ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

書誌情報
第VII章  急性膵炎の重症度診断

 


6.搬送基準


CQ38 : 急性膵炎例の搬送基準は?
重症度判定基準の予後因子スコアで重症と判定された症例は集中治療を行う,あるいは適切な施設に搬送する:推奨度A
予後因子スコア3点以上:重症急性膵炎に対応可能な施設に搬送する。
初期に予後因子スコア2点以下であっても,経時的な重症度判定を行い,基準を満たせば搬送を考慮する。


急性膵炎と診断された場合は入院加療が原則である。
急性膵炎と診断された場合は直ちにモニタリング,基本的治療(輸液など)を開始する。British Society of Gastroenterologyのガイドライン(1998)13)では,造影CT検査で50%以上の膵壊死または複数の部位に急性浸出液貯留を認める場合,もしくは臓器不全を合併した場合を専門施設への患者の搬送基準として推奨している。
Santorini consensus conference(1999)16)では,肥満(BMI>30kg/m²),胸水貯留,APACHE II>6,APACHE O(BMI25〜30kg/m²の場合は1点を,またBMI>30kg/m²の場合は2点をAPACHE IIスコアに加算した値)>6,CRP>15mg/dLを重症の基準とし搬送基準として推奨している。
Practice Guidelines in Acute Pancreatitis(2006)7)では,臓器不全が最も重要なICUへの転送理由であるとし,特に低酸素,初期輸液に反応しない血圧低下・腎不全(Cr>2.0mg/dL)は早急にICUへ転送すべきと位置づけている。また,輸液量を確実に把握しなくてはならない心不全を有する高齢者の急性膵炎症例では,血液濃縮の状態を改善させるためにも搬送適応があるとしている。緊急搬送は不要ではあるが,注意する病態として,(1)BMI>30,(2)乏尿(<50mL/時間),(3)頻脈(HR>120bpm),(4)脳症,(5)鎮痛薬の使用量増量を挙げている。
厚生労働省重症度判定基準で重症と判定された場合には,ICU管理,IVR(interventional radiology),CHDF(持続的血液濾過透析),胆石症に対する内視鏡治療,外科的治療,NSTなどの重症急性膵炎に対応可能な施設へ転送を行うべきである。
入院当初,予後因子スコア≦2点となった症例でも経過によっては重症化をきたす症例もあるので,十分な輸液と慎重な経過観察を行い重症度判定基準の予後因子スコアを繰り返し評価し,重症と判定された場合には搬送する必要がある。また,搬送にあたっては長時間の搬送などによる病態への影響についても考慮の上,判断する必要がある。


 

書誌情報