3 再発予防 CQ30 プリン体の多く含まれる食物は尿路結石の再発を促進するか?

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3 再発予防 CQ30 プリン体の多く含まれる食物は尿路結石の再発を促進するか?
1
推奨/回答

高プリン食品の過剰摂取は,血清尿酸値を上昇させる。それが高尿酸尿や酸性尿を誘発させるため,尿路結石の再発を促進させる可能性が高い。

推奨の強さ

B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。

2
推奨/回答

尿路結石の再発予防の観点から,尿酸代謝異常を有する患者に対して,プリン体摂取や総エネルギー摂取に関する栄養食事指導が勧められる。

推奨の強さ

C1:エビデンスは十分とはいえないが,日常診療で行ってもよい。

一般に尿酸が食物に含まれていると誤解されがちであるが,体内において尿酸はプリン体の最終代謝産物である。そのため実際の食料品では,プリン体の含有量が問題となる。実際,健常者に,プリン体として酵母由来のリボ核酸を4.0 g/day 摂取させると高尿酸血症を呈し,食事のプリン体を制限することで血清尿酸値の著明な低下が認められている。

高プリン食品
食品100 g あたり,プリン体が200 mg 以上含まれるものを高プリン食品と呼ぶ。表1 には代表的な高プリン食品を示すが,実際には摂取量を踏まえたプリン体含有量の評価が必要である。最もプリン体が多いと考えられる食料品は,肉類(動物の内臓),魚介類,干物などがあるが,栄養バランス的には,常に低プリン食品を摂取することは極めて難しいことから,“高プリン食品は摂取しすぎないようにする”という指導が勧められる。現実的には,プリン体として1日の摂取量が400 mg を超えないように指導するのが良いと思われる。



糖分と尿路結石
糖分については,ショ糖や果糖の摂取量と比例して血清尿酸値は上昇し,痛風のリスクも増加すると考えられ,さらに尿路結石形成にも促進的に作用することから,これらの過剰摂取は避けるべきであろう。

アルコールと血清尿酸値
アルコールは,①肝臓でのアルコール代謝亢進により肝エネルギー消費が上昇し,それに由来する内因性プリン体の分解が亢進する,②血中乳酸濃度の上昇により腎臓での尿酸排泄が低下する,③アルコール飲料そのものに含まれるプリン体の存在,などの相乗効果により血清尿酸値を上昇させる。実際にアルコール摂取量の増加に伴い,血清尿酸値が上昇し,痛風の頻度が増加することが知られており,プリン体負荷はビールにおいて最も顕著である。ただ最近では,ビール飲料の多様化により,ビールの種類によってプリン体含有量は異なっている。
前述したように,アルコール飲料はプリン体の多寡にかかわらず,それ自体の代謝に関連して血清尿酸値を上昇させるため,種類を問わず過剰摂取は慎むべきであろう。『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』では,血清尿酸値への影響を最低限に保つアルコール摂取の目安(一日量)として,日本酒1合(180 mL),ビール500 mL,ウィスキー60 mL程度と記載されている。

栄養食事指導
高尿酸血症や痛風患者に対する栄養食事指導として,最近では,プリン体の摂取制限のほか,総エネルギーの制限も重要視されている。特に肥満傾向にある患者に対しては,糖尿病治療に準じた摂取エネルギーの適正化が必要である。以前は,痛風患者の栄養食事指導として,プリン体の過剰摂取を避けることを目的として,低タンパクおよび高炭水化物食が推奨されていた。しかし,高炭水化物食は,高尿酸血症や痛風患者で高頻度にみられるインスリン抵抗性をさらに増悪させる可能性があるため,好ましいものではないと考えられている。高タンパク食のうち,肉類・魚介類などの動物性タンパクは血清尿酸値を上昇させるが,乳製品はむしろ血清尿酸値を低下させ,痛風のリスクも増加させないため,積極的な摂取を勧められる。また緑黄色野菜や海藻類などは,尿のアルカリ化を促し,尿酸の尿中での溶解度を高める効果からも,尿路結石の再発予防には非常に有効である。
ただし,高尿酸血症や痛風患者に対して,あまりに厳格なプリン体摂取制限や飲酒制限などを短期間に行うと,一時期は効果があるものの,逆に反動を招きやすい。合併しやすい肥満やメタボリックシンドロームのリスクと関連することも踏まえて,その重要性について粘り強く説明し,患者が自発的に食事療法を受け入れられるような栄養食事指導の体制をとることが望ましい。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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