「診療ガイドライン作成への患者・市民の参加」の基本的な考え方
公益財団法人 日本医療機能評価機構
EBM 普及推進事業(Minds)
患者・市民専門部会
EBM 普及推進事業(Minds)
患者・市民専門部会
2016年11月15日 公開
本稿は、原案に対し、2016年7月19日より8月19日まで募集されたパブリックコメントを反映して作成された文書です。
【はじめに】
この「基本的な考え方」では、診療ガイドラインを「患者の価値観・希望と医療者の医学的判断に基づいた意思決定のための推奨を提示する文書」としています。多様な患者・市民の価値観・希望をどのように推定するかが、推奨の作成、特にその強さの決定に際して重要な情報となることを始めに強調したいと考えます。また、診療ガイドライン作成に患者、市民の立場の方の参加(関与)が重要であることは国際的にも広く認識されてきており、学会等の作成団体も、何らかの方法で患者・市民の参加(関与)に努めるようになってきています。診療ガイドラインに関する国際団体であるGuidelines International Network(G-I-N)の中の患者・市民についてのワーキンググループG-I-N Public Working Groupは、診療ガイドライン作成における患者・市民の関わりについて、G-I-N Public toolkit 1)の中にその考え方を公表しています。また、国内では、日本患者会情報センターが「診療ガイドライン作成過程への患者・支援者参画のためのガイドライン(Patient Involvement Guidelines:PIGL)」2),3)を開発しています。
しかしながら、日本の診療ガイドラインの作成の現場では様々な試行錯誤が行われ、患者・市民が実際に作成に参加した診療ガイドラインは少ないのが現状です4), 5)。そこで、Mindsでは、患者・市民専門部会を設置して、診療ガイドライン作成への患者・市民の参加について、その意義、目的、具体的な方法などの基本的な考え方を討議し、整理することにしました。
患者・市民が診療ガイドライン作成に関わる方法としては、患者・市民の価値観や希望について調査された文献のレビュー、インタビューや質問紙調査を通じた間接的な情報提供(作成団体からみると情報収集)、外部評価委員としての関与、加えて、ガイドライン作成グループの構成員としての参加といった多様な段階があります。それぞれの方法は互いに単独で実施されるばかりでなく、併用されることが望ましいと考えられますが、本稿では、ガイドライン作成グループの構成員としての参加について、そのあり方と手法を中心に述べていきます。
【診療ガイドラインが目指すもの】
診療ガイドラインは、「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されています(Minds診療ガイドライン作成の手引き20146))。診療上の重要度の高い医療行為に複数の選択肢がある場合、臨床上の疑問[クリニカル クエスチョン(CQ)]として選択の許容範囲を問い、推奨によって回答を提示します。
推奨を作成するにあたっては、医療行為がもたらす効果面(益)と有害面(害)を比較して、それらのバランスを重視して、益がより大きいもの、害がより小さいものが選択されます。ただし、ここでいう益と害は、臨床研究等で得られた推計値に基づくものですので、臨床研究等がエビデンス(科学的根拠)として、どの程度の強さで益と害のバランスを支持するかが問題となります。エビデンスの確実性は、システマティックレビューという過程によって評価されます。
益と害のバランスは、二つの医療行為XとYのうち、Xの方がYよりも、益がより大きく、害がより小さい場合には問題なくXを推奨できますが、XがYよりも、益もより大きいが、害もより大きい場合には強い推奨は提示されません。したがって、個々の患者の診療においては、益と害にどの程度重きを置くかという患者の主観的な判断が加味されて意思決定が行われることになります。従来の医療では、医療者の医学的判断が重視されることが多い傾向にありましたが、最近の傾向として、患者の価値観、希望と、医療者の医学的判断を持ち寄って、患者と医療者による協働の意思決定を行うことが重要となってきました。従って、様々な患者が、どのような価値観、希望を持つかということが、推奨の作成に当たって、重要な情報となります。
診療ガイドライン作成プロセスの概要は、別添に示したとおりです。
【診療ガイドライン作成への患者・市民の参加の基本的な考え方】
1.患者・市民が診療ガイドライン作成に参加する意義
診療ガイドラインはクリニカルクエスチョンに対して推奨を提示しますが、推奨は、患者と医療者による協働の意思決定を支援できる内容でなくてはなりません。
より具体的には、医学的根拠のみでなく、患者の価値観、希望を適切に反映できることが推奨に求められます。
医学的根拠は、医療者の持つ専門知識に加えて、システマティックレビューによるエビデンスの評価と統合によって得られ、主として医療者によって評価されます。
一方、患者の価値観、希望は、きわめて個別性の高いものであり、診療ガイドライン作成では、患者の価値観、希望の「一般的な傾向」と、「患者間の多様性」を反映させる必要があります。
以下の図は、乳がんの治療として乳房を温存する部分切除と、生存率の向上を目指して乳房をすべてとる全摘術という選択肢がある場合、患者の希望の分布を示した模式図です。この図で説明しますと、「一般的な傾向」は、平均的に見て、生存と乳房温存のどちらを重視する患者が多いかという傾向を示します。例えば、乳房温存よりも生存を重視する患者が圧倒的に多いとわかった場合には、益と害のバランスを評価する際に、生存をより重視した判断がなされます。また、「患者間の多様性」が小さい場合には、一般的な傾向を重視した推奨が提示されますが、「患者間の多様性」が大きい場合には、一方を強く推奨するのではなく、患者と医療者の話し合いによる意思決定を重視した弱い推奨が提示されます。
図1.乳がん患者の希望の分布(模式図)

このように、患者・市民の立場でのガイドライン作成グループ構成員(以下、「患者・市民構成員」)は、ガイドライン作成グループの中で議論に参加し、患者・市民の視点を適切に診療ガイドラインに反映させる際に重要な役割を担います。
従来は、「(複数の)ランダム化比較試験」で生存期間のように客観性の高いアウトカムが改善されるエビデンスがあれば、多くの診療ガイドラインでその治療法を「強い推奨」としていました。その結果、個々の診療現場で医療者は診療ガイドラインの「強い推奨」に基づいて、「それが最良」と信じ、通常はその方法のみを患者に提示して「説明と同意」を行なっています。しかし、そのような益のみを推奨の根拠とした診療ガイドラインを用いた場合では、個々の患者の価値観、希望はどのように配慮されていたか懸念が残ります。例えば、医学的に「真のアウトカム」である生存期間が仮に3か月延びることが十分なエビデンスで示されていても、その期間に増えるかもしれない害や負担と「3か月長く生きられるかもしれない」という益を比較して、患者はその方法が本当に自分自身にとって最善か悩むかもしれません。医療者は診療の現場で、そのような患者の意向や希望を慎重に考える必要があるでしょう。十分なエビデンスに基づいて診療ガイドラインで「強い推奨」が示される場合、科学的に妥当だったとしても、それ以外の選択肢を医療者と患者が考える機会を失わせる可能性があることに留意が必要です。益と負担・害を考量した結果、「強い推奨」ではなく、「弱い推奨(「条件付きの推奨」や「提案」)とされれば、個々の診療場面で医療者が患者・家族の希望に、より配慮できるようになる場合があるかもしれません。
患者の価値観は多様です。臨床現場において、患者と医療者が協働して問題に向き合い、より良い解決策を見つけ出していくことを助けるようなクリニカルクエスチョンの設定や推奨の提示が診療ガイドラインには求められています。そのためには、診療ガイドラインの作成段階を通しての患者・市民の参加が欠かせないものと言えます。
さらに、診療ガイドラインの作成において、医療サービスの提供者と利用者がお互いの立場を尊重した真摯な議論を展開する場に同席することは、双方への、さらには診療ガイドラインへの信頼が醸成される機会となることが期待されます。
2.診療ガイドライン作成団体に望まれること
診療ガイドライン作成団体は、上述した患者・市民構成員の参加の意義を十分に理解し、不可欠であることを作成組織内で共有し、ガイドライン作成グループに患者・市民構成員が必ず参加できるように、すべての作成担当者に周知することが求められます。
また、医療者が多数を占める会議の中で、患者・市民構成員が積極的に議論に参加することは、必ずしも容易ではないことを認識して、作成団体として、患者・市民構成員への最大限のサポートを行う必要があります。特に、ガイドライン作成グループの議長の役割が重要であり、患者・市民構成員が積極的に議論に加われるように配慮が必要です。
3.患者・市民構成員としての参加の具体的方法
3.1. 参加人数
- 最低2名の参加が望まれます。
- 例えば、1名は患者・市民構成員としてのトレーニングを受けた者が患者・市民のメディエータとしての役割を果たし、他の1名は当該疾患の経験者が当たるなどの方法が考えられます。
- 2名以上が参加することによって、個別的な経験などによって診療ガイドライン作成が偏った方向に進むことを避けることができます。
3.2. 参加者に求められること
患者・市民としての参加者は、様々な立場の方の参加が想定されますが、診療ガイドライン作成への参加に熱意を持つ人たちに参加してもらうことが重要です。
また、意見の公平性を担保するためには以下のような点について検討が必要です。
- 当該疾患の患者、既往歴がある人が、自分の体験にのみ基づいた意見を表明することは議論を偏った方向に導く懸念があります。 自分の体験を相対化し、多くの患者の立場を配慮して意見を表明することが求められます。 そのためには、体験に基づく先鋭化された意見から出発することもありますが、他の人の意見も聞きながら相対化された意見を育てることが重要と考えます。
- 例えば主治医と患者の関係など、ガイドライン作成グループの構成員である医療者との個人的な人間関係に基づいて患者・市民に参加依頼が行われることは、偏らない意見を求めるという点で望ましくない場合もあります。
- 患者会として企業から援助を受けている場合など、企業との関係について利益相反(COI)が生じる恐れがあり、利益相反への対応が必要な場合も生じます。
3.3. ガイドライン作成グループにおける患者・市民構成員の位置づけ
- 患者・市民構成員は、まさに構成員であり、ガイドライン作成グループの会議の全過程に参加することが基本です。
- ガイドライン作成グループの構成員の大多数は医療者ですが、医療者に対応する形での患者・市民代表として参加し、医療者と患者・市民は対等の立場での共同作成であることをすべてのガイドライン作成グループ構成員が共有することが重要です。
3.4. 診療ガイドライン作成における患者・市民の役割
3.4.1 診療ガイドライン作成の全過程
患者・市民構成員は、ガイドライン作成グループによる診療ガイドライン作成のプロセス全体を通して、議論に参加して、患者・市民の立場で、種々の意見を表明する役割が期待されます。
3.4.2 スコープ作成
スコープ作成で進められる議論について以下のような点について確認し、意見を表明する役割が期待されます。
クリニカルクエスチョンの設定に際しては、様々な意見を出し合っての議論が中心となるため、患者・市民構成員は様々な可能性について自由に意見表明をすることが望まれます。
- 「患者と医療者による意思決定」の重要な臨床上の課題がクリニカルクエスチョンとして取り上げられるように、患者・市民の視点から意見を表明します。
- 評価の対象とする患者アウトカムを選定する過程で、患者にとって重要なアウトカムが適切に取り上げられるように、患者・市民の視点から意見を表明します。
3.4.3. 推奨の作成
推奨作成で進められる議論は合意形成に向けての議論であり、患者・市民の立場で、以下のような点について意見を表明する役割が期待されます。
- システマティックレビューの結果を患者・市民の立場で評価して、比較対象となる患者アウトカムが適切に評価されたことを確認します。
- 当該疾患の患者が持つ価値観、希望の一般的な傾向と、患者間の多様性について、患者・市民の立場で意見を表明します。
- 望ましい患者アウトカム(益)と望ましくない患者アウトカム(害)のバランスの評価において、患者・市民の視点で、その重要度を加味した比較が実施されるように意見表明します。
【必要な支援と留意事項】
- 患者・市民構成員が、多様な患者の希望や価値観を代表した意見を表明することは困難ですが、少なくとも、自分の患者としての体験のみに偏ることなく、患者の多様性に配慮した意見を表明することが求められます。Mindsは、参加者向けの支援教材、研修会等を提供し、患者の体験を相対的にとらえて様々な患者に配慮した意見表明ができるように支援を開始する予定です。また、Mindsは、該当する疾患で診療を受ける患者の希望や価値観の一般的な傾向、患者間の多様性についての調査結果等を提供して、参加者を支援する予定です。
- ガイドライン作成グループの議論が、特定の構成員の意見に偏らずに進められるためには議長の役割がきわめて重要であり、議長はすべての構成員に公平に発言の機会を与え、慎重かつ適切に議論を進めることが重要です。特に、患者・市民構成員が多数の医療者の中で意見を表明することは困難であることを十分に理解して議論を進める必要があります。Mindsは、ガイドライン作成グループの議長の役割、議論の進め方等について情報提供をしていきます。
【Mindsが果たすべき役割】
Mindsは、ガイドライン作成グループへの患者・市民の参加のあり方、具体的方法等について検討を進め、参加候補者に対して必要な支援を提供して、参加の促進を図ります。具体的には、以下の点について役割を果たす予定です。
- 診療ガイドライン作成団体等に対して、患者・市民の参加が重要であることを継続的に情報提供します。
- 参加を希望する方々は広く募集して、参加を支援していきます。
- 患者・市民として参加を希望する方たち、実際に参加する方たちに対して、教材、研修会などの提供を通じて必要な支援を行います。
- 「患者・市民の診療ガイドライン作成参加者ネットワーク」を構築して、参加を促進します。
- 患者の希望・価値観の多様性に関する調査を継続的に実施できる仕組みを構築して、ガイドライン作成グループを支援します。
- 本基本的な考え方は、必要が生じた場合には見直しを行います。
【参考資料】
- Guidelines International Network. G-I-N Public Toolkit: Patient and Public Involvement in Guidelines. http://www.g-i-n.net/document-store/working-groups-documents/g-i-n-public/toolkit/toolkit-2015 (2016-7-12 アクセス), Scotland, 2015.
- 日本患者会情報センター.「診療ガイドライン作成過程への患者・支援者参画のためのガイドライン(略称PIGL)第1版」. http://www.kanjyakai.net/manage/wp-content/themes/kanjakai/docs/guideline01.pdf (2016-7-12 アクセス), 2007-3.
- 栗山真理子、北澤京子、中山健夫.診療ガイドライン作成に患者・支援者が参画するための提案─PIGL2016の骨子について.医事新報2016;4818:13-15.
- Hatakeyama Y. et al. “Current State of Patient and Public Involvement in Japanese Clinical Practice Guidelines Development”. G-I-N Conference, Amsterdam, 2015-10.
- Okumura A. et al. “Patient Involvement for Clinical Practice Guidelines in Japan”. ISQua’s 30th International Conference, Edinburgh, 2013-10.
- 福井次矢、山口直人監修:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.医学書院,東京,2014.
【別添】Minds診療ガイドライン作成の手引きが提案する診療ガイドライン作成プロセス
1.作成の全体像
Minds診療ガイドライン作成の手引きが提案する診療ガイドラインの作成方法では、診療ガイドライン作成は、①ガイドライン統括委員会、②ガイドライン作成グループ、③システマティックレビューチームという3つの組織が連携して実施されます(図2)。
ガイドライン統括委員会は、診療ガイドライン作成を決定し、ガイドライン作成グループ、システマティックレビューチームを組織して統括します。ガイドライン作成グループは、スコープを作成して、診療ガイドラインの具体的な作成方法とカバーする範囲などを決めます。特に、取り上げるクリニカルクエスチョンを決め、医療行為を比較する際の比較項目を決定します。システマティックレビューチームは、システマティックレビューを実施します。そして、ガイドライン作成グループが、システマティックレビューの成果等を基に、推奨を作成します。
ガイドライン統括委員会は、診療ガイドライン作成を決定し、ガイドライン作成グループ、システマティックレビューチームを組織して統括します。ガイドライン作成グループは、スコープを作成して、診療ガイドラインの具体的な作成方法とカバーする範囲などを決めます。特に、取り上げるクリニカルクエスチョンを決め、医療行為を比較する際の比較項目を決定します。システマティックレビューチームは、システマティックレビューを実施します。そして、ガイドライン作成グループが、システマティックレビューの成果等を基に、推奨を作成します。
この中で、患者・市民がガイドライン作成グループに構成員として参加する場合、主として、ガイドライン作成グループが担当するスコープ作成と推奨作成に参加します。

2.スコープ作成
スコープ作成では、ガイドライン作成グループの構成員によって、診療ガイドラインが取り組むべき臨床課題を様々な角度から検討し、推奨を提案すべきクリニカルクエスチョンが設定されます。クリニカルクエスチョンは、重要な医療行為に複数の選択肢がある場合に、選択の許容範囲を問う質問形式の文章であり、複数の医療行為を比較する際の比較項目となる患者アウトカムが決定されます。患者アウトカムとは、医療行為によってもたらされる結果を言い、治療効果のような望ましい、益のアウトカムと、副作用のような望ましくない、害のアウトカムの両方が取り上げられます。クリニカルクエスチョンの設定では、ガイドライン作成グループの構成員が、このようなクリニカルクエスチョンが重要ではないか」、「このような患者アウトカムを重視すべきではないか」というような意見を出し合い、議論を進めて集約していくプロセスを取ります。クリニカルクエスチョンは、患者にとって重要な医療行為を取り上げるものであり、比較で取り上げる患者アウトカムは、患者にとって重要なアウトカムですので、当然ながら、患者の視点が極めて重要となります。また、患者自身が持つ重要な疑問をクリニカルクエスチョンとして取り上げることも重要です。例えば、「薬を飲み忘れたときに、どのようにしたら良いか」というクエスチョンは、患者にとって重要なクエスチョンですが、患者からの声があって初めて取り上げられます。
3.システマティックレビュー
システマティックレビューでは、医療行為の複数の選択肢について、医療行為がもたらす患者アウトカムを比較した臨床研究の結果を収集し、それらが示すエビデンス(科学的根拠)を総体として評価します。システマティックレビューチームは、システマティックレビューを実施し、結果をまとめて、推奨作成のための資料としてガイドライン作成グループに提出します。
4.推奨の作成
推奨を作成する段階では、複数の医療行為を評価したシステマティックレビューの結果が示され、医療行為の間の益と害のバランスの比較によって、医療行為の許容範囲が設定されます。複数の患者アウトカムを比較する際に、どの患者アウトカムをより重視するかについては、医療者の医学的判断とともに、患者の価値観、希望も重視されます。例えば、あるがん患者に対して、部分切除術と全摘術という選択肢が存在する場合、部分切除で臓器を残したいという患者の希望と、全摘でより長生きしたいという患者の希望が、相反する希望となる場合があります。この際に、どちらを重視するかは、患者の価値観、希望にかかっていますが、患者の価値観、希望に多様性が大きい場合には、提案する推奨はいずれかを推奨する「強い推奨」ではなく、患者の価値観、希望に配慮し、患者と医療者が十分に話し合って決めることを勧める「弱い推奨」となります。推奨は、ガイドライン作成グループ構成員による合意形成に基づいて作成されます。したがって、推奨作成では、提示された情報を解釈して、推奨に向けて合意を形成していく議論が中心となります。