第Ⅶ章 急性膵炎の治療 4.薬物療法 2)抗菌薬 CQ24 予防的抗菌薬投与は急性膵炎の予後改善に有効か?

CQ/目次項目
第Ⅶ章 急性膵炎の治療 4.薬物療法 2)抗菌薬 CQ24 予防的抗菌薬投与は急性膵炎の予後改善に有効か?
1
推奨/回答

軽症例に対しては感染性合併症の発生率・死亡率は低く,予防的抗菌薬は必要ない。

推奨の強さ

1:(強い推奨)“実施しない”ことを推奨する

エビデンスの確実性

A:質の高いエビデンス(High)

2
推奨/回答

重症例や壊死性膵炎に対する予防的抗菌薬投与は,発症早期(発症後 72 時間以内)の投与により生命予後を改善する可能性がある。

推奨の強さ

2:(弱い推奨)“実施する”ことを提案する

エビデンスの確実性

B:中程度の質のエビデンス(Moderate)

細菌感染症は急性膵炎の臨床経過や治療に大きな影響を与えるが,腸内細菌群による膵および膵周囲の感染症は,急性膵炎の予後を悪化させる原因となる。これら膵局所感染を予防し生存率を改善することが急性膵炎における予防的抗菌薬の目的となる。膵壊死を伴う重症急性膵炎に対する抗菌薬の予防的投与の効果については,以前より議論されてきた。重症例,壊死性膵炎症例を対象とした RCT のメタ解析/システマテックレビューによると(表Ⅶ-3),予防的抗菌薬投与により生命予後が改善し,感染性膵合併症が有意に減少したとの報告もあるが,他の報告では効果について否定的である。膵外の感染症発生率や外科的治療を必要とした頻度,入院期間に改善がみられた報告もあるが,他の報告では否定的である。以上を受けて International Association of Pancreatology/American Pancreatic Association(IAP/APA)のガイドラインでは,急性膵炎に対する予防的抗菌薬投与は推奨されていない。

しかし,サブグループ解析でイミペネムを使用した場合,感染性膵合併症の有意な減少を認めた報告や,カルバペネム系抗菌薬が感染性膵合併症と膵外の感染症発生率を有意に減少させたとする報告もある。これらの検証にはさらなる質の高い RCT が必要であるが,いくつかの留意点がある。
RCT の対象患者について,ほとんどの報告は壊死性膵炎であるが,壊死性膵炎を含む重症例としたものもあり,メタ解析のなかには両者をあわせて解析したものが含まれている。抗菌薬の選択については,1970 年代に行われた 3 件の RCTでアンピシリンが使用されたが,膵炎の臨床経過を改善するには至らなかった(表Ⅶ-3)。選択された抗菌薬の膵組織への移行性が低いことの他に,これらが対象とした軽症膵炎において,対照群の合併症発生率・死亡率がいずれも低かったことも挙げられる。膵への組織内移行がよい抗菌薬としてイミペネム,オフロキサシン,シプロフロキサシンが知られており,また,pefloxacin は膵壊死組織内においても十分な薬剤濃度が得られる。
抗菌薬開始のタイミングについて検討した RCT では,急性膵炎症例に対し入院時(入院後 1.07±0.6 日)からメロペネムを投与後に膵壊死をきたした群と,膵壊死が CT で確認された時点(入院後 4.56±1.2 日)でメロペネムを開始した群に分け比較検討した。その結果,死亡率や感染性膵合併症率には有意差を認めなかったが,膵外の感染症発生率,外科的治療を必要とした頻度,入院期間については前者が有意に低かった。この点に着目し,ガイドライン作成委員会(以下,本委員会)のメタ解析グループは,対象を来院後 48 時間以内もしくは発症後 72 時間以内の重症急性膵炎もしくは壊死性膵炎とした 6 件の RCT を用い,メタ解析を行った。その結果,死亡率(odds ratio(OR)=0.48,95%CI : 0.25~0.94,p=0.03)と感染性膵合併症率(OR=0.55,95%CI : 0.33~0.92,p=0.02)の有意な改善効果が認められた(図Ⅶ-1)。これらの検証については,抗菌薬投与開始時期や,抗菌薬の種類,対象の選択などの条件をそろえた大規模な RCT が,今後必要と考えられる。

壊死性膵炎に感染合併が疑われた場合や,急性膵炎発症後に胆道,尿路,呼吸器,体内留置カテーテルなど,膵以外の部位の感染合併が認められた場合には抗菌薬を投与する必要がある。その場合,起炎菌を同定し薬剤感受性検査に基づき適切な抗菌薬投与を行うことが望まれる。抗菌薬の投与期間については明確な見解が得られていないが,感染徴候を認めない場合には 2 週間を超えて投与を継続することは避けるべきである。広域スペクトラムの抗菌薬の使用が真菌感染症の合併を増加させる危険性を指摘する報告もあり,注意を要する。

(本文,図表の引用等については,急性膵炎診療ガイドライン 2015 の本文をご参照ください。)

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