精巣腫瘍診療ガイドライン 2015年版

 
 

CQ6
IGCCC(International Germ Cell Consensus Classification)は予後予測に有用か?

推奨グレードA  IGCCC は、進行性精巣腫瘍の予後および治療法を決定するために、必要不可欠である。
ただし、最近の検討では poor prognosis であっても、予後改善の傾向がある。また、サルベージ化学療法時の新しい予後予測モデルの構築が近年試みられている。


解説
   1997 年に IGCCCG から、IGCCC(付表 2)が報告されて以来1)、進行性精巣腫瘍は、IGCCC に基づいて導入化学療法の選択や治療方針の決定がなされるようになり、IGCCC の有用性については疑う余地はない。しかし、IGCCC が報告されてから 15 年以上が経過し、治療法の進歩や症例の集約により、現状とのずれが生じている。そのため、IGCCC の有効性についての再検討がなされ、特に poor prognosis をサブグループ化し、より予後を反映する試みがなされた。
   Dijk らは、1989 年以降の症例について記載された 10 論文を検討し、1,775 例の NSGCT(non-seminomatous germ cell tumor)について meta-analysis を行った。その結果、good prognosis、intermediate prognosis、poor prognosis の各群の予後が、94%、83%、71%であり、近年の化学療法の進歩による poor prognosis の予後改善が著しいことを示した2)。本邦でも多施設共同研究が行われ、296 例について検討がなされ、IGCCC poor prognosis の予後改善が著しい結果を報告している3)。サブグループ解析では、Dijk らは、IGCCC の問題点として、用いた risk factor を挙げている。IGCCCG から提供された 3,048 例の NSGCT のデータを Cox regression model を用いて解析し、IGCCC を上回ることができなかったが、poor prognosis では 3 グループに細分化が可能であり、計 5 つの risk group に分類することで、より予後を反映するとした4)
   また、Kollmannsberger らは、332 例の poor prognosis 群を CART(classification and regression-tree)analysis を用いて検討した。この解析では、精巣または後腹膜原発か縦隔原発か、肺以外の実質臓器転移の有無、後腹膜転移巣が 10 cm 未満か否か、転移巣の数、AFP、hCG-β、LDH の値を risk factor として用い、“very poor”群を同定することが可能であったと報告した5)
   また、International prognostic factors study group はシスプラチンベースの 1st line 化学療法後の抵抗例、または再発例でサルベージ化学療法を施行した1,594 例を対象として後方視的にサルベージ化学療法施行時の新しい予後予測モデルの構築を試みた6)。パラメータとして原発部位、1st line 化学療法のレスポンス、再発までの期間、サルベージ化学療法前の AFP 値、HCG 値、肝・骨・脳転移の有無、pure seminoma か否かをスコア化し、very low、low、intermediate、 high、very high の 5 群に分ける方法を提唱した(付表 3)。今後、この分類によりサルベージ時点での予後予測、サルベージ治療の評価が行われる可能性もある。
   IGCCC は現在でも非常に有用であり、予後をよく反映するが、今後 poor prognosis に関しては、サブグループ化したうえで、治療方針の変更などを考慮してもよいと考えられる。

付表 2 IGCCC:International Germ Cell Classification
#
* 非再発率および全生存率に関して、1997 年に報告された当時のものであり、近年の報告では、成績は向上している。特に非セミノーマのpoor prognosis 群の向上は目覚ましく、約70-80%の全生存率を得られる。

付表 3 IGCCCG 2:International Germ Cell Cancer Consensus Group 2
# *AFP=アルファフェトプロテイン *hCG=ヒト絨毛性性腺ゴナドトロピン *IGCCCG=International Germ Cell Cancer Collaborative Group;LBB=肝,脳,骨転移 *PFI=プラチナ製剤無使用期間 *PRm-;partial response with marker normalization *PRm+;partial response without marker normalization *救済化学療法開始時の予後予測分類であり,初回化学療法の際は,従来のIGCC分類を用いる。

文献
1) J Clin Oncol. International Germ Cell Consensus Classification:a prognostic factor-based staging system for metastatic germ cell cancers. International Germ Cell Cancer Collaborative Group.1997;15:594-603.(V)
2) van Dijk MR, Steyerberg EW, Habbema JD. Survival of non-seminomatous germ cell cancer patients according to the IGCC classification:An update based on meta-analysis. Eur J Cancer. 2006;42(7):820-6.(I)
3) Shintaku I, Satoh M, Okajima E, et al. Jpn J Clin Oncol. 2008;38(4):281-7.(IVb)
4) van Dijk MR, Steyerberg EW, Stenning SP, et al. Survival of patients with nonseminomatous germ cell cancer:a review of the IGCC classification by Cox regression and recursive partitioning. Br J Cancer. 2004;90:1176-83.(IVa)
5) Kollmannsberger C, Nichols C, Meisner C, et al. Identification of prognostic subgroups among patients with metastatic‘IGCCCG poor-prognosis’germ-cell cancer:an explorative analysis using cart modeling. Ann Oncol. 2000;11:1115-20.(IVa)
6) The international prognostic factors study group, Lorch A, Beyer J, et al. Prognostic factors in patients with metastatic germ cell tumors who experienced treatment failure with cisplatin-based first-line chemotherapy. J Clin Oncol. 2010;28:594-603.(IVb)

 
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