(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
 
第1章 高尿酸血症・痛風の最近のトレンドとリスク


1 高尿酸血症の定義

●ステートメント
高尿酸血症は,尿酸塩沈着症(痛風関節炎,腎障害など)の病因であり,血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものと定義する。性・年齢を問わない。
エビデンス2a推奨度B

女性においては,血清尿酸値が7.0mg/dL以下であっても,血清尿酸値の上昇とともに生活習慣病のリスクが高くなる。潜在する疾患の検査と生活指導を行うが,尿酸降下薬の適応ではない。
エビデンス2a推奨度B



『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』では,血清尿酸値を2つの観点から検討する。

1. 痛風関節炎,腎障害をはじめとする尿酸塩沈着症(urate deposition diseases)の原因としての高尿酸血症
2. 種々の生活習慣病の病態において臨床上有用な指標(マーカー)としての血清尿酸値


高尿酸血症・痛風の診療においては,上記1の尿酸塩沈着症が現実的な問題であった。『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第1版)』1)は,主としてこの視点から作成され,治療方針も尿酸塩沈着を生じる可能性がある血清尿酸値で層別化された。したがって,高尿酸血症は体液中で溶解度を超える血清尿酸の濃度であり,7.0mg/dLを超えるもの2),3)と定義した。血清尿酸値には著明な性差があり,男性は女性より明らかに高値であるが,血清尿酸の飽和濃度に男女差はなく,高尿酸血症の定義には性差を設定しなかった。つまり,「性,年齢を問わず,血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものを高尿酸血症」と定義した。
尿酸塩沈着症において高尿酸血症は原因であり,しかも治療が可能である。高尿酸血症は痛風関節炎の明確なリスクであり,治療的介入により痛風関節炎は再発しなくなる。『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第1版)』が発行された後もこのことを裏づけるエビデンスは増加しており,第2版においても高尿酸血症は尿酸塩沈着症の原因となる病態として定義する。治療方針についても第1版と基本的に変わりはない。
しかしながら,種々の生活習慣病においては血清尿酸値が臨床上有用なマーカーになることが示されてきた。メタボリックシンドロームが注目され,心血管系疾患のリスクを中心とした解析が行われた結果,血清尿酸値の高値が疾病の発症を予測する因子であることも示された。しかしながら,これらの病態における尿酸の意義づけは明確ではない。痛風関節炎のような尿酸塩沈着症でないことは,病態に関与する臓器に尿酸塩の沈着を認めることがないこと,特に女性において血清尿酸値の飽和濃度である7.0mg/dL以下でもリスクの上昇が認められていることから明らかである4)。さらに,現在に至るまで,これらの病態のリスクが治療的介入により改善(回避)されたという報告はない。
これらを総合的に勘案し,第2版では,血清尿酸値が7.0mg/dL以下であっても血清尿酸値の上昇とともに男女ともに生活習慣病のリスクが高まることを指摘する(図1)。女性は男性よりも低い血清尿酸値から,潜在する疾患の検査と生活指導が勧められる。ただし,リスクの増加は連続的であって明確な基準値を示すことはできなかった。また現時点では尿酸降下薬の適応にはならない。

図1 高尿酸血症の定義
図1 高尿酸血症の定義


文献
1) 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン作成委員会編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第1版).東京,日本痛風・核酸代謝学会,2002
2) Loeb JN: The influence of temperature on the solubility of monosodium urate. Arthritis Rheum 15: 189-192,1972
3) Mikkelsen WN, Dodge HJ, Valkenburg H: The distribution of serum uric acid values in a population unselected as to gout orhyperuricemia; Tecumseh, Michigan1959-1960. Am J Med 39: 242-251,1965
4) Hakoda M, Masunari N, Yamada M, et al: Serum uric acid concentration as a risk factor for cardiovascular mortality; A longterm cohort study of atomic bomb survivors. J Rheumatol 32: 906-912,2005エビデンス2b


 

 
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