尿路結石症診療ガイドライン 2013年版
2 診断・治療
尿管結石の治療方針
1積極的治療の適応
10 mm 以上の尿管結石においては,自然排石の可能性は高くないため,患者の状況が許せば積極的な結石除去がすすめられる(CQ9)。また症状発現後1 か月以内に自然排石を認めない場合には,腎機能障害や感染を回避するために,積極的治療介入を考慮すべきである(CQ9,10)。
なお本項では,以下に該当する症例を除いた患者を対象として推奨する治療を示している。
なお本項では,以下に該当する症例を除いた患者を対象として推奨する治療を示している。
①複数結石,②感染を伴う結石,③放射線透過性結石(尿酸結石,シスチン結石,キサンチン結石,アデニン結石),④妊婦,⑤高度肥満,⑥尿路の解剖学的異常,⑦単腎,⑧腎機能障害,⑨出血傾向を有する患者(抗凝固剤内服患者を含む),⑩両側尿管閉塞,⑪stone street,⑫小児
2アルゴリズム
尿管結石に関する治療方針のアルゴリズムを図1 に示す。

3推奨される治療法
a)体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock wave lithotripsy:ESWL)
・長径10 mm 以上の結石では,TUL またはESWL が第1 選択である。
・長径10 mm 未満の結石にはESWL が第1 選択である。TUL も選択肢となる。
EAU ガイドライン(2013 年)1)では,尿管結石に対するESWL とTUL の完全排石率(SFR)のメタ解析結果を提示している(表1)。上部尿管結石全体のSFR は,ESWL とTUL に差はない。しかしながら,長径10 mm 未満の結石ではESWL の方がTUL より治療成績が良い。一方,長径10 mm 以上の結石ではTUL の方がESWL より治療成績が良い。TUL のSFR は結石の大きさに左右されないが,ESWL の治療成績は結石が大きくなると悪くなる1)。長径15 mm以上の大きな陥頓結石で,ESWL またはTUL で砕石困難な場合はPNL も選択肢となる1)。2002年に発行された旧版のガイドラインからの変更点は,尿管結石に対するTULの治療成績(SFR)が向上し,ESWL を上回る結果が報告されるに至った点である。その結果10 mm 以上の尿管結石において結石除去が必要な患者では,TUL もESWL と同等に第1 選択として容認されるに至った。
b)中部尿管結石
・TUL またはESWL を第1 選択とする。
EAU ガイドライン(2013 年)1)では,尿管結石に対するESWL とTUL のSFR のメタ解析結果を提示している(表1)。中部尿管結石全体のSFR は,TUL の方がESWL より治療成績が良い。しかしながら,結石の大きさ別に層別化して検討した場合,症例数が限られているため,治療効果はTUL とESWL に有意な差を認めない1)。したがってTUL,ESWL の双方を第1 選択とすることは妥当と思われる。
c)下部尿管結石
・長径10 mm 以上の結石にはTUL が第1 選択である。ESWL も選択肢となる*。
・長径10 mm 未満の結石ではTUL またはESWL が第1 選択である。
EAU ガイドライン(2013 年)1)では,尿管結石に対するESWL とTUL のSFR のメタ解析結果を提示している(表1)。下部尿管結石のSFR は,結石の大きさに関係なくTUL の方がESWLより治療成績が良い。長径10 mm 未満の結石では,ESWL も砕石効果が期待できるためTUL,ESWL の双方を第1 選択とした。
*ESWL は女性の妊孕性に対する危険性が否定できないため,治療による利益が不利益を上まわる場合に,充分な説明と同意に基づいて行う(2.総論❸ a)体外衝撃波結石破砕術(ESWL) 参照)。

参考文献 |
1) | Türk C, Knoll T, Petrik A Sarica K, Skolarikos A, Straub M, Seitzet C. Guidelines on Urolithiasis.European Association of Urology. 2013. |