ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

書誌情報
第VIII章  急性膵炎の治療

 


10.胆石性膵炎における胆道結石に対する治療


 1)内視鏡的治療


CQ56 : 急性胆石性膵炎に早期のERCP/ESは施行すべきか?
急性胆石性膵炎のうち,胆管炎合併例,胆道通過障害の遷延を疑う症例には早期のERCP/ESを施行すべきである:推奨度B
上記に該当しない症例に対する早期ERCP/ES施行の有用性は否定的である。

現時点では,早期のendoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)with/without endoscopics phincterotomy(ES)(以下,ERCP/ESと略記)は,胆石性膵炎と診断されるか,あるいは疑われる急性膵炎症例のうち,(1)胆管炎合併例,(2)黄疸の出現または増悪などの胆道通過障害の遷延を疑う症例に対して行われるべきである。特に重症急性膵炎例にその有益性が高いと考えられる。急性膵炎を診療する高次医療施設では,ERCP/ESを常時施行できる体制にあることが望ましい。

 a.最初のメタ分析
急性膵炎に対する早期のERCP/ESについて,1997年までに4件のRCT(レベル1b)119),120),121),122)表VIII-4)が行われており,これらのRCTを解析対象としたメタ分析(レベル1a)123)が報告されている。合計対象数は834例で,ERCP/ES群460例と保存的治療群374例となり,分析の結果,合併症発症率,死亡率ともにERCP/ES群で良好であると結論している。ただし,ERCP単独施行例とES付加例を区別して検討した報告はなく,有益性の根拠が判然としない部分がある。対象の大部分は胆石性膵炎であり,胆石性膵炎に特異的な検査,治療と位置づけてよいと考えられる。

表VIII-4 RCTにおける早期ERCP/ES施行群と保存的治療群の合併症発生率と死亡率の比較


 b.重症度別の検討
これらのRCTを対象にさらに2つのメタ分析が報告され,いずれも重症度で層別化して検討している。3報告(レベル1b)119),120),122)のメタ分析(レベル1a)124)では,症例全体では死亡率に有意差は認めないものの(7.2% vs. 6.4%,p=0.46),合併症発症を有意に抑制したとし(41.8% vs. 31.3%,p=0.03),2 報告(レベル1b)119),120)についての重症度別の分析では,軽症例は合併症発症率(14.5% vs. 14.7%,p=0.1),死亡率(0.7%vs. 0.7%,p=0.1)ともに有意差はなく,重症例では両者に有意差を認めたと報告した(57.1% vs. 18.2% [p=0.001],17.9% vs. 3.6% [p=0.03])。別の同じ3報告(レベル1b)119),120),122)のメタ分析(レベル1a)125)では,死亡率では軽症例(OR=4.64 ; 95%CI=0.22~98.12),重症例(OR=0.62 ; 95%CI=0.27~1.41)ともに有意差を認めず,合併症発症率でも軽症例では有意差を認めなかったが(OR=0.89 ; 95%CI=0.53~1.49),重症例においては有意差を認めたとし(OR=0.27 ; 95%CI=0.14~0.53),1論文(レベル1b)122)の原著に欠損している重症度別データを入手してやや異なった結果を導いている。また,検討対象となったRCTのうち,無条件の早期内視鏡的処置に否定的な見解を述べた報告(レベル1b)122)では黄疸例を検討対象から除外しており,検討対象症例中の重症例の比率は19%と少ない。その後,さらに3つの関連したRCTが報告された。急性胆石性膵炎症例に対する,入院24時間以内のERCP/ES群と,保存治療群(20例対25例)の小規模なRCT(レベル1b)126)表VIII-4)では,重症例においてERCP/ES群で合併症発症率に有意差を認めている(1/7 vs. 5/7)。さらに重症例では,入院期間と治療費がERCP/ES群で有意に低かったとした。一方,軽症群ではいずれの検討も有意差を認めていない。これらの報告から早期のERCP/ESの有用性が期待されるのは重症の胆石性膵炎であると考えられた。

 c.新たに行われたRCT
成因を限定しない急性膵炎に対して,入院24時間後にESTを行う群と行わない群の90例のRCT(レベル1b)127)では,腹痛消失までの日数,血液・尿検査でアミラーゼの正常化までの日数,入院日数がEST群で有意に短かった。また,CT所見において急性貯留液の消失率,改善率も有意にEST群が優れていた。合併症発症率や死亡率の検討はなく,両群の軽症例,重症例数は同じであるが重症度別の検討はない。また具体的な結果数値も記載がない。
急性胆石性膵炎かつ乳頭閉塞を呈する症例を対象に,通過障害の遷延する症例に対してはERCP/ESを発症から24~48時間以内で行う群と,48時間までは経過をみて48時間以上遷延している場合にそれ以降にERCP/ESを行う群に分けての61例のRCT(レベル1b)128)表VIII-4)では,早期治療群で早期合併症発症率(26% vs. 3%,p=0.026)および全体の合併症発症率(29% vs. 7%,p=0.043)が有意に低かった。両群ともに死亡例はなかった。また,48時間以上閉塞が遷延する症例は早期・後期合併症発症率が有意に高く,胆嚢摘出術の時期が遅れ,入院期間も長かった。早期治療群においても24時間以内に通過障害が解除された症例にはERCP/ESは施行されていない。ただし両群ともに約10%(3例ずつ)しか重症例を含んでおらず重症度別の検討はない。
2007年に新たなRCTが報告された(レベル1b)129)表VIII-4)。対象を,発症48時間以内に入院した急性胆石性膵炎症例のうち,入院時に胆管径≧8mm,血清ビリルビン値≧1.2mg/dLを満たし,かつ,胆管炎合併のない症例とした。胆管炎は右季肋部痛,高ビリルビン血症,高熱(≧38.4℃)を診断基準とし,5例が除外された。発症72時間以内(大部分は48時間以内)のERCP/ES群と保存治療群に分けての102例のRCTにおいてSOFAスコア(p=0.87),CT重症度(p=0.88),局所合併症発症率(6% vs. 6%,p=0.99),全体の合併症発症率(21% vs. 18%,p=0.80),死亡率(6% vs. 2%,p=1)のいずれも有意差は認められなかった。本研究は胆道通過障害のある症例を対象とすることを目的にデザインされており,本ガイドラインの推奨と一部相反する結論と考えられる。APACHE IIスコア≧6を重症急性膵炎とし重症例は全体の37.3%(38/102)を占めるが,重症度別の合併症発症率の検討はなく,APACHE IIスコアの平均値はERCP/ES群4.6±2と保存治療群4±3.2で,全体としては比較的軽症例の検討である可能性がある。102例のうち92例が同一入院期間中に胆道手術を受けており,ERCP/ES群で2%(1/45),保存治療群で40%(19/47)に総胆管結石が確認されているのは興味深い。

 d. 最新のメタ分析と,対象症例の抽出やエンドポイントに留意した解析結果
1997年以降のRCTを対象に加えて新たに3つのメタ分析が報告された。Morettiら(レベル1a)130)は,5つのRCT(レベル1b)119),120),122),126),129)を対象として,ERCP/ES群(353例)と保存治療群(349例)の合併症発症率の差は8.7%(95%CI=15.8~1.5%,p=0.01)と群間差を認めたが,死亡率はERCP/ES群6%(23/353),保存治療群6%(22/346)で,差は0.2%(95%CI=-4.6~4.2%,p=0.9)と群間差はなかったと報告した。重症度別の解析は5つのRCTのうち合併症発症率について3つ(レベル1b)119),120),126),死亡率について4つ(レベル1b)119),120),126),129)を対象に行われている。両群間の合併症発症率の差は,軽症例において1.8%(95%CI=-5.6~9.3%,p=0.6)で,重症例においては38.5%(95%CI=53~23.9%,p<0.0001,NNT=3)であった。重症例における両群間の死亡率の差は4.3%(95%CI=-16~7.5%,p<0.24)であった。早期のERCP/ESは,重症例においてのみ合併症発症率を低下させるが死亡率には影響しないと結論している。Petrovら(レベル1a)131)は対象を胆管炎合併のない症例とすることに留意し,3つのRCT(レベル1b)119),122),129)のみを対象とした。全体の合併症発症率はERCP/ES群32.6%(75/230),保存治療群38.6%(85/220)で,死亡率はERCP/ES群7.4%(17/230),保存治療群5.9%(13/220)であった。早期のERCP/ES群は合併症発症率をわずかに低下させ(RR=0.76;95%CI=0.41~1.04,p=0.38),死亡率をわずかに上昇させた(RR=1.13 ; 95%CI=0.23~5.63,p=0.88)。重症度別の解析においても早期のERCP/ESは予後に影響しなかった(軽症例の合併症発症率:RR=0.86 ; 95%CI=0.62~1.19,p=0.36,重症例の合併症発症率:RR=0.82 ; 95%CI=0.32~2.10,p=0.68,軽症例の死亡率:RR=1.90 ; 95%CI=0.25~14.55,p=0.53,重症例の死亡率:RR=1.28 ; 95%CI=0.20~8.06,p=0.80)。胆管炎合併のない急性胆石性膵炎において重症度によらず,早期のERCP/ESは合併症発症率,死亡率を低下させないと結論している。対象を絞るために全体の症例数は減少し,1報告(レベル1b)122)が全体の半数以上の症例を占めている。この報告の合併症発症率は他の報告に比して高い(48.3%)。解釈には熟慮を要する。最後のメタ分析は,早期のERCP/ESが死亡率の減少には寄与せず,合併症発症率に関して有用とする報告が多いこと,ゆえに合併症の内容に留意すべきであることに着目し,合併症を,膵局所合併症,すなわち,(1)感染性膵壊死,(2)膵膿瘍,(3)膵仮性嚢胞に限定して,合併症発症率について5つのRCT(レベル1b)119),120),122),128),129)を検討した(レベル1a)132)。症例は717例(363 vs. 354)で,全体(RR=0.94 ; 95%CI=0.63~1.40,p=0.62),軽症膵炎(151 vs. 150)(RR=0.79 ; 95%CI=0.26~2.47,p=0.69),重症膵炎(86 vs. 92)(RR=0.77 ; 95%CI=0.30~1.98,p=0.59)のいずれにおいても有意差なく,重症度によらず早期のERCP/ESは局所合併症の発症率を減少させないと結論している。

 e.代替の胆道ドレナージ法
重症急性胆石性膵炎に対する,発症72時間以内のERCP/ESと経皮経肝胆嚢ドレナージ術の有用性を比較するRCTが中国から報告された(レベル1b)133)。成功率,合併症発症率,死亡率のいずれにも有意差はなく胆道ドレナージの方法として経皮経肝胆嚢ドレナージ術の有用性を主張している。特に内視鏡的処置の不能例や対応不能の地域における選択肢として推奨する内容となっている。ERCP/ESと保存的治療の比較検討が結論を得ていない現状において,この研究の解釈は大変複雑である。
本邦では,胆道ドレナージの手段としてERCP/ES以外に種々の手法が用いられ,一般的に受け入れられている。現時点では,ERCP/ESに関するRCTに匹敵するレベルの高い報告は存在しないが,胆管結石嵌頓に対する緊急治療として,ENBD(endoscopic nasobiliary drainage)の有用性,安全性を主張する報告がある(レベル4)134)

 f.ERCP/ES の安全性
膵炎の急性期におけるERCP/ESの安全性については,発症後48時間以内の早期施行例と待機的施行例との比較検討で合併症発生率に差がなく(レベル4)135)。さらに,発症後24~72時間以内のERCP/ES施行報告でも安全性が主張され(レベル4)136),多数例のレトロスペクティブな研究(レベル4)137)でも同様の結果が報告されている。また,先の4件のRCT(レベル1b)119),120),121),122)では,手技に関わる合併症として主に出血を挙げているが,これも少数でかつ軽度の合併症にとどまったものがほとんどであり,直接の死因となったものはない。さらに追加された5つのRCT(レベル1b)126),127),128),129),133)でも重篤な合併症は記載がない。
このように海外の報告からは,ERCP/ESの膵炎急性期における危険性が特に高いとは結論できないが,消化器内視鏡関連の偶発症に関する最近の全国調査(レベル4)138)によれば,診断的ERCPと治療的ERCPによる偶発症の発生頻度はそれぞれ0.202%,0.717%で,死亡率は全体のそれぞれ0.0065%,0.052%であった。ERCP/ESの適応について熟慮するとともに,ERCPあるいはESの施行時には偶発症について十分な注意を要する。なお,その実施に際しては,十分に経験を積んだ適切な専門家,緊急ERCP/ES検査およびその後の出血等の対処を行える専門設備および人員が必要である。

 g.EUSの活用
ERCP/ESのオプションとして,EUSの活用を主張する意見があり,1つのRCT(レベル1b)139)が報告されている。胆石性が疑われる急性膵炎140例を対象に,入院後24時間以内の,ERCP施行群と,EUSを先行し総胆管結石を認めた場合のみをERCP/ES対象とするEUS先行施行群に分け,入院期間,ICU入室率,合併症発生率,死亡率を評価している。いずれも有意差を証明できなかったが,成功率や結石検出能力,合併症発生率(7.1% vs. 14.3%)に注目し有用性を主張している。術者の技量によってはEUSは有用な可能性が高い。

 h.総括
現時点では本ガイドライン第2版の推奨を変更すべきほどの新しい知見が得られたとは考えにくい。ただし,症例を限定しない早期ERCP/ES施行の有用性は否定的であることが強調されるべき根拠が強まったといえる。黄疸の出現または増悪などの胆道通過障害の遷延を疑う症例,胆管炎合併例に適応を限定するのが妥当であると考える。また,本邦の死亡率が大きく変化している最近の医療事情を勘案すれば,過去の報告を検討対象とするとき相当の注意が必要である。


 2)外科的治療

CQ57 : 胆嚢結石を有する胆石性膵炎の再発予防にESのみで胆嚢を摘出しない選択は可能か?
胆嚢摘出術を施行し得ない特段の理由がなければ, ERCP+ES 単独治療は勧められない:推奨度D

胆嚢内に残存結石を有する急性膵炎症例に対して,胆嚢摘出術は絶対適応と考えられてきた。急性胆石性膵炎症例にERCP+ESのみで経過をみる是非について関連するいくつかの報告がある。
高齢者や手術リスクの高い急性膵炎症例に対してES のみで経過観察した1990年前半の報告(レベル4)140),141) では2年強から4年の観察で再発膵炎を認めず,その有用性が主張された。対象を急性膵炎症例に限定したRCTはなく,プロスペクティブなコホート研究では(レベル2b)142),117例の急性胆石性膵炎症例のうち,83例に胆嚢摘出を行い,残りの34例はERCP+ES単独で経過観察した。3年弱の観察で,それぞれ2例(2.4%)と1例(2.9%)に再発性膵炎が発症した。胆道系の合併症率は,有意差は認めないもののERCP+ES単独治療群で高率であったとしている(3.6%vs. 11.6%)。ESのみを施行した症例を前向きに観察した2件の報告(レベル4)143),144)では,急性胆石性膵炎症例合計197例の3~4年強の経過観察で,再発性膵炎は3例(1.5%)のみであった。しかしながら,他に65例(33.0%)が何らかの胆道系障害を呈し,うち30例(15.2%)が観察期間中に胆嚢摘出を受けている。いずれの報告でもERCP+ES単独治療群の多くが,手術リスクが高いとの理由で初期の胆嚢摘出手術を回避した症例で構成されている。
対象を急性膵炎症例に限定しないERCP+ES単独治療群と,胆嚢摘出群のRCTは3件ある。最初の報告(レベル1b)145)は70歳以上(平均80歳)の症例を対象とし,17カ月の観察で膵炎発症は両群ともになかったが,胆道系障害発症はERCP+ES単独治療群21%,胆嚢摘出群6%であった。高齢者にもむしろ胆嚢摘出が望ましいと結論している。次の報告(レベル1b)146)でも,2年間の観察で両群に膵炎発症はなかったが,ERCP+ES単独治療群に高率に胆道系症状の再発を報告している(47% vs. 2%)。最後の報告(レベル1b)147)は60歳以上を対象とし,同様に膵炎発症はなかったが,やはりERCP+ES単独治療群に高率に胆道系症状の再発を報告している(24% vs. 7%)。
このような状況から,急性膵炎の再発率は高いとはいえないが,急性胆石性膵炎症例において,胆嚢摘出術を施行し得ない特段の理由がなければ,ERCP+ES単独で経過をみるべきではないと考えられる。



CQ58 : 急性胆石性膵炎に対する胆嚢摘出の適切な手術時期は?
胆石性膵炎沈静化後, 速やかに行われるべきである:推奨度B

胆石症は急性膵炎の主な成因の一つであり,胆嚢結石を有する急性膵炎例では再発防止のための胆嚢結石に対する処置の適応と考えられており,胆嚢摘出術が第一選択とされてきた。しかしその手術時期については,発症後早期に行うべきとの意見と炎症反応が沈静化してから待機的に行うべきとの意見がある。早期手術を支持するRCT(レベル1b)148)では,入院後72時間以内の早期手術例と3カ月以降の待機手術例を比較した結果,合併症発生率(8.3% vs. 10.3%)および死亡率(2.8% vs. 6.9%)に差を認めず,待機手術群で初回入院期間は約3日短縮されたが,再入院期間は約12日間であった。急性期においても安全に手術施行しえると結論している。急性膵炎の重症度について詳述はない。一方,待機手術を支持するRCT(レベル1b)149)では,入院後48時間以内の早期手術例は48時間以後の後期手術例と比較し,合併症発生率(30.1% vs. 5.1%),死亡率(15.1% vs. 2.4%)ともに有意に高率であるとの結果を報告している。Ransonスコア4点以上を重症とし,重症例の合併症発生率,死亡率はそれぞれ82.6% vs. 17.6%,47.8% vs. 11%で極めて成績が悪い。後期手術群とこれほどの差を生じる原因が判然とせず,12年間におよぶ長期間の研究であり,この顕著な差異をそのまま受け入れられるか疑問である。
最近では,軽症胆石性膵炎症例に対する早期群(腹部圧痛とアミラーゼの改善傾向があれば手術する方針で平均入院後1.8日の手術)と待機群(血中アミラーゼが正常化してからの手術で平均入院後2.3日の手術)の腹腔鏡下胆嚢摘出において入院期間短縮などの利点を主張する報告(レトロスペクティブコホート,レベル4)150)と,一方で,中等症から重症症例には合併症率などの点で待機的開腹胆嚢摘出術を主張する報告(レトロスペクティブコホート,レベル4)151)が追加されている。現在では,適応例には緊急あるいは早期のERCP/ESが勧められるようになり,あえて急性期に手術を行う必然性は大幅に減少している(前項参照)。
一方,待機手術においては同一入院期間内に行う場合と一度退院して十分な回復期間をおいた後に再入院して行う場合の2つの選択肢がある。退院後の待機期間中に32~61%の頻度で膵炎再発を生じることから(6週間以内に高率に再発)(レベル4)152),153),154),合併症のない軽症胆石性膵炎例では症状軽快後速やかに,また重症例でも膵炎沈静化後速やかに胆道検索と胆嚢摘出術を行うことが望ましい。



CQ59 : 胆石性膵炎沈静後の胆嚢摘出術の術式は?
腹腔鏡下胆嚢摘出術が第一選択である:推奨度B

急性胆石性膵炎に対しても腹腔鏡手術が積極的に導入されてきた。これまでに報告されている前向き研究(レベル1b~4)155),156),157),158),159),160)の結果を集計すると,腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecystectomy:LC)の完遂率は94.5%(79~100%),合併症発生率は5.5%(0~10%),死亡率は0.4%(0~2.5%)であり(表VIII-5),開腹術と同等もしくはそれ以上の優れた成績が示されている。

表VIII-5 胆石性膵炎に対する腹腔鏡手術によるプロスペクティブなコホート研究


CQ60 : 腹腔鏡下胆嚢摘出術施行症例における胆道検索および総胆管結石処置の方法は何が適切か?
現時点では術者の選択に任されるべきである:推奨度B

従来は開腹下に胆嚢摘出術と術中胆管造影(intraoperative cholangiography:IOC)を行い,総胆管結石を認める場合は総胆管切開術を付加する方法が標準的であったが,LCの導入に伴い,胆道検索と総胆管結石に対する処置には複数のオプションが派生している。代表的なものとして次の4つの方法がある。ただし,MRCPの診断能力が向上し,MRCPで総胆管結石が否定されていれば必ずしも侵襲的な胆道検索(ERCPや術中胆管造影)は必要ないと考えられる。
  (1)術前にERCP/ESを行い,総胆管結石の診断・摘出を済ませた後にLCを施行する。
  (2)ERCPを行わず,LCを施行する際にIOCを行い,総胆管結石を認めた場合には開腹術に切り替える。
  (3)IOCにて総胆管結石を認めた場合はそのままLCを遂行し,術中もしくは術後にESを行う。
  (4)IOCにて総胆管結石を認めた場合は腹腔鏡下に経胆嚢管法あるいは胆管切開法を行う。
  (1)の方法については,血液生化学検査や他の画像診断にて総胆管結石の存在が疑われる場合もしくはIOCにて総胆管結石を認めた場合にのみ施行すべきとの意見(レベル1b)160)がある。また,胆石性膵炎急性期には総胆管結石陽性率が高くERCPの妥当性がありそうだが,同時に軽快後の総胆管結石陽性率は低いことを示した報告もある(レベル4)161)。ERCPが有する潜在的リスクについても考慮されるべきである(レベル4)162)。軽症から中等症の急性胆石性膵炎に対する,(1)の方法と(3)の方法(術後にERCP+ES)のRCT(レベル1b)160)では,入院期間やコスト面から(3)の優越性を主張している。また,軽症胆石性膵炎に対して(4)の方法で発症2週間以内と,2週間以降にLCを施行した2群のレトロスペクティブなコホート研究(レベル4)163)では両群ともに良好な結果であったとしている。術者の技量向上や手技の工夫が進めば腹腔鏡下の処置が標準化していく可能性が高い。もしIOCで総胆管結石が発見された場合に(2)~(4)のいずれの方法を選択すべきかは,現時点では各施設の術者の技量に拠らざるを得ない。LCについての進歩は目覚ましく一般化していく可能性が高い(レベル4)164)。現時点では,これらの各方法の安全性,侵襲性,完遂率や,対象症例の適切な選択に関するさらなるデータの蓄積が必要である。



 

書誌情報