期的スクリーニングは,肝細胞癌患者の予後を改善するか? 定期的な肝細胞癌に対するスクリーニングによって,早期に肝細胞癌が検出され,根治的な治療につながる。また予後改善効果をもたらす可能性がある。 B
6 肝細胞癌に対する定期的スクリーニングはどのように行うべきか? ・超音波検査と腫瘍マーカーの併用による肝細胞癌スクリーニングを軸とし,肝硬変症例などの超高危険群ではdynamic CTまたはdynamic MRIを併用する。 B
・2〜6カ月間隔での腫瘍マーカーと超音波検査を軸に,dynamic CT/MRIを併用した定期的スクリーニングを行うと,肝細胞癌が単発の小結節の段階で検出される可能性が高まる。 C1
2 腫瘍マーカー
  7 肝細胞癌の診断において2種以上の腫瘍マーカーを測定することは有用か? 小肝細胞癌の診断においては2種以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨される。 A
8 腫瘍マーカーの測定は,肝細胞癌の治療後の指標として有効か? 治療前に腫瘍マーカーが上昇している症例では,治療後にその腫瘍マーカーを測定することは,治療の指標として有効である。 C1
3 画像診断
  9 肝細胞癌の治療前検査としてどの画像診断を選択するか? 肝細胞癌診断のためにはdynamic CTまたはdynamic MRIが勧められる。 A
10 肝細胞癌の小結節の検出のために血管造影は必要か? 肝細胞癌診断のためには血管造影は勧められない。 D
11 肝細胞癌の画像診断において造影剤使用は必要か?また,どのように造影剤を用いるべきか? CT,MRIなどの画像診断において造影剤使用は必須である。動脈相が特に有用であり,CTにおいては遅延相の有用性も高い。 A
12 肝細胞癌の画像診断において,FDG-PETを含む核医学診断は他の検査法と比べて有用か? ・従来の肝シンチグラムは肝細胞癌の診断に寄与しない。 D
・原発巣の評価について,FDG-PETは他の検査法と比べて有用とはいえない。 C2
・肝外転移が疑われるものの他の画像検査で発見できない場合,FDG-PETを追加することは有用である。 B
13 肝細胞癌の確定診断のために針生検による組織診は必要か? ・肝細胞癌の診断が画像診断で確定される場合には組織診断の必要はない。 B
・画像所見が非典型な場合に生検による組織診の適応があるが,この場合にも,個々の症例に応じて慎重にその適応を決めるべきである。 C1
14 超音波造影剤は,肝細胞癌における超音波検査の診断能を改善するか? 超音波造影剤は,肝細胞癌に対する超音波検査の診断能を改善する。 A
15 造影超音波検査,RVS(real-time virtual sonography)は局所治療の治療ガイドとして有用か? 造影超音波検査,RVSは局所治療の治療ガイドとして有用である。 造影超音波:B
RVS:C1
16 造影超音波検査は,TACEや局所療法の治療効果判定に有用か? 造影超音波検査は,TACEや局所治療効果判定に有用である。 B
第 3 章
手術
1 手術適応・術式・再発補助療法
  17 肝切除術における最良の術前肝機能評価因子は? ICG15分停滞率は術前肝機能評価因子として有用である。特に術後死亡の予測因子として優れている。 B
18 非硬変肝細胞癌に対し,肝切除範囲はどのように決定すべきか? 治癒切除が可能であれば必ずしも拡大切除は必要とせず,肝機能と腫瘍の進展に応じて部分切除でも十分である。 B
19 再発肝細胞癌に対する有効な治療は? 再発肝細胞癌に対しては,初回肝細胞癌に対するのと同じ基準で治療方針を決定することが推奨される。すなわち肝切除が標準治療であり,特に肝機能良好例(非硬変肝症例またはChild分類のA症例)における単発症例では再切除が推奨される。 B
2 予後因子
  20 肝切除後の予後因子は何か? 肝切除後の主な予後因子はStage分類,脈管侵襲,肝機能,腫瘍数である。 B
21 切除断端距離は予後に寄与するか? 肝切除において肝切離断端距離は必要最低限でよい。 B
22 系統的切除は予後に寄与するか? 肝切除では系統的に行うことが推奨される。 B
3 周術期管理
  23 周術期の血液製剤(赤血球輸血,凍結血漿など)使用はどうするか? ・同種赤血球輸血はできるだけ避ける。
・凍結血漿の使用を推奨する。
B
C1
24 肝切除術において術中出血量を減少させるにはどうするか? ・肝流入血流遮断は有効である。
・CVP圧を低下させることは有用である。
A
C1
4 補助療法
  25 術前補助療法は肝切除後の予後を改善するか? 肝細胞癌肝切除後の予後改善を目的とした術前補助療法として推奨できるものはない。 C2
26 術後補助療法は肝切除後の予後を改善するか? 術後のインターフェロンα療法は再発抑制や生存率の向上のために寄与する可能性があり,そのほかにも有効と報告されている補助療法はある。しかし,推奨するまでには至っていない。 C1
5 肝移植
  27 肝移植前の肝細胞癌に対する治療は予後を改善するか? 肝移植前の肝細胞癌に対する治療が予後を改善する十分な科学的根拠はない。 C1
28 肝移植後の予後因子は何か? また,どのような腫瘍条件で肝移植が推奨されるか?(肝細胞癌移植候補患者の選択基準は何が適当か?) 脈管侵襲と腫瘍の分化度が強い予後因子である。術前に評価できる因子としては腫瘍径と個数が重要であり,肝移植の適応基準としても有用である。したがってミラノ基準を肝移植の適応基準にすることは妥当である。 B
29 肝細胞癌症例のうち,手術適応,移植の適応となる症例,また手術と移植の双方が適応となる症例は,どの程度存在するのか?さらに双方の治療が可能となる症例ではどちらが良好な成績であるのか? 肝切除は肝機能因子による適応の制限を受け,一方,移植は腫瘤の進行による適応制限を受ける。双方の治療が適応となる症例は,切除および移植適応症例の20〜30%程度と推定される。移植待機期間中の腫瘤の進行や症例のドロップアウトまでを考慮した検討では,切除のよい適応となる腫瘍・肝機能条件の症例の成績は肝移植の成績と同等かそれ以上であると考えられる。 B
30 背景肝疾患の相違(HBV,HCV,alcohol,PBC,cryptogenic)により移植後の成績に差はあるのか?また,適応は変わるのか? 肝細胞癌に対する肝移植症例のうち,C型肝炎陽性症例は,陰性症例に比べ,移植後の生存率,無再発生存率が不良である可能性がある。腫瘍条件において適応が変わるか否かは,今後の検討が必要である。 C1
第 4 章
化学療法・
放射線治療
1 化学療法
  31 肝細胞癌化学療法はどのような症例に行われるか? 化学療法の適応について科学的根拠がある推奨はない。 C1
32 全身化学療法と比べて肝動注化学療法は有用か? 全身化学療法と比較し肝動注化学療法は有用という十分な科学的根拠がない。 C1
33 化学療法で有効な薬剤は何か? 肝細胞癌化学療法に科学的根拠に基づいて推奨される有効な薬剤やその組み合わせはない。 C1
34 インターフェロン併用化学療法は有用か? インターフェロン併用化学療法は有用と考えられ,行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠がない。 C1
35 経口化学療法は効果があるのか? 経口化学療法はあまり効果がなく,有効であるという科学的な根拠がないので勧められない。 C2
36 ホルモン療法は有効か? 進行肝細胞癌に対してホルモン療法は無効であり,行わないよう勧められる。 D
37 化学療法の治療効果予測因子・予後因子は何か? 科学的根拠のある治療効果予測因子・予後因子はない。 C
2 放射線治療
  38 肝内腫瘍に対する放射線治療は推奨されるか? 他の治療法が適応とならない病態に対しては,3次元照射による放射線治療を検討してよいが,十分な科学的根拠はない。
また,放射線治療の分割方法や総線量について科学的根拠がある推奨はない。
C1
39 放射線治療を行うことにより,予後は改善するか? 放射線治療単独で予後の改善を示唆する科学的根拠はない。ただし,TACEを併用することによって予後が改善する可能性があるが,十分な科学的根拠はない。 C1
40 肝細胞癌の遠隔転移に対しては放射線治療が適応となるか? ・骨転移による疼痛の緩和には,放射線治療は一般に有用であり,治療を行うよう勧められる。線量分割スケジュールについては,単回照射・分割照射のいずれでも有効性に明らかな差はみられない。 B
・また,脳転移に対する標準治療の一つとして全脳照射を行うよう勧められる。 B
・単発性脳転移の場合には,全脳照射に加えて定位放射線照射も行うことが勧められ,転移病変が2〜4個の場合にも定位放射線照射の追加を検討することが望ましい。 B
第 5 章
肝動脈化学
塞栓療法
(TACE)
  41 どのような症例がTACE/TAEのよい適応か? TACE/TAEは肝障害度 A,Bの進行肝細胞癌(手術不能で,かつ穿刺局所療法の対象とならないもの)に対する治療法として推奨される。化学塞栓される非癌部肝容積の非癌部全肝容積に占める割合と残肝予備能を考慮したTACE/TAEが推奨される。 A
42 TACE/TAEに使用する塞栓物質は何を用いるべきか? 従来,汎用されてきたゼラチンスポンジ細片はわが国では肝細胞癌のTACE/TAEには使用できなくなった。球状(1mmと2mm粒子径)の多孔性ゼラチン粒(ジェルパート®)や,POLYVINYL ALCOHOL(PVA)がわが国では使用可能である。 C1
43 TACE/TAEで(化学)塞栓すべき脈管は? 腫瘍部を栄養する動脈のみならず併走する門脈枝をも(化学)塞栓し,より効果的かつ非癌部肝組織の障害の少ない超選択的 TACE/TAE が推奨される。 C1
44 肝動脈化学塞栓療法(TACE)にイオダイズドオイル(リピオドール)と抗癌剤のエマルジョン注入は必要か? 現行のTACEでは,残肝予備能と化学塞栓される非癌部肝組織の領域を考慮したLip-TACEが推奨される。 B
45 リピオドールと抗癌剤の混合液(リピオドールエマルジョン)に使用する抗癌剤は何が選択されるべきか? 現在は症例により抗癌剤の感受性が異なる感もある。特定の有効な薬剤は見出せない。 C1
46 再TACE/TAEの時期の選択は? 血流豊富な腫瘍出現,腫瘍マーカーの上昇あるいは腫瘍径が増大した時点で再TACE/TAEは施行されるべきである。 B
47 TACE/TAEと他治療法の併用療法は有効か? 進行肝細胞癌症例ではTACE/TAEを中心とした穿刺局所療法や放射線治療との併用治療が試みられるべきである。3cm以上の切除不能肝細胞癌ではTACE/TAEと穿刺局所療法の併用療法が推奨される。 B
第 6 章
穿刺局所
療法
  48 穿刺局所療法はどのような患者に行うべきか? 穿刺局所療法の良い適応は,Child-Pugh分類のAあるいはBの肝機能,腫瘍径3cm以下,腫瘍数3個以下である。 C1
49 各穿刺局所療法の選択は,どのように行うべきか? 穿刺局所療法の適応がある患者に対しては,RFAが推奨される。 A
50 3cm超あるいは4個以上の肝細胞癌患者に対してTACEに穿刺局所療法を併用することは予後を改善するか? 3cm超あるいは4個以上の肝細胞癌に対して,TACEとPEITの併用療法はTACE単独治療と比較して予後を改善する。 B
51 血流遮断下RFAは,予後を改善するか? 血流遮断下にRFAを行うことにより壊死範囲は拡大するが,予後の改善に関しては今後の検討が必要である。 C1




 

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