尿路結石症診療ガイドライン 2013年版
3 再発予防
CQ 34
フルーツジュースの摂取は尿路結石再発の予防になるか?
また,ビタミンC の過剰摂取は尿路結石再発を促進するか?
フルーツジュースの摂取は尿路結石再発の予防になるか?
また,ビタミンC の過剰摂取は尿路結石再発を促進するか?
推奨グレード C1 |
クエン酸を多く含むフルーツジュースでは尿路結石再発予防効果が期待できるが,すべてのフルーツジュースに結石再発予防効果があるとはいえない。 |
推奨グレード C1 |
ビタミンC の過剰摂取により尿中シュウ酸排泄量が増加することが予想されるが,尿路結石再発を促進するとはいえない。 |
解説
フルーツジュースの結石再発効果については,さまざまな報告があり一定の見解を得ていないのが現状である。
グレープフルーツジュースの効果に関しても同様で,男女ともに結石予防効果があったとする疫学報告3)や,結石形成抑制効果がなかったとする文献4),尿中シュウ酸カルシウムの過飽和度を有意に低下させることから,結石予防効果が期待できるとしたもの2)などがあるが,コンセンサスは得られていない。
尿中pH を低下させることで感染結石予防になるといわれているクランベリージュースについては,摂取することでシュウ酸カルシウム結石発生のリスクが大きくなるとする報告から,変わらない,あるいは減少するとするものまであり,混迷している5〜7)。
このほかクエン酸を多く含み尿中pH を上昇させ,尿中クエン酸排泄量を増加させるのに適したフルーツとしてはオレンジ,レモンが報告されており結石予防効果が期待されるが,現在までのところRCT によるエビデンスは示されていない。
ビタミンC は腸管から容易に吸収されるため,不適切な食生活を送らない限り体内で欠乏することはなく,また数か月間分の必要量は体内で貯蔵されているといわれている。厚生労働省によると,日本人成人のビタミンC の1 日推奨摂取量は100 mg とされている。過剰に摂取されたビタミンC はその大部分がascorbic acid のまま尿中に排泄され,一部がdehydroascorbicacid として尿中に排泄される。また過剰摂取されたビタミンC は,その一部が肝臓で代謝されシュウ酸として尿中に排泄されることもわかっている。したがって,ビタミンC の過剰摂取により,尿中シュウ酸排泄量が増加することが考えられるが,シュウ酸カルシウム結石再発を促進するか否かについてはさまざまな報告があり,はっきりとしたエビデンスは示されていない。1 日2,000 mg のビタミンC 摂取では尿pH に変化は認められなかったものの,尿中シュウ酸排泄量は健常人,結石患者ともに有意に増加したとする報告が散見される8,9)。ただし,結石再発を促進したか否かについての検討は,いずれの論文でもなされていない。サプリメントなどによるビタミンC の極端な過剰摂取は,尿中シュウ酸排泄量を増加させることが予想されるので,再発性尿路結石患者では留意する必要があると考えられる。
フルーツジュースの結石再発効果については,さまざまな報告があり一定の見解を得ていないのが現状である。
フルーツジュースの再発予防効果について
リンゴジュースは男性では結石予防効果があるが,女性では再発予防効果が見られなかったとする報告1),水のかわりにリンゴジュースを摂取した健康ボランティア女性では,コントロール群に比較しシュウ酸カルシウムの過飽和度に有意差を認めなかったとする報告2)などが見られる。
グレープフルーツジュースの効果に関しても同様で,男女ともに結石予防効果があったとする疫学報告3)や,結石形成抑制効果がなかったとする文献4),尿中シュウ酸カルシウムの過飽和度を有意に低下させることから,結石予防効果が期待できるとしたもの2)などがあるが,コンセンサスは得られていない。
尿中pH を低下させることで感染結石予防になるといわれているクランベリージュースについては,摂取することでシュウ酸カルシウム結石発生のリスクが大きくなるとする報告から,変わらない,あるいは減少するとするものまであり,混迷している5〜7)。
このほかクエン酸を多く含み尿中pH を上昇させ,尿中クエン酸排泄量を増加させるのに適したフルーツとしてはオレンジ,レモンが報告されており結石予防効果が期待されるが,現在までのところRCT によるエビデンスは示されていない。
ビタミンC と尿中シュウ酸排泄量
ビタミンC は柑橘類,イチゴ,メロン,トマト,ピーマン,生キャベツ,緑黄野菜等に多く含まれる水溶性ビタミンであるが,ヒトを含む霊長類,モルモットではL-gulonic acid をascorbicacidに転換させる酵素が存在しないため,体内で合成することができない。そのため生体維持に必要なビタミンC はすべて食事から摂取する必要がある。
ビタミンC は腸管から容易に吸収されるため,不適切な食生活を送らない限り体内で欠乏することはなく,また数か月間分の必要量は体内で貯蔵されているといわれている。厚生労働省によると,日本人成人のビタミンC の1 日推奨摂取量は100 mg とされている。過剰に摂取されたビタミンC はその大部分がascorbic acid のまま尿中に排泄され,一部がdehydroascorbicacid として尿中に排泄される。また過剰摂取されたビタミンC は,その一部が肝臓で代謝されシュウ酸として尿中に排泄されることもわかっている。したがって,ビタミンC の過剰摂取により,尿中シュウ酸排泄量が増加することが考えられるが,シュウ酸カルシウム結石再発を促進するか否かについてはさまざまな報告があり,はっきりとしたエビデンスは示されていない。1 日2,000 mg のビタミンC 摂取では尿pH に変化は認められなかったものの,尿中シュウ酸排泄量は健常人,結石患者ともに有意に増加したとする報告が散見される8,9)。ただし,結石再発を促進したか否かについての検討は,いずれの論文でもなされていない。サプリメントなどによるビタミンC の極端な過剰摂取は,尿中シュウ酸排泄量を増加させることが予想されるので,再発性尿路結石患者では留意する必要があると考えられる。
参考文献 |
1) | Curhan GC, Willett WC, Rimm EB, et al. Prospective study of beverage use and the risk of kidney stones. Am J Epidemiol. 1996;143:240-7. |
2) | Hönow R, Laube N, Schneider A, et al. Influence of grapefruit-, orange- and apple-juice consumption on urinary variables and risk of crystallization. Br J Nutr. 2003;90:295-300. |
3) | Curhan GC, Willett WC, Speizer FE, et al. Beverage use and risk for kidney stones in women. Ann Intern Med. 1998;128:534-40. |
4) | Goldfarb DS, Asplin JR. Effect of grapefruit juice on urinary lithogenicity. J Urol. 2001;166:263-7. |
5) | Kessler T, Jansen B, Hesse A. Effect of blackcurrant-, cranberry- and plum juice consumption on risk factors associated with kidney stone formation. Eur J Clin Nutr. 2002;56:1020-3. |
6) | McHarg T, Rodgers A, Charlton K. Influence of cranberry juice on the urinary risk factors for calcium oxalate kidney stone formation. BJU Int. 2003;92:765-8. |
7) | Gettman MT, Ogan K, Brinkley LJ, et al. Effect of cranberry juice consumption on urinary stone risk factors. J Urol. 2005;174:590-4 |
8) | Baxmann AC, De O G Mendonca C, Heilberg IP. Effect of vitamin C supplements on urinary oxalate and pH in calcium stone-forming patients. Kidney Int. 2003;63:1066-71. |
9) | Massey LK, Liebman M, Kynast-Gales SA. Ascorbate increases human oxaluria and kidney stone risk. J Nutr. 2005;135(7):1673-7. |