患者・市民参画の体験談(山口育子氏)

[最終更新日] 2024年2月13日

1.患者・市民参画体験談:インタビュー記事〔山口育子氏〕(2017年7月6日)

診療ガイドラインの作成には、どのような形で関わりましたか?

まず一つは高血圧治療ガイドラインの改訂版を作るところです。多くの高血圧の専門家が発表される場に参加しまして、その専門家の方々がガイドラインの内容をこうしたほうがいいのではないかと説明されて、それに対していろんな方が、いやそれはこうなんじゃないか、ああなんじゃないかと言う様な、喧々諤々な話し合いをするところを聞いておりました。後ほど、患者の立場から意見書を出して欲しいと依頼がありまして、その話し合いの中で感じたこと、たとえば改訂したこの部分は患者さんに伝えたほうがいいんじゃないかとか、この部分については患者が迷うところなので、患者にもわかりやすく解説していただきたいとか、あるいはここを作るまでの間にいろんな意見があって最初からひとつにまとまったわけではないというようなことも、私は知ることができたので、このように専門家でも迷われる部分があるんだなと言う様な事がわかったほうがいいんじゃないかとか、そういったことを書面1~2枚にまとめて提出をしました。

そうすると作成委員長から数ヵ月後にお電話がかかってきまして、専門家向けのガイドラインの改訂はできたけども、今度は患者 さん向けの解説本を作りたいと思ってると。そこで色々意見書を出してもらったので、その意見を全て盛り込んだ上で、共著で高血 圧の話というものを出さないかというようなご依頼がありました。たたき台は作って下さったので、そのたたき台に対して意見を伝 えさせていただきました。

それから、急性腹症と急性膵炎のガイドラインに関しては、ある程度ガイドラインの雛形ができた段階で、患者の視点からみて、 何か気になることとか文章上もそうですけど、意見があったら伝えてほしいというような内容でした。かなりの枚数がありまして、時間が短期間しかなかったので、かなりかかりっきりで、一般の人が読むものではないので、文章がわかりにくいとかそういう指摘 はせずに、ちょっと矛盾していることとか分かりにくい点とか、もう少しこういうふうな工夫があればというような意見を出したような記憶がございます。

そしてもう一つが心臓血管外科手術でライブ手術というものが行われていて、ライブ手術をするときのガイドラインを作るという ようなものでした。患者の立場からみて、たとえばライブ手術をするとなると術者が非常に緊張すると、緊張した術者に手術をされ る患者の立場というような視点から、何がどうかわるかということも含め、色々とお話を伺って、なぜそのビデオじゃだめなのか、ライブでそれを実況中継のように見るわけですね、実況中継のように見ることっていうのは何がおきるか分からないそこでの手技を 確認していくんだっていう話だったんですけども、何が起きるかわからないライブでさらに緊張した状況におかれて術者が手術す るっていうことについてやっぱり非常に倫理的に難しい問題なので、意見をいっぱい言ってその基準作りというものをしたというような経緯です。

診療ガイドライン作成に参加する上で、気をつけたこと工夫したことなどをお聞かせください。

患者の視点ということが一番大事だと思っていますので、患者の視点から見たときの素朴な疑問であったり、もし受ける患者に なったときに、何が気になるかというような点を大事にして意見を述べました。高血圧については特にいろんな方のご相談をお聞きしていますので、高血圧という生活習慣病の患者さんでどういった方が多いのか、どういう問題が起こりがちなのか、診療ガイドラインの中で特に患者に伝えていただくにはどこが重要なのかとか。

高血圧の薬って一日一回でいいとか二回飲むとか三回飲むとかっ ていうのがあるんですね。それを一日一回の薬を飲み忘れたときの対処方法とか、一日二回の薬を飲み忘れたときの対処方法とか、そういう患者がよく迷う視点ですね、そういったものを取り入れていただきました。

急性腹症と急性膵炎に関しては、あまり患者の視点というよりも 内容全体を読ませていただいて、ここ矛盾してないかな、とかわかりにくいんじゃないかなとかそういったことにポイントをおいてお伝えをした記憶があります。

診療ガイドライン作成に参加してよかったと思うことはどんなことでしょうか。

高血圧ガイドラインのところは、実際に治療に携わってらっしゃるドクターたちが200人くらいで話合っておられた訳ですけども、結構若手の方がちゃんと意見を言うんだなということとか、ここまで意見を戦わせてらっしゃるんだなというような、けして妥協するわけでもなく、ちゃんと反対意見、異なる意見の方がそれを伝えるっていうことをされていた姿を見ることができたことですね。すごく真摯な姿勢でガイドライン作成に臨んでらっしゃるということを実感できたっていうのが良かったなと思ったことです。 そこからさらに患者の立場を入れるだけじゃなくて、その意見をちゃんと汲み取ってくださって、患者向けの本までつくるというようなところにつなげてくださったということも参加してよかったと思うところです。

どのような方が市民の立場で診療ガイドライン作成に携わるといいと思われますか?

自分の経験が全てだという風に思わずに、いろんな考え方の人がいるということを前提にしている方、がまず一番大事かなと思います。それからいろんな人の意見に耳を傾けて、自分の言うことが全てだと押し付けるんじゃなくて、いろんな意見を聞いたうえで 総合的に自分の意見の構築をするという姿勢をもった人ですね。例えば何か疑問や意見があったときに、そこを解決して次に進めていける人。例えば話し合いの中で今何の議論をされてるかよくわからないなというときに、そのままにして自分の言えることだけ言うんじゃなくてそこちょっと何の話かわからないので、もう少し別の角度でお話いただけますか?という風にちゃんと自分がわから ないことはわからないと言いながら、人の話に耳を傾けられる人ですかね。

あとは、特に私の今までの活動の経験の中で、こういうことに積極的に参加したいんですという方って、はやる気持ちをもってる 方が多いんですね。自分はそういう意見を届けたいんだ!という思いが強すぎても、強すぎるとどうしても自分の意見なんで取り入れないんですか!という風になってしまったりとか、正しいことをいってるのに!というようなアピールになってしまう方も結構いらっしゃるので、そこはやっぱり冷静に話し合いに参加できる、自分のマイナス面という事も把握できる人。って言ってたら人がいなくなってくるかもしれませんけど。そういうのを前向きにちゃんと自分の改善しないといけない点はなんだろうということを常に 考えながら、あんまり反省ばっかりして内省的になる必要はないとは思いますけども、やっぱりちょっとここは少しひかえたほうが いいな、とか、ここは意見がわれてるからなんでなのか聞いたうえで、自分の意見を通すばかりじゃなくって、ああそういうことだったらひくこともやろうと冷静にしていける方かなと思います。

これから実際に患者・市民代表として、診療ガイドライン作成に参加を考えている方に対して、アドバイスをお願いいたします。

一般的に診療ガイドラインの作成に参加しませんか?っていわれたら、きっと戸惑われると思うんですね。一般の人になにができるだろう、そんな専門家の中に入って自分たちが役に立つだろうかと。でもやっぱり今、専門家だけで作っていくものではなくて、それを医療という利用者の立場の人の意見も聞きながら、専門家の視点だけではないということが大事だといわれていますので、少し好奇心をもって一度参加してみて、どんなものなのか覗くくらいの気持ちで、最初あまり重いものを背負う気分じゃなくてはじめられたほうが入り込みやすいのかな、と。そこでいろんな専門家の人たちの悩みとか迷いとかを眼にすることがあると思いますので、もしかしたらそういうところに参加することで、今までと違う医療の価値観というものが見つけられるかも知れないと思いますので、一度積極的に参加されてみるといいかなと思います。