3 再発予防 CQ32 繊維性食物の摂取は尿路結石再発の予防になるか?

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3 再発予防 CQ32 繊維性食物の摂取は尿路結石再発の予防になるか?
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推奨/回答

尿路結石症の予防として,繊維性食物を積極的に推奨する科学的根拠は乏しい。

推奨の強さ

C2:エビデンスは十分とはいえないので,日常診療で実践することは推奨しない。

尿路結石症の再発予防法として食事指導は非常に重要であり,適切な食事指導により,良好な再発予防効果が期待できる。患者本人に十分自覚を持たせ,家族なども含め積極的に偏食・過食の是正を行い,規則正しい食生活を安定し継続させるように指導することが重要である。その食事指導において,繊維性食物が結石再発予防に有用であるか検討する。

尿路結石の食事指導の原則と繊維性食物
食事指導の一般原則は,バランスのとれた規則正しい食生活や,夕食摂取から就寝までの間隔を4 時間程度空けることを目標とする。各種栄養摂取量に関しては,①動物性タンパク質の過剰摂取制限,②一定量のカルシウム摂取のすすめ,③シュウ酸過剰摂取の制限,④塩分過剰摂取の制限,⑤炭水化物の摂取,⑥脂肪の過剰摂取の制限,⑦クエン酸適量摂取のすすめ,などの項目があげられている。繊維性食物に関しては,Gleeson らの報告より炭水化物に含まれる物質としての繊維性食物は摂取後に腸管内でカルシウムと結合して吸収を抑制し,再発予防に有用とされていたが,検討された症例数が少なく結石再発予防のエビデンスは得られていなかった。なお,繊維性食物の尿路結石再発予防効果を検討した均質なRCT の報告は少ない。

繊維性食物の摂取に関するRCT
Hiatt らは,Caucasian だけではなくアジア人も含む複数の人種より選択した102 症例に対して低タンパク・高繊維食での結石再発を検討した結果,単純な水分摂取指導と比較して結石再発率を低下させることはなかったと報告している。Rotily らは,非特異的結石再発患者96 名(Caucasian のみ)を対象に,25 g/day 以上の繊維食摂取指導群に対してエンドポイントを尿中結石発症危険因子としてRCT にて検討した結果,高繊維食は結石予防には推奨されないと結論付けていた。またDussol らも,175 症例に対して4 年間にわたり行った高繊維食(25 g/day以上)の結石再発予防に対するRCT の結果,非特異性結石患者の再発予防に推奨されないと結論付けている。

繊維性食物の摂取に関する留意点
EAU のGuidelines on Urolithiasis の再発予防の一般的推奨の項に,果物や野菜には線維が多く含まれていることにより線維の効果が期待されることが記されているが,同時にシュウ酸を多く含む繊維食品もあるため,偏らずに様々なグループの食事摂取を推奨している。繊維食品のシュウ酸吸収に対する影響には,その食品の種類により二面性があり,繊維質に富んだ果物や野菜の多くは,シュウ酸カルシウムの飽和度を下げクエン酸の分泌を促す。一方ではカルシウムと結合し吸収を抑制することにより,腸管内ではシュウ酸の吸収が増長される。線維性食物の中でも,非可溶性繊維食品はシュウ酸を多量に含んでおり,食品の選択には注意が必要である。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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