ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

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第VII章  急性膵炎の重症度診断

 


1.厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)


CQ26 : 新しい重症度判定基準の特徴は?
重症度判定基準(2008)では,9つの予後因子(表VII-1A)からなる判定基準がある。それに加え,造影CTによる造影CT Grade(表VII-1B,図VII-1)がある。
この重症度判定基準によると,9つの予後因子のみで重症度を判定できる特徴がある。
さらに,造影CTによる造影CT Gradeと組み合わせて重症とされるものでは,より致命率が高いことが判明している:推奨度A

注)予後因子  1   2   3  は,検査欠損値が生じた場合でも臨床徴候で代替することができる。




CQ27 : 重症度判定に用いられる予後因子はどのようなものか?
予後因子(予後因子は各1点とする)
 1  Base Excess≦-3mEq/L,またはショック(収縮期血圧≦80mmHg)
 2  PaO2≦60mmHg(room air),または呼吸不全(人工呼吸管理が必要)
 3  BUN≧40mg/dL(or Cr≧2mg/dL),または乏尿(輸液後も1日尿量が400mL以下)
 4  LDH≧基準値上限の2倍
 5  血小板数≦10万/mm³
 6  総Ca≦7.5mg/dL
 7  CRP≧15mg/dL
 8  SIRS診断基準における陽性項目数≧3
 9  年齢≧70歳
 

*:SIRS診断基準項目:(1)体温>38℃または<36℃,(2)脈拍>90回/分,(3)呼吸数>20回/分またはPaCO2<32 torr,(4)白血球数>12,000/mm³か<4,000mm³または10%幼若球出現




CQ28 : 重症度判定に用いられる造影CT Gradeは?
 1  炎症の膵外進展度(図V-1参照)
  前腎傍腔 0点
  結腸間膜根部 1点
  腎下極以遠 2点

 2  膵の造影不良域(図V-2参照)
膵を便宜的に3つの区域(膵頭部,膵体部,膵尾部)に分け判定する。
  各区域に限局している場合,
  または膵の周辺のみの場合
0点
  2つの区域にかかる場合 1点
  2つの区域全体を占める,
  またはそれ以上の場合
2点

 1  2  合計スコア
  1点以下 Grade 1
  2点 Grade 2
  3点以上 Grade 2


表VII-1 急性膵炎の重症度判定基準(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班2008年)
 A.予後因子(予後因子は各1点とする) 


*:SIRS診断基準項目:(1)体温>38℃または<36℃,(2)脈拍>90回/分,(3)呼吸数>20回/分または
PaCO2<32 torr,(4)白血球数>12,000/mm³か<4,000mm³または10%幼若球出現



 B.造影CT Grade 
 炎症の膵外進展度(図V-1参照



 膵の造影不良域(図V-2参照
膵を便宜的に3つの区域(膵頭部,膵体部,膵尾部)に分け判定する。



 合計スコア




 重症の判定 
(1)予後因子が3点以上,または(2)造影CT Grade2以上の場合は重症とする。
(文献2より引用)


図VII-1 造影CTによるCT Grade分類(予後因子と独立した重症度判定項目)

膵外進展度 : 3つに分類して判定 : 前腎傍腔,結腸間膜根部,腎下極以遠
膵造影不良域 : 便宜的に,3つの区域(膵頭部,膵体部,膵尾部)に分けて判定する :

膵周囲のみあるいは各領域に限局,2つの区域にかかる,2つの区域全体あるいはそれ以上




CQ29 : 重症度判定基準は?
(1)予後因子が3点以上, または(2)造影CT Grade 2以上の場合は重症とする。

2003年全国調査で予後因子9項目中5項目以上測定されていた1,337例での全体の死亡率は2.9%,軽症例での死亡率は0.83%,重症例での死亡率は19.5%であった(レベル2b)1)表VII-2)。
改訂基準の妥当性に関してプロスペクティブな検証が行われた2)。156例全体の死亡率は2.6%で,スコア2点以下には死亡例はなく,3点以上の死亡率は19.1%であった。スコア2点以下の臓器障害合併率が10%以下であったのに対して,3点以上の症例では36~100%であった。造影CT Grade別の死亡率はGrade1が0%,Grade2が14.3%,Grade3が15.4%であった。臓器障害合併率はCT Grade1で4.3%,Grade 2で42.9%,Grade 3で46.2%であった。9つの予後因子について欠損頻度が高い項目はBE(Base Excess)とPaO2であったが,臨床徴候で代替された。スコア3点以上かつCT Grade 2以上の症例の死亡率は30.8%と極めて高かった(表VII-3)。
一方,重症度判定基準が改訂されたことを受けて,使い慣れた旧基準(1998)と改訂基準(2008)を対比する上で,換算式の作成も試みられている(レベル4)3)。217例の検討で,旧基準(1998)と改訂基準(2008)のスコアに関する回帰分析を行ったところ,改訂基準スコア=0.418+0.332×旧基準スコアとなった。寄与率は約59%であった。これにより改訂基準(2008)で重症と判定される予後因子スコア3点は旧基準(1998)では7.8点(Stage2:重症I),4点は10.8点(Stage3:重症II),5点は13.8点(Stage3:重症II)に相当する。厚労省急性膵炎重症度判定基準(2008)での重症判定は旧基準(1998)に比べてより重症度が高い(図VII-2)。
今後も,厚生労働省重症度判定基準(2008)に対する臨床的な検討が必要である。



表VII-2 2003年全国調査における改訂重症度判定基準における重症スコアと致命率

  2003年全国調査で予後因子9項目中5項目以上測定されていた1,337例(文献1より引用)


表VII-3 改訂重症度判定基準(2008)における重症度予後因子スコアと造影CT Grade別にみた症例数と致命率の検証



図VII-2 旧重症度判定基準スコアから改訂重症度判定基準(2008)スコアへの換算式とグラフ


(文献3より引用)


 

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