3 再発予防 CQ36 クエン酸による尿路結石の再発予防は有用か?
CQ/目次項目
3 再発予防 CQ36 クエン酸による尿路結石の再発予防は有用か?
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推奨/回答
クエン酸はシュウ酸カルシウム,リン酸カルシウムの結晶形成を抑制し,カルシウム結石の再発予防に有用である。特に低クエン酸尿,遠位尿細管性アシドーシスの患者では有用性が高い。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
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推奨/回答
クエン酸は,尿中pH を上昇させ,酸性尿を改善することから,尿酸結石,シスチン結石の再発予防にも有用である。
推奨の強さ
A:十分なエビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように強く推奨する。
シュウ酸カルシウム結石,リン酸カルシウム結石の患者においては,適切な飲水指導,食事療法によっても新たな結石形成,残存結石の増大が認められ,24 時間尿化学検査にて高カルシウム尿,高尿酸尿,高シュウ酸尿,低クエン酸尿が確認されたとき,再発防止効果を期待してクエン酸製剤*が使用される。
低クエン酸尿は,カルシウム結石の原因となる。クエン酸製剤の服用は,尿細管細胞のアルカリ化により,尿中クエン酸排泄量を増加させる。クエン酸は尿中でカルシウムと結合する作用があり,シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムのion activity product を低下させ,結晶の成長,凝集,結石化を抑制すると考えられる。
クエン酸製剤のRCT
クエン酸製剤は,クエン酸ナトリウム,クエン酸カリウム,クエン酸マグネシウムカリウムでRCT が行われ,結石再発,増大の予防効果が示されている。クエン酸カリウムは,クエン酸ナトリウムよりも再発予防に効果的と考えられている。カルシウム結石に対して,クエン酸製剤とサイアザイドの併用で,再発を劇的に抑制した報告もあるが,単剤と比較した報告はない。
遠位尿細管性アシドーシスでは,クエン酸製剤(クエン酸カリウム)がアシドーシスの改善,クエン酸排泄量の増加,結石形成の抑制に作用することが報告されている。
クエン酸製剤による尿アルカリ化とその効果
クエン酸は摂取後,肝臓で速やかに代謝され,重炭酸イオンを生成し,腎尿細管からの排泄に伴って,尿のアルカリ化に作用すると考えられている。尿アルカリ化剤として,かつては重炭酸ナトリウム(重曹)が使用されたが,ナトリウム過剰負荷の危険性があり,現在はクエン酸製剤を使用することが多い。
尿酸の尿中溶解度は,尿pH 5.0 では15 mg/dL,尿pH 7.0 では200 mg/dL と,pH の上昇に伴い増加する。アルカリ化により溶解度が増すため,尿酸結石の再発予防には,尿酸排泄量の低下とともに尿のアルカリ化が有用である。ただし,過度の尿アルカリ化(pH 7.5 以上)では,リン酸カルシウムや尿酸ナトリウムの析出を促進するため,予防目的では尿pH は6.0~7.0 の維持を目標とする。
シスチン結石患者でも,クエン酸製剤による尿のアルカリ化は再発予防に有用と考えられる。しかし,シスチンの溶解度は尿pH 7.5 以上でないと大幅な増加にならない〔pH 7.0 で250mg/L(1 mmol/L),pH 7.5 で500 mg/L(2 mmol/L),pH 8.0 で750 mg/L(3 mmol/L)〕ため,飲水,チオプロニンなどの併用を考慮する必要がある。シスチン尿症での尿アルカリ化には,クエン酸ナトリウムよりもクエン酸カリウムが望ましいと考えられている。
* 日本で使用するクエン酸製剤は,クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤であり,血清カリウム値に留意する。過度の尿アルカリ化(pH 7.5 以上)では,リン酸カルシウムや尿酸ナトリウムの析出を促進するため,注意が必要である。
副作用:カリウム含有製剤であり,副作用として血清カリウムの上昇がある。他に,肝障害,腎障害,消化器症状,発疹,頻脈など。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)