ガイドライン

(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 −H. pylori二次除菌保険適用対応−

書誌情報
第1部 胃潰瘍の基礎知識

 
3.症状

胃潰瘍の症状は,心窩部痛から,上腹部不快感,胸やけ,げっぷ,呑酸と多様であり,特異的な症状には乏しい。多くの患者は上腹部不快感を訴えるがそのような症状は潰瘍以外にも認められる。一方,消化管出血や穿孔のような合併症が起こるまでまったく無症状のこともある。高齢者では,特にこの傾向がみられるので慎重な観察が必要である。

1)臨床症状
胃潰瘍の症状として疼痛は2/3以上に認められるが,上腹部に限局していることが多く,性状としては,鈍い,疼くような,焼けるような痛みであり,一般に持続的である。食事と疼痛との関係は強く,胃潰瘍では胃内容が排出される食後60〜90分に疼痛をきたすとされているが,十二指腸潰瘍に多いとされる空腹時痛を呈することも少なくない27)表7)。食事あるいは制酸剤による症状の改善は十二指腸潰瘍に比べ少ない。背部への放散痛も認められるが,その程度は十二指腸潰瘍に比べると軽い。潰瘍の症状を引き起こすメカニズムは,明らかになっていないが,潰瘍底への胃酸の刺激だけでなく,炎症の結果遊離されるケミカル・メディエーターであるセロトニン,ヒスタミン,ブラジキニンなどによる神経の刺激や消化管壁の伸展,攣縮が関係すると考えられている。
胸やけ,呑酸とげっぷは,酸症状と呼ばれるものであるが,胃食道逆流症状とも考えられている。心窩部の膨満感は,疼痛に次いで認められる症状である。胃潰瘍では,胃酸分泌低下による腸管内ガス産生亢進および腸運動の低下が腹部膨満感の機序と考えられている。一方,臨床的には無症状の潰瘍が内視鏡による健診などで,1〜2%に認められている。特に高齢者では,無症状潰瘍の頻度は高く,慎重な観察が必要である。さらに白苔を有する活動性潰瘍の存在と症状との関連も少ない。内視鏡で治癒が確認された患者の38%は症状が消失するが,一方49%の患者では,潰瘍の治癒がみられないにもかかわらず症状が消失したとも報告されている28)

表7 胃潰瘍の自覚症状
症状 件(比率) 症状 件(比率)
心窩部痛 食後時痛 109(33.1%) げっぷ 38(11.6%)
空腹・夜間痛 166(50.5%) 食欲不振 139(42.2%)
背部痛 14  (4.3%) 吐血 2  (0.6%)
腹部膨満感 138(41.9%) 下血 9  (2.7%)
悪心 111(33.7%) 下痢 4  (1.2%)
嘔吐 51(15.5%) 便秘 4  (1.2%)
胸やけ 114(34.7%) 無症状 28 (8.5%)
    329例
原田直彦,千ヶ岩芳春(竹本忠良 監,中沢三郎・森賀本幸・岡崎幸紀 編):初発時症状,日本消化性潰瘍学:医科学出版社,pp.578-82,1995

 

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