(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
4章 鑑別診断
3.線維筋痛症と心療内科的疾患(心身症,ストレス関連疾患)の合併

arrow 線維筋痛症(fibromyalgia:FM)は全身の疼痛のみならず,各臓器にまたがる多様な症状が出現するため,患者は最も苦痛となる症状を訴えて臨床各科を受診する。患者の75%は少なくとも24以上の症状を有し,健康状態は16%が最悪(awful),35%が悪い(poor)との認識があると言われるように1),多彩な症状によって患者のQOLがかなり損なわれていることがうかがわれる。
arrow これらの症状の中心にある線維筋痛症の存在に気づかないと症状の多様性が理解できず,各科の対症療法に終始して,いたずらに患者のドクターショッピングをまねくことになる。線維筋痛症の病態を理解しておくことで,これらの症状を一元的にとらえ,診断・治療に結びつけることができる。そのためには患者の症状を詳細に聴取し,診察により十分な理学的所見をとり,的確な臨床検査所見と併せて診断する。したがって大切なことは線維筋痛症と他の疾患を鑑別するというより,合併する疾患を的確に診断し線維筋痛症の病態理解や治療に役立てるという考え方のほうが合理的である。


1.心身症の概念と線維筋痛症
arrow 心身症(psychosomatic disease:PSD)は「身体疾患の中でその発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症,うつ病など他の精神障害に伴う身体症状は除外する(1991日本心身医学会教育研修委員会)」と定義され2), 心身症の特徴として以下の点が挙げられている。
a) 身体的障害は自律神経系,内分泌系,免疫系を介して,特定の器官系統に出現し,「器質的な病変」ないし,「病態生理的過程の関与」が認められる。
b) 心理社会的因子が明確に認められ,これと身体的障害の発症や経過との間に時間的な関連性が認められる。心身症は病態名であって病名ではないことより高血圧(心身症),十二指腸潰瘍(心身症),気管支喘息(心身症)などと記載するようになっている。
arrow 線維筋痛症の病態や発症,経過をみると心身症の概念に近く,また多くの心身症(器質的疾患も含んで)も合併するために心療内科的な視点で線維筋痛症をとらえると理解しやすい。表1に臨床各科にみられる心身症の一覧を示す3)。線維筋痛症はこれらの心身症との合併が多く,それぞれの概念,診断,鑑別を知っておく必要がある。

表1 臨床各科にみられる心身症
心身症を,①器質的疾患,②機能的疾患,③神経症傾向や一過性の心身反応を呈するものにわけて分類した。
    これらすべてが線維筋痛症に合併する可能性がある
表1

 

 
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