(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン

 
第3章 褥瘡の治療


急性期褥瘡の局所治療
1.急性期とは
褥瘡が発生した直後から約1〜3週間は、褥瘡の局所病態が不安定であることが多い。この時期を「急性期」と呼ぶことにする。一方、それ以降の局所病態が比較的安定する時期を「慢性期」とする。急性期の治療については、これまで論じられることが少なかったため、慢性期とは分けてエキスパートオピニオンを中心に述べる。
急性期褥瘡の治療を述べる前に、まず、この時期の褥瘡の特徴を知る必要がある。
  • 急性期においては、全身状態が不安定であったり、さまざまな褥瘡発生要因が混在していることが多い。これらが複雑に関与して褥瘡の状態も多様に推移する。
  • 局所には強い炎症反応を認める。
  • 発赤、紫斑、浮腫、水疱、びらん・浅い潰瘍といった多彩な病態が短時間に次々と出現する可能性がある。
  • 急性期の褥瘡においては、不可逆的な阻血性障害がどれぐらいの深さにまで達しているかを判定することがきわめて難しい。一見、浅い褥瘡と見えても、あとで深い褥瘡であることが判明することもある。患者や家族にも、褥瘡発見時にこの事実を説明しておく必要がある。時間経過とともに創面が暗紫色から黒色に変化する場合には、損傷が真皮を越えて深部組織にまで及んだ深い褥瘡である可能性が高くなる。
  • 急性期の褥瘡部および褥瘡周辺の皮膚は脆弱になっており、外力が加わると皮膚剥離や出血などが容易に生じる。
  • 急性期の褥瘡は痛みを伴いやすい。


2.急性期褥瘡の治療
急性期褥瘡の治療においては、以上に挙げた特徴を十分に考慮する必要がある。
褥瘡が生じた場合には、局所治療を考える前に褥瘡の発生原因を追求することが重要である。除圧不足だったのか、ずれが加わっていたのか、あるいは全身状態や栄養状態の悪化が引き金になったのかなどを考え、まずこれらの褥瘡発生原因を徹底して除去することが重要である。特に全身状態の安定化は、急性期の褥瘡治療には不可欠である。
急性期褥瘡の局所治療における基本方針は、適度の湿潤環境を保ちながら創部を保護することである。

1)ドレッシング材
急性期褥瘡の治療にはドレッシング材が用いられることが多い。ただし、急性期の局所病態は急激に変化することがあるので、褥瘡部を頻回に(できれば毎日)観察することが大切である。よって、創の状態を透見できるドレッシング材を用いることが望ましい。もし、不透明で粘着力のあるドレッシング材で創を覆ってしまうと褥瘡部の観察ができないため、数日後にドレッシング材を剥がすまで、病態の悪化に気づかないこともある。
一方、急性期の褥瘡部およびその周囲の皮膚は脆弱であるため、ドレッシング材でも創面に固着しやすいものや粘着力の強いものを用いると、ドレッシング材を交換する際に皮膚剥離を起こすことがある。よって、非固着性あるいは粘着力の弱いドレッシング材を使用することが望ましい。

2)外用薬
急性期褥瘡の治療には外用薬も用いられる。通常、創面保護効果の高い油脂性基剤(白色ワセリンなど)のものが選択されることが多い。潰瘍面などに感染を合併した場合には、非特異的抗菌活性を有するスルファジアジン銀などが有用であるが、抗生物質含有軟膏は一般に効果に乏しく、耐性菌を生じる危険性もあるので避けるべきである。
なお、外用薬を用いる場合、ガーゼで創を覆うことが多いが、滲出液を伴う創面に通常のガーゼを用いると、ガーゼに吸収された滲出液が乾燥することによってガーゼが創面に固着し、ガーゼ交換の際に創面を傷つける恐れがある。ガーゼのほうに油脂性外用薬を厚めに塗布するか、非固着性ガーゼを使用する必要がある。

3)外科的切除
時間経過とともに壊死組織の存在が明らかになる場合、この壊死組織をあわてて外科的に切除しようとすると、出血や疼痛が著しいことがある。外科的切除は、急性期が過ぎ、壊死組織の分界(周囲の組織との境界が明瞭になること)が明らかになってから行うほうがよい。

4)疼痛管理
急性期には褥瘡部の疼痛管理も重要である。痛みを訴えることができない患者も多いので、医療者のほうが常に疼痛のことを念頭に置き、適宜鎮痛薬などを投与することが大切である。

 

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