ガイドライン

(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 −H. pylori二次除菌保険適用対応−

書誌情報
第2部 胃潰瘍診療ガイドライン―解説―

 
4.H. pylori 除菌治療
4-3レジメン

4)ステートメントの根拠
(1)論文の検索

消化性潰瘍の成因としてH. pylori 感染が重要視されている。H. pylori の除菌は潰瘍の再発を防止すると考えられている。H. pylori 除菌療法には,胃酸分泌抑制薬であるPPIに抗菌薬1種を加えた2剤療法と抗菌薬2種を加えた3剤療法などが報告されている。欧米では,胃潰瘍に比べ,十二指腸潰瘍が多いが,わが国においては胃潰瘍が多いという特殊性がある。そのため胃潰瘍治療におけるH. pylori 除菌治療にはどのような薬剤の組み合わせが適当であるかを明らかにする必要がある。
一定の再現性のある検索式により1980〜2001年の文献64編が見いだされた。その中からランダム化比較試験(RCT)である37編を吟味して検討を行った。その結果,22編を採用した。除外された17編の不採用理由は以下のとおりであった。
十二指腸潰瘍のみを対象としていた(2編)。NSAID投与の関連論文である(1編)。防御因子増強薬またはビスマス製剤の上乗せ効果をみた論文である(3編)。内容が今回の目的と異なる文献である(9編)。疾患別の除菌率が示されていない(2編)。
さらに,分担研究者(自治医科大学 佐藤貴一講師,東邦大学医学メディアセンター 山口直比古氏)により,2002〜2006年1月までの論文の追加検索がなされ,欧文論文99編,および5編の国内雑誌が見いだされた。そのうちレジメンに関するRCTの論文は12編であったが,胃潰瘍単独を対象にした論文はなく,さらに疾患別の除菌率が記載されたものはなかった。再検索でオメプラゾールとラベプラゾールナトリウムのRCT各1編とメタアナリシスが1編追加された。

(2)2剤療法と3剤療法の比較
H. pylori 除菌療法においてPPIとAMPCによる2剤療法は,PPI単独に比べ有意に除菌率が高く1),2),3),4),5),エビデンスのグレードA,レベルIIであった。一方,2剤療法と3剤療法を比較すると3剤療法の除菌率は2剤療法に比べ,有意に高く6),7),8),9),グレードA,レベルIIと判断された。

(3)3剤療法の薬剤の最適な組み合わせ
3剤療法の薬剤の組み合わせの比較が報告されているが10),11),12),胃潰瘍の例数が少ない報告であり,胃潰瘍においての比較は実質的に1論文であり,その結果は,オメプラゾール,アモキシシリンおよびクラリスロマイシンとオメプラゾール,メトロニダゾールおよびクラリスロマイシンのレジメン間に除菌率の差がなかった11)。そのため,この2種のレジメンによる除菌は,グレードB,レベルIIである。しかしながらこの2種類の除菌率は同等であるものの,除菌失敗によりメトロニダゾールおよびクラリスロマイシン耐性が誘導されることが明らかにされている。もしPPI,メトロニダゾール,およびクラリスロマイシンの組み合わせを第一選択とすれば,二次除菌の組み合わせの選択が困難となると考えられる。そのため,第一選択は現在保険診療で認められているPPI,アモキシシリン,およびクラリスロマイシンが適当と考えられた。
一方,H2RAを用いた3剤療法の報告において,抗菌薬がクラリスロマイシン,メトロニダゾールの組み合わせではPPIとH2RAに除菌率に差がないとされるが,アモキシシリンおよびクラリスロマイシンのときにも同様に差がないのかは明らかでない12)。そのため,H2RAをPPIの代わりに用いることへの勧告はグレードC2であり,勧められない。3剤におけるPPIとH2RAを対比した欧米のメタアナリシスは,疾患は胃潰瘍に限定されていないが,PPIがH2RAよりも優れているとの成績が報告されている13)。わが国では,欧米に比べ胃酸分泌が少なく,十二指腸潰瘍よりも胃潰瘍が多い。そのため,胃潰瘍においてH2RAがPPIの代わりになりうるのか,データの集積が必要である。
3剤療法に用いるPPIの種類については,ランソプラゾールとオメプラゾール,ラベプラゾールナトリウムおよびパントプラゾールの間で除菌率に差がなかった14),15),16)。わが国での3剤療法はランソプラゾール17),オメプラゾール18),またはラベプラゾールナトリウム19)が用いられているが,3種のPPIともにグレードB,レベルIIでどちらを除菌に用いてもよいと考えられる20)

(4)除菌療法の投与量とその期間
除菌療法の投与量,期間については胃潰瘍だけに関しての明瞭な比較のデータはないが,OMC(オメプラゾール+メトロニダゾール+クラリスロマイシン)では,4日間,7日間,10日間で除菌率に差がない21)。オメプラゾール,ビスマス,テトラサイクリン,メトロニダゾールの4剤療法の2日間と7日間では7日間が有意に除菌率が高いと報告され22),7日間が適当とみなされる。オメプラゾールとアモキシシリンの2剤療法においてオメプラゾール40mgと80mgの間で除菌率に差がなかった23)。一方,アモキシシリンとクラリスロマイシンを用いた3剤療法でラベプラゾールナトリウムの20mg,40mg,80mgの異なる投与量の違いは除菌率に差はなかったと報告されている24)。一方,クラリスロマイシンの400mgと800mgの除菌率には違いがないと報告されている17)(レベルII)。除菌時期について,3剤療法においては先行するPPI投与は除菌率に影響しない25)(レベルII)。

(5)疾患別(胃潰瘍と十二指腸潰瘍)の除菌率の差
2剤療法および3剤療法で胃潰瘍と十二指腸潰瘍の除菌率に差はない7),8)。2剤療法(オメプラゾールとアモキシシリンまたはクラリスロマイシン)で胃潰瘍の除菌率が十二指腸潰瘍と慢性胃炎に比べ高い26)との報告と,胃潰瘍が十二指腸潰瘍より除菌率が低いとの報告4),5)があり一定の結果は得られていない。

 

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