急性胆管炎・胆嚢炎 Minds版ガイドライン解説

小児急性胆管炎の診断は下記の診断基準案を参照。特に胆道閉鎖症術後患者に留意が必要である。
小児急性胆嚢炎の診断は成人に準ずる。

小児急性胆管炎診断基準案>
胆道閉鎖症術後患児で38℃以上の発熱があれば[小児]急性胆道炎疑診。
胆道拡張症術後、肝移植術後患児で38℃以上の発熱、白血球数あるいはCRPの上昇、トランスアミナーゼ値の上昇を認めれば[小児]急性胆管炎確診。
腹部超音波所見胆管内にスラッジまたは結石を認め、38℃以上の発熱、白血球数あるいはCRPの上昇、トランスアミナーゼ値の上昇を認めれば[小児]急性胆管炎確診。

小児急性胆嚢炎診断基準案>
発熱、腹痛などの症状を伴い、腹部超音波所見胆嚢炎所見を認める場合に確診。

ガイドライン作成委員より患者さんへ
[小児の急性胆管炎の診断]
下の1か2にあてはまる小児が、熱を出して血液検査で異常がある場合は小児急性胆管炎と診断します。
1. 生まれつき胆管が途切れている病気や胆道が膨らんでいる病気に対して手術を受けたことがある場合や、肝臓移植を受けたことがある場合は、特に注意が必要です。主治医にご相談ください。
2. 超音波検査で胆管内部に胆石や砂が認められる場合。

[小児の急性胆嚢炎の診断]
発熱、腹痛、超音波検査で胆嚢の腫れがあるものを小児急性胆嚢炎と診断します。
 


医学用語解説
小児急性胆道炎
(しょうにきゅうせいたんどうえん)
胆管や胆嚢に炎症が起こる子どもの病気のことです。成人に発症するものとは原因も異なり、発症する割合はごくまれです。生まれつき胆道がふさがっている胆道閉鎖症、膵管と胆道の合流場所に異常がある膵管胆道合流異常症、肝臓の移植手術後などに起こることがあります。
小児急性胆管炎
(しょうにきゅうせいたんかんえん)
子どもに起こる胆管の細菌感染、炎症のことです。成人の場合、その原因の多くが胆石によるものですが、子どもの場合は胆道閉鎖症、膵管胆道合流異常症、肝移植後など、ごくまれな病気や治療後に起こります。胆道閉鎖症は、生まれつき胆道がふさがっていたり、かなり狭かったりした状態が、その後に起こった炎症によってふさがってしまう病気です。膵管胆道合流異常症も、生まれつき膵管と胆道の合流地点が十二指腸から離れている病気です。
胆道閉鎖症
(たんどうへいさしょう)
胆道が生まれつきふさがっている病気のことです。はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、早期に手術を行わなければ死亡するため、生まれたばかりの赤ちゃんの皮膚や白目が黄色がかっている場合は、すぐに診察を受けることが重要です。
小児急性胆嚢炎
(しょうにきゅうせいたんのうえん)
胆嚢に細菌が増えて、炎症が起こる子どもの病気のことです。熱が出たり、おなかが痛くなったりするなどの症状があり、超音波検査を行ったときに胆嚢の腫れが確認できます。
胆道拡張症
(たんどうかくちょうしょう)
生まれつき胆道の一部分だけが広がっている病気のことです。胆管と膵管は十二指腸に流れ込むところで合流するのが一般的ですが、生まれつき胆道の一部が膨れ上がっていると、それより手前で合流してしまいます。これによって、膵液と胆汁が混ざるという現象が起こり、胆石や胆管がんなどにかかる可能性が高まるとされています。
肝移植
(かんいしょく)
病気などが原因で肝臓が機能しなくなった患者さんに、他人の肝臓を移植する手術のことです。他人の臓器であるため、通常では拒絶反応が起こりますが、それを薬でコントロールしながら機能させていきます。日本では脳死による臓器提供が遅れていることもあり、生きている人の肝臓の一部を切り取って移植する生体肝移植が中心となっています。
白血球数
(はっけっきゅうすう)
白血球が、一定の血液量の中にどのくらい含まれているかをいいます。白血球は、血液を構成する成分の一つで、体の中に入り込んだ病原菌の毒性をなくして、病気の発症を防ぐ働きをしています。
CRP
(シーアールピー)
C反応性タンパクのことです。血液検査の際、体内のどこかに炎症があると増加します。
トランスアミナーゼ値
(トランスアミナーゼち)
体内でアミノ酸がタンパク質に変換されるのを助ける酵素の総称です。ASTというアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ALTというアラニンアミノトランスフェラーゼなどがこれに含まれており、血液中の増加は肝臓機能が悪化していることを示します
腹部超音波所見
(ふくぶちょうおんぱしょけん)
おなかの超音波検査を行った結果から得られる情報のことです。超音波検査は、皮膚の表面から超音波を当ててその反射波を画像として映し出すことで、体内の状態を調べる検査方法です。急性胆管炎では、胆管内に炎症した胆汁の滞りによる腫れがあるかどうかなどを調べることができます。
胆管
(たんかん)
胆汁の通り道のうち、肝臓内から伸びている肝内胆管、胆嚢管、胆嚢管より下から十二指腸の合流点までの総胆管の総称です。肝臓でつくられた胆汁を胆嚢や十二指腸へと運ぶ管です。
スラッジ 細かな砂状の胆石が混ざることで胆汁の濃度が一定に保たれず、超音波検査を行ったとき、胆管内が白や黒のまだら模様に見える状態のことです。同じような現象が起こるものにデブリエコーがありますが、スラッジはデブリエコーよりも、白黒の差が分かりやすい状態を指します。
結石
(けっせき)
体の中で、ある成分が固まって石のようになったもののことで、胆管や胆嚢でできたものを胆石といいます。最も多い成分はコレステロールで、これは胆汁内で増えたコレステロールが結晶となり、石のように固まることが原因です。
胆嚢炎所見
(たんのうえんしょけん)
発熱やおなかの痛みなどの症状に加え、腹部の超音波検査をした結果、医師が胆嚢炎であると判断できる特徴のことです。胆嚢が炎症を起こして腫れている場合は、超音波検査で診断できます。


関連する医療提供者向けガイドラインの表示はこちら
(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン  Q107 小児急性胆道炎の診断は?
 
 
 
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