急性胆管炎・胆嚢炎 Minds版ガイドライン解説

急性胆管炎を疑った場合には診断基準を用いて診断し、さらに重症度判定を行い、重症度に応じた治療を行う。頻回に再評価を行う。
急性胆管炎では、原則として、胆道ドレナージ術の施行を前提とした初期治療[全身状態の改善、感染治療]を行うが、その際、急変時に備え、呼吸循環のモニタリング下に、全身状態の管理を心がけることが大切である。
1. 重症例[ショック菌血症意識障害急性腎不全のいずれかを認める場合]:適切な臓器サポート[十分な輸液抗菌薬投与、DICに準じた治療など]や呼吸循環管理気管挿管人工呼吸管理昇圧剤の使用など]とともに緊急に胆道ドレナージを行う。
2. 中等症例:初期治療とともにすみやかに胆道ドレナージを行う。
3. 軽症例:緊急胆道ドレナージを必要としないことが多い。 しかし、総胆管結石が存在する場合や初期治療[24時間以内]に反応しない場合には胆道ドレナージを行う。

ガイドライン作成委員より患者さんへ
急性胆管炎の基本的な治療方針としは、まず始めに診断基準を使ってきちんと診断し、次に重症度判定を行って重症度に応じた治療を行うことが重要です。
急性胆管炎の基本的な治療は、細菌の増殖した胆汁を排膿する胆道ドレナージという治療です。
この治療と同時に点滴、栄養などの全身の治療と抗菌治療も行います。
重症になるほど、胆道ドレナージは緊急に行い、全身治療も人工呼吸や心臓治療を含めて救急の集中治療が必要になります。
 


医学用語解説
急性胆管炎
(きゅうせいたんかんえん)
胆管の中に胆石が詰まるなどして、胆汁の流れが滞り、胆管内に胆汁があふれると、痛みが起こります。胆石が自然に流れて胆汁の詰まりがなくなることで痛みが治まることもありますが、そのまま胆汁の流れが滞っていると、腸内の細菌などが逆流し、細菌感染を引き起こします。これを急性胆管炎といいます。
診断基準[※急性胆管炎における]
(しんだんきじゅん)
患者さんの症状や検査の結果など、病名を判断するための指針のことです。急性胆管炎では、熱が出る、右の肋骨付近やみぞおちが痛む、黄疸によって白目が黄色くなるなどの症状が挙げられます。これらの症状がすべて当てはまっているか、もしくはいずれか一つの症状があり、血液検査で肝臓の異常や、体内での炎症反応が確認され、画像検査で胆管の腫れが見つかった場合は、急性胆管炎と診断されます。
重症度判定
(じゅうしょうどはんてい)
患者さんの病気の重さを評価し、判断することです。その指標となるのが重症度判定基準というもので、急性胆管炎では、患者さんの状態や症状、血液検査の結果を指標に当てはめて判断します。
重症度
(じゅうしょうど)
症状や検査の結果から病気の重さを判定し、段階別に分けたものをいいます。急性胆管炎は、患者さんの状態や症状、血液検査の結果から、軽症、中等症、重症の三段階に分けられています。
胆道ドレナージ
(たんどうドレナージ)
ドレナージというチューブを通し、胆道内に滞った胆汁を排出させることです。内視鏡的ドレナージ、経皮経肝的ドレナージ、開腹ドレナージの三つがあります。内視鏡的ドレナージは口から胃、十二指腸、胆管へとチューブを通し、経皮経肝的ドレナージは皮膚の上から肝臓、胆管へとチューブを通す方法です。特殊な場合にはおなかを開いて、胆管にチューブを通す開腹ドレナージが行われます。
胆道ドレナージ術
(たんどうドレナージじゅつ)
初期治療
(しょきちりょう)
病気が診断されたとき、最初に行う治療のことです。手術や胆汁を排出する治療を行うことを前提に、食事を摂らない、注射による栄養や水分の補給を行う、痛み止めや細菌を殺す薬を投与するといった治療が最初に行われます。
呼吸循環のモニタリング
(こきゅうじゅんかんのモニタリング)
呼吸活動や、血液の循環の様子を管理、監視することです。生命維持に必要な酸素の取り込みや二酸化炭素の排出ができない場合は人工呼吸器をつけて補助したり、心臓への酸素の供給が正しく行われているかをチェックしたりします。
呼吸循環管理
(こきゅうじゅんかんかんり)
ショック 血圧が急激に低下した状態が長く続き、臓器の働きが失われることです。全身を流れる血液の量が急激に減ったり、血管の拡張度合いが大きくなり過ぎたりしたことなどが原因で起こります。血圧の急激な低下は血液の流れを阻害するため、全身の細胞に酸素が行き届かなくなります。必要な酸素が得られないと細胞が死んでしまい、臓器が機能しなくなります。
菌血症
(きんけつしょう)
細菌が血液の中に入って、何らかの症状を起こしていることです。急性胆管炎・胆嚢炎にかかると、大腸にすむ細菌が逆流して胆汁内に感染し、炎症を引き起こすことがあります。さらに症状が悪化すると、血液中にも細菌が入り込みます。菌血症は血液中に細菌が存在するという段階ですが、症状が進むと、血液に細菌が感染する敗血症にかかる可能性が高まるため、早急な治療が必要です。
意識障害
(いしきしょうがい)
物事を考えたり、意思を示す機能や感覚の維持ができなくなったりした状態のことです。重症の胆管炎が原因で、周囲の状況が何となく把握できないといった程度のものから、呼び掛けたり、体に触れたりしても何の反応も示さないものまで、さまざまです。
急性腎不全
(きゅうせいじんふぜん)
腎臓が働かなくなる病気のうち、急激に発症したもののことです。腎臓に血液が行き届かなくなることで起こる腎前性急性腎不全や、炎症が起こるなどして、腎臓そのものが働かなくなる腎性急性腎不全などがあります。尿がほとんど出なくなるのが一般的な症状で、心臓にも過度な負担がかかります。腎機能が回復するまで血液透析などを行います。
臓器サポート
(ぞうきサポート)
臓器機能を保護することです。急性胆管炎では、炎症によってショックや全身の臓器に細菌が感染するなど、さまざまな影響が出ます。それらの悪影響を抑えるため、予防的な措置を行うことを指しています。
輸液
(ゆえき)
体内の水分バランスや栄養などを補うために使われる点滴用の液剤のことです。急性胆管炎や胆嚢炎は、発熱、腹痛のために食事が十分に摂れず、脱水にもなりやすいので、必要な栄養や水分などを点滴で補い、脱水症状や栄養障害を防ぎます。
抗菌薬
(こうきんやく)
細菌を殺したり、増殖したりするのを防ぐ効果がある薬のことです。急性胆管炎・急性胆嚢炎では胆汁が細菌感染を起こすため、細菌感染を治療する目的で、抗菌薬が使われます。吐き気があって薬が飲めないときは、注射や点滴で投与することもあります。
DIC
(ディーアイシー)
disseminated intravascular coagulationの略で、播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群のことです。体の中で血液が固まる力が高くなり、血管内の至るところに血栓ができることが原因で起こる病気です。血栓がつくられると、臓器不全が起こったり、血液を固める成分が大量に使われることで、出血が止まらなくなったりするなどの症状が起こります。
気管挿管
(きかんそうかん)
プラスチック製のチューブを口や鼻などから気管に入れ、気道を確保する方法のことです。重症の急性胆管炎で、ショックや意識障害などが起こると、気道がふさがれたり呼吸ができなくなることがあります。その際は呼吸ができるように、人工的に器具を挿入することで対応します。
人工呼吸管理
(じんこうこきゅうかんり)
チューブを気管に入れ、人工的に酸素を送る人工呼吸器を装着するなどして、呼吸の状態を管理することです。病気によって低下した肺の働きを補うために行います。
昇圧剤
(しょうあつざい)
血圧を上げる薬のことです。症状が重い急性胆管炎の場合、ショックや意識障害などの症状が出て急激に血圧が下がることがあります。その際、血圧を上昇させるために薬を投与して、患者さんの状態を改善します。
緊急胆道ドレナージ
(きんきゅうたんどうドレナージ)
生命に危険が及ぶため、急いで胆道内にチューブを入れ、胆道内に滞った胆汁を体外へ排出する胆道ドレナージを行うことです。胆管に胆汁が滞っていることが原因で、胆汁に感染した細菌が血液の流れに乗って全身に回るなど危険な状態であると判断されたとき、鼻から入れたチューブを胆管に到達させたり、皮膚から直接胆管にチューブを挿入させたりして、早急に滞った胆汁を十二指腸から外に排出させる治療を行います。
総胆管結石
(そうたんかんけっせき)
胆汁の通り道である胆道のうち、胆嚢管の下から十二指腸までの間に発生する石のような塊のことをいいます。胆嚢内に発生した胆石が胆汁の流れに押されて胆嚢管より下まで落ちてくることが多いです。石のように固まった成分の多くは、コレステロールや胆汁の色素成分であるビリルビンです。


関連する医療提供者向けガイドラインの表示はこちら
(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン  Q43 急性胆管炎における基本的診療方針は?
 
 
 
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