(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
 
第2章 高尿酸血症・痛風の診断


2 高尿酸血症の病型分類

●ステートメント
高尿酸血症は,「尿酸産生過剰型」,「尿酸排泄低下型」,「混合型」に大別される。
エビデンス2b推奨度A

病型分類には,尿酸クリアランスおよびクレアチニン・クリアランス(Ccr)の測定を行う。(尿酸産生過剰型:尿中尿酸排泄量>0.51mg/kg/時,尿酸排泄低下型:尿酸クリアランス<7.3mL/分)
エビデンス2b推奨度A

治療中の病型の変化に注意する。
エビデンス2b推奨度A



高尿酸血症・痛風の病態を把握し,その合理的治療を行うため,病型に基づき分類する。
健常者の生体内には,通常約1,200mgの尿酸プールが存在する。尿酸産生量はおよそ700mg/日である。このうち約500mg/日が尿中に排泄され,約200mg/日が汗,消化液などに排泄される(腎外性処理)1),2)。高尿酸血症の成因は,尿酸産生量の増加(尿酸産生過剰型),尿中尿酸排泄能の低下(尿酸排泄低下型)および両者の混在した混合型に大別される2),3)

1 病型分類の実際
一般に診断時,尿酸の出納は定常状態にあるので,治療開始前に少数回,尿酸産生量,尿酸排泄能を測定することにより病型分類が可能である。このために,尿酸クリアランスおよび,腎機能についての補正のためのクレアチニン・クリアランス(Ccr)の測定を併せて行う(表1)。これらは,1日尿量で行うこともできる(24時間法)が,外来診療では実際的でないため,通常60分法で行う。検査予定日の3日前より,高プリン食・飲酒を控えるよう指示し,当日は絶食で受診させ,300mLの飲水を負荷し30分後に排尿させる。以後60分間の分割尿を正確に採取するとともに,中間時(蓄尿開始後30分)に採血を行い,得られたデータにより各パラメーターを求める3)

表1 尿酸クリアランス,Ccr試験実施法(60分法)
表1 尿酸クリアランス,Ccr試験実施法(60分法)


1 尿酸産生量
直接の定量は困難であるので,通常,尿中尿酸排泄量より推測する(表2)。高プリン食制限下絶食飲水負荷時(前記試験時でよい)の尿中尿酸排泄量が0.51mg/kg/時より大きいと尿酸産生過剰型としてよい。
ただし,尿酸クリアランス低下症例では代償性に腎外性処理が増加するため,この点を補正して

尿中尿酸排泄量>0.030×尿酸クリアランス+0.325(mg/kg/時)

のときを,尿酸産生過剰型とするとより正確である4)

表2 尿中尿酸排泄量の算出法
表2 尿中尿酸排泄量の算出法


2 尿酸排泄率
尿酸クリアランスの多寡により尿酸排泄低下の有無を検討する。また,原発性の尿酸排泄低下型ではなく,腎機能障害の1所見として尿酸クリアランスが低下する場合もあるので,その鑑別の意味でCcrの測定を併せて行い,尿酸クリアランス/Ccr比(R)を求める。Rは,原発性尿酸排泄低下型では低値を示す(表34)

表3 尿酸クリアランスおよびCcrとその比の算出法
表3 尿酸クリアランスおよびCcrとその比の算出法
(文献4より引用)


3 尿中尿酸排泄量と尿酸クリアランスによる病型分類(表4)
中村らの報告では,尿酸産生過剰型12%,尿酸排泄低下型60%,混合型25%,正常型3%であった(表55)

表4 尿中尿酸排泄量と尿酸クリアランスによる病型分類
表4 尿中尿酸排泄量と尿酸クリアランスによる病型分類


表5 高尿酸血症病型別の尿酸代謝係数
表5 高尿酸血症病型の尿酸代謝係数
文献5にさらに症例を追加したもの。中村徹編:高尿酸血症・痛風の診療.大阪,メディカルレビュー社,2003より引用)


4 簡便法
外来で60分法を行う時間的余裕がない場合に,スポット尿を用いる簡便法があるが,明確なエビデンスたりうる報告はない。


注意事項
治療中に,血清尿酸値・症状が改善すると,それが食生活をはじめとする患者の生活様式に影響を与えるなどの理由で,病型が変化することがある。特に尿酸排泄低下型に,尿酸産生過剰型の要因が加わることが比較的多い6)。治療効果の減弱など,疑わしい所見があれば,約2週間の休薬の後,病型の再評価を行う。


文献
1) Benedict JD, Forsham PH, Stetten D Jr: The metabolism of uric acid in the normal and gouty human studied with the aid of isotopic uric acid. J Biol Chem 181: 183-193,1949 エビデンス2b
2) Seegmiller JE, Grayzel AI, Laster L, et al: Uric acid production in gout. J Clin Invest 40: 1304-1314,1961 エビデンス2b
3) 中村徹,内田三千彦,内野治人,他:痛風の高尿酸血症の尿酸クリアランス法による検討.尿酸 1:45-61,1977 エビデンス2b
4) 中村徹,内田三千彦,内野治人,他:痛風の高尿酸血症の尿酸クリアランス法による検討.尿酸 2:125-130,1978 エビデンス2b
5) 中村徹,加川大三郎,樋口富彦,他:lnosine 負荷による痛風高尿酸血症の検討.尿酸 5:17-27,1982 エビデンス2b
6) Tsutani H, Kiriba C, Imamura S, et al: Latent overproductive hyperuricemia increases in patients during the intermittent phase of gouty arthritis under long-term antihyperuricemic treatment. Mod Rheumatol 10: 207-210,2000 エビデンス2b


 

 
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