Mindsからの提言 診療ガイドラインにおけるクリニカルクエスチョンとは?
公益財団法人 日本医療機能評価機構
EBM普及推進事業(Minds)
EBM普及推進事業(Minds)
2017年9月19日掲載
本稿はMindsから診療ガイドライン作成関係者に向けた『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』に関連した提言・メッセージです。
本提言のポイント

診療ガイドラインにおけるクリニカルクエスチョン
Mindsでは、診療ガイドラインを「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義している。
この定義にある「診療上の重要度の高い医療行為」を特定する過程の中で、重要な要素となるのが「クリニカルクエスチョン(Clinical Question;
CQ)」である。Mindsでは、治療法等の決定に際して、複数の選択肢があり、そのいずれがより良いかを推奨として提示することで、患者アウトカムの改善が期待できる場合、そのポイントをクリニカルクエスチョンとして取り上げることを提案している。したがって、CQは、診療ガイドライン作成過程においては、推奨を作成するために定式化する問題であり、臨床においては、患者と医療者の意思決定において重要なポイントに対して推奨が提供される問題である。
CQについては、システマティックレビューを実施し、推奨としてまとめていくことが必要である。ここで必要になる作業については『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』を参照していただきたい。
診療ガイドラインで取り上げる基本的な知識
現在、日本では、多くの診療ガイドラインがCQ形式で作成されるようになってきている。しかし、作成される診療ガイドラインの中には、取り上げる疾患・テーマに関する基本的な知識をCQ形式で記載し、解説として知識を紹介するようにまとめているものが少なくない。そのため、CQという用語が、基本的な知識に関する問いと、重要臨床課題に基づいた問いと、2種類を包含して使用されていることがある。
しかし、診療ガイドライン作成における本来のCQとはならないような基本的な知識をCQとして設定し、それに対するSRを実施して推奨を作成しようとすることは適切ではなく、診療ガイドライン利用時にも混乱を招く恐れがある。したがって、診療ガイドライン作成を適切に進めていくためには、診療ガイドライン作成における本来のCQに基づいて作成・提示する推奨と、基本的な知識を明確に区別する必要がある。
基本的な知識は、診療ガイドライン作成過程においては、SRや推奨の位置づけを明確にするものであり、臨床においては、診療ガイドラインで提案されている推奨の内容を適切に理解し、実践するための重要な情報となる。基本的な知識が充実していることは日本の診療ガイドラインの特徴であり、強みでもある。診療ガイドラインにおいて推奨を理解して、実臨床で適切に実施するためにも、基本的な知識もまた診療ガイドラインの重要な要素であると考えられる。Mindsでは、基本的な知識については、「臨床的特徴」、「疫学的特徴」、「診療の全体的な流れ」を含んだ「疾患トピックの基本的特徴」としてまとめることを推奨している。
基本的な知識について、質問と回答・解説の形式で提示する必然性はないが、利用者の理解を助けると考える場合には、質問と回答・解説の形式で記載しても良い。ただし、その際には、CQと明確に区別するために、CQという用語は用いないことを提案したい。問いに名称を与える場合には、たとえば、背景知識に関する問い、背景問題などを用いることもできる。