EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン

 
III 尿失禁診療ガイドライン
女性尿失禁診療ガイドライン

2. 腹圧性尿失禁の治療
(5) 産褥期の尿失禁

産褥期の尿失禁における主要な症状は身体動作に際して起こる尿漏れであるが、産褥期に尿失禁を訴える人の29.8%に、尿意のある時に切迫感を自覚しながら起こる尿漏れが観察される51)。したがって、産褥期の尿失禁は混合性尿失禁を含む場合があるものと考えられる。産褥期に自覚的な尿漏れの保有率はかなり高く、産後8週間の時点で38%、出産直後から2年後までの女性集団では23.5%と報告されている52,53)。経産女性集団を出産の回数で分類して比較すると、出産回数の増加により尿失禁の保有率は有意に上昇する54)。経腟分娩群を5年間追跡した調査では、鉗子娩出群と吸引分娩群の間に尿失禁保有率の有意な差がみられなかった55)。反復して帝王切開で分娩した経産女性においても、出産回数の増加とともに産褥期の尿失禁の保有率は有意に上昇したとの報告もあり56)、妊娠に伴う生理的変化そのものが尿失禁をもたらすと考えられる。
出産後数カ月までの産褥尿失禁の取り扱いにおいては、妊娠出産を契機とする尿意の鈍麻や蓄尿障害は妊娠終了後には自然に軽快する傾向になること、および出産後数カ月は育児や授乳のために受診や投薬の行いにくい状況になることなどを勘案して管理方針を立てる必要がある。妊娠中から産褥期にかけて骨盤底訓練法を指導し自宅で自己訓練させることにより、骨盤底筋群の収縮力を高めることと産褥期の尿失禁を改善させることが期待できる57,58)。褥婦に骨盤底訓練法に用いる録音テープを持ち帰らせることにより、自己訓練の持続率は改善され施行時間も長くなるとの報告もある59)
 
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