1 疫学 CQ06 尿路結石症は生活習慣病と関連があるか?

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1 疫学 CQ06 尿路結石症は生活習慣病と関連があるか?
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肥満,糖尿病,高血圧といった個々の生活習慣病や,こうしたリスクの重積が尿路結石症と関連していることは多くの疫学研究で示されており,尿路結石症はメタボリックシンドロームの一疾患と捉えることができる。

日本における上部尿路結石の増加傾向は,食事や生活様式の欧米化によるところが大きいとされている。また,尿路結石症予防のための食事療法や生活指導は,高脂血症・動脈硬化症,高血圧,糖尿病の予防法と共通点の多いことから,尿路結石症はこれら生活習慣病との関連性が示唆されてきたが,このことは最近の疫学研究によっても証明されている。
いくつかの横断研究において,肥満,糖尿病,高血圧といった個々の生活習慣病のみならず,メタボリックシンドロームの患者にも尿路結石症の多いことが報告されている。一方,縦断研究で注目されるのは米国の医療従事者を対象とした一連の大規模コホート研究である(表1)。肥満患者では腎結石の発生が有意に多いことが示されているが,興味深いのは男性よりも女性の相対危険度が高いことである。これは,一般にBMI が同じでも女性のほうが体脂肪の多いことによると考えられている。また,女性の糖尿病患者でも腎結石の発生は有意に多かったが,男性の糖尿病患者や高血圧患者では結石発生の相対危険度に有意な増加は示されていない。しかしながら,横断的解析で結石との関連性が示されていることからすると,糖尿病や高血圧と尿路結石を発生させる共通の生理的メカニズムがあって,これが先に尿路結石症を発症させているものと考えられる。
生活習慣病患者における尿中結石関連物質については,シュウ酸カルシウム結石形成のリスクとなる尿中シュウ酸およびカルシウム排泄量の増加やクエン酸排泄量の低下が報告されているが,シュウ酸カルシウム過飽和度の上昇はみられないとの報告もあり,一定の見解には至っていない。一方,肥満や糖尿病患者では尿酸結石の比率が高いことが報告されており,これはメタボリックシンドロームの本態ともされているインスリン抵抗性によって,腎尿細管におけるアンモニア産生やNa+ /H+exchanger 活性が障害され,尿pH が低下するためと考えられている。
以上の疫学研究や,初発尿路結石患者では肥満が唯一の強力な再発予測因子であるとの報告から,減量は尿路結石の予防にも繋がることが推測されるが,残念ながら,減量によって実際に尿路結石が予防できることを示した報告はみられない。



(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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