上部尿路結石の罹患率・有病率には地域差,人種差がみられるが,世界的に増加傾向にあり,食習慣の変化や地球温暖化の影響が示唆されている。
調査の時期や方法の多様性から,世界各国における尿路結石の発生頻度を比較することは容易ではない。上部尿路結石の有病率は,先進国で高く6~18% とされているが,最も高いのはサウジアラビアの20% である。アメリカでは1964~1972 年の2.62% から増加の一途をたどり,2007~2010 年には8.8% と約3 倍に達している。しかしながら,ミネソタ州ロチェスターでは1990 年から2000 年にかけて罹患率がやや減少に転じたとの報告もある。一方,アジアやアフリカなどの発展途上国では上部尿路結石は比較的少ないとされてきたが,近年ではトルコ(14.8%),台湾(9.8%),ブラジル(5%),インド(4%)などでも社会経済の発展とともに,上部尿路結石の有病率は増加傾向にある。人種差については,白人,ヒスパニック系,黒人,アジア系の順に多いとされている。 年齢階級別罹患率をみると,日本では男性が40 歳代,女性が50 歳代にピークがあるのに対し,アメリカやイランでは男女とも40 歳代にピークがある。男女比はイランの1.15 対1 から日本の2.5対1 までの範囲で男性に多いが,欧米では20~30 歳代など女性の方がわずかに多い年齢層もみられる。興味深いことに,アメリカでは男女比は縮小傾向にあるという報告が増えている。 世界的な上部尿路結石の増加傾向の主な原因は食習慣の変化であり,動物性タンパク質,塩分,果糖の摂取量増加が指摘されている。近年,肥満は結石形成のリスクファクターであることが明らかになっているが,ファストフード中心の食事や果糖摂取量の増加による肥満の蔓延も,結石の増加に寄与していると考えられる。また,肥満の増加や肥満による結石形成リスクの増加は女性のほうが顕著であり,これが男女比の縮小傾向につながっていると考えられる。 一方,気温の高い地域に結石の発生が多いことや,高温環境への曝露により2~3 か月後に結石の症状をきたすことが報告されている。このことから,地球温暖化も上部尿路結石の増加の一因と考えられ,今後もこの増加傾向は続くと予想されている。 (本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
診療ガイドライン
医療従事者の方の意思決定のために
ガイドライン解説
病気や治療法について知りたい一般の方へ
調査の時期や方法の多様性から,世界各国における尿路結石の発生頻度を比較することは容易ではない。上部尿路結石の有病率は,先進国で高く6~18% とされているが,最も高いのはサウジアラビアの20% である。アメリカでは1964~1972 年の2.62% から増加の一途をたどり,2007~2010 年には8.8% と約3 倍に達している。しかしながら,ミネソタ州ロチェスターでは1990 年から2000 年にかけて罹患率がやや減少に転じたとの報告もある。一方,アジアやアフリカなどの発展途上国では上部尿路結石は比較的少ないとされてきたが,近年ではトルコ(14.8%),台湾(9.8%),ブラジル(5%),インド(4%)などでも社会経済の発展とともに,上部尿路結石の有病率は増加傾向にある。人種差については,白人,ヒスパニック系,黒人,アジア系の順に多いとされている。
年齢階級別罹患率をみると,日本では男性が40 歳代,女性が50 歳代にピークがあるのに対し,アメリカやイランでは男女とも40 歳代にピークがある。男女比はイランの1.15 対1 から日本の2.5対1 までの範囲で男性に多いが,欧米では20~30 歳代など女性の方がわずかに多い年齢層もみられる。興味深いことに,アメリカでは男女比は縮小傾向にあるという報告が増えている。
世界的な上部尿路結石の増加傾向の主な原因は食習慣の変化であり,動物性タンパク質,塩分,果糖の摂取量増加が指摘されている。近年,肥満は結石形成のリスクファクターであることが明らかになっているが,ファストフード中心の食事や果糖摂取量の増加による肥満の蔓延も,結石の増加に寄与していると考えられる。また,肥満の増加や肥満による結石形成リスクの増加は女性のほうが顕著であり,これが男女比の縮小傾向につながっていると考えられる。
一方,気温の高い地域に結石の発生が多いことや,高温環境への曝露により2~3 か月後に結石の症状をきたすことが報告されている。このことから,地球温暖化も上部尿路結石の増加の一因と考えられ,今後もこの増加傾向は続くと予想されている。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)