(旧版)特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第2版

 
 
第2章 特発性正常圧水頭症の治療
I シャント術


2.シャントシステムの種類(エビデンステーブル18参照)

iNPH に用いられるシャントシステムの種類にはその機構上の特徴から,A)圧可変式バルブ,B)固定式差圧バルブ,C)重力可変式バルブ,D)自動可変抵抗バルブに大別される。また座位や立位時の脳脊髄液過剰排出を防止するためのE)抗サイフォン装置も考案されており,これは上記のバルブと組み合わせて使用するものとバルブと一体型のものがある20)21)。バルブの種類と現行のシャントバルブの対比を一覧表に示した(表1)。

表1.シャントシステムの種類と現行モデル対比表(2011年2月1日現在)
表1 *抗サイフォン装置一体型バルブ。


A.圧可変式バルブ(adjustable or programmable valve)
シャントシステム設置後に,体外から圧設定を自由に何度でも変更できることが最大の利点のバルブである。脳のコンプライアンスが低くなっているiNPH では圧変更を要することが多く,また複数回の変更を要することも多い22)−24)。座位を基準として体格に応じて圧設定を行う方法25)26)や,高めの設定圧から徐々に適正圧に調整していく方法によって合併症を最小限に抑えられるとの報告もあり2)27),時点でiNPH には本バルブの使用が望ましい1)24)推奨グレードB)。以下E)に述べる抗サイフォン装置を組み合わせたものもある。使用上の注意として,種類により構造上MRI 撮影時に設定圧が変更される可能性があり22),MRI 終了後には圧のチェックが必要である。しかし,実験室での比較テストで3テスラのMRI でも設定圧に影響が出なかったバルブもある28)構造上の故障を生じうることや,設定圧変更でも防げない硬膜下水腫の合併がありうること23)に注意を要する。

B.固定式差圧バルブ(fixed differential pressure valve)
バルブ流入部(インレット)と流出部(アウトレット)の圧較差により流量が決定されるもので,構造が単純であり故障が少ないこと,および低コストであることが特徴である。従来,iNPH では低圧(5〜50mmH2O)ないし中圧(51〜110mmH2O)が勧められてきた。低圧は中圧に比較して有効性は高いが,硬膜下水腫などの脳脊髄液過剰排出の合併症の危険性が高く3),圧可変式バルブ使用時の最終設定圧が150mmH2O 前後に落ち着くことを考えれば26),むしろ中圧ないし高圧のバルブが勧められる。低圧バルブで脳脊髄液過剰排出が生じた場合や,中圧・高圧バルブで効果が乏しい場合に,他の固定式差圧バルブに変更するには再手術を要する。前述した圧可変式バルブとの比較において,設定圧の変更が非侵襲的には行えないため,その効果および合併症発生の点において劣っているという報告がある24)29)(推奨グレードC1)。

C.重力可変式バルブ(gravity-assisted valve)
臥位と立位で重力バルブを用い,異なる脳脊髄液流路と抵抗をもつことにより,立位時の脳脊髄液過剰排出を防ぐ仕組みである。バルブの設置方向を誤ると機能不良もあることに留意しなければならない。VP シャント術での使用経験が積み重ねられつつあるが,バルブ設置方向が体軸と直行するLP シャント術では使用しても抗サイフォン機能は働かない30)(推奨グレードC1)。

D.自動可変抵抗バルブ(flow regulated valve)
バルブにかかる圧に応じて内部抵抗が自動的に変化し,一定の圧差で流量が一定となるものである。本バルブは構造上MRI でアーチファクトが出ない利点がある5)21)。本バルブと固定式差圧バルブとの比較では症状改善率,感染率,シャント機能不全率,硬膜下水腫発生率に差がないとの報告から5)31),特に本バルブをiNPH 治療に推奨する根拠は乏しい(推奨グレードC1)。

E.抗サイフォン装置(anti-siphon device)
上記の種々のバルブのみでは,座位や立位で脳脊髄液過剰排出による頭蓋内圧低下症状を呈することがある。このサイフォン効果発生を防止する目的で考案された装置である。上記のそれぞれのバルブと一体となったものと,バルブと組み合わせて用いる単独の装置がある。iNPH 症例に圧可変式バルブと本装置を組み合わせて用い,硬膜下水腫発生の頻度は3%に抑えられる一方,構造上の故障は6%でみられたとの報告がある32)。本装置の組み込まれていない圧可変式バルブ使用例において脳脊髄液過剰排出が認められ,圧の設定変更でも対処できない場合は本装置の使用を考慮する(推奨グレードC1)。


 

 
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