(旧版)これで治す最先端の頭痛治療 「慢性頭痛の診療ガイドライン」市民版
|
|

各種予防薬について説明します。
●β遮断薬(プロプラノロールなど)(推奨のグレードB)
46以上の試験が行われており、片頭痛予防薬としての効果は確実とされています(推奨のグレードA)。β遮断薬は高血圧や冠動脈疾患、頻拍性不整脈などの合併症をもつ片頭痛患者にとくに勧められます。逆に心不全や喘息、抑うつ状態の場合は使用を遠慮します。なお、β遮断薬は片頭痛への保険適用はありません。
●カルシウム拮抗薬
降圧薬として広く使用されている薬剤群で、片頭痛予防薬として以前より使用されてきました。塩酸ロメリジンは日本で開発された片頭痛予防の保険適用をもつ安全な薬剤です。塩酸ロメリジンは月に2回以上の発作がある片頭痛患者に10mg/日、経口投与すると、8週間後には64%の患者さんで片頭痛発作の頻度、程度の軽減が期待できます(推奨のグレードB)。
●アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)(推奨のグレードB)
ACE阻害薬とARBは副作用の少ない降圧薬として広く使用されています。高血圧の治療のためにACE阻害薬を服用した患者さんに、片頭痛の頻度や程度の軽減が認められました。とくにリシノプリルやエナラプリルに片頭痛予防効果のエビデンスがあります。
ARBであるカンデサルタンにも無作為化試験が実施され有用性が示されています。片頭痛と高血圧症が併存する場合、これらの薬剤の積極的な使用が勧められます。
●抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム)
月に2回以上の頭痛発作がある片頭痛患者にバルプロ酸ナトリウム1000mgを経口投与すると、8週後には片頭痛発作を平均4.4回/月から平均3.2回/月に減少することが期待されます。
バルプロ酸ナトリウムは神経細胞の興奮性を抑制することから、片頭痛や難治性頭痛において検討がなされてきました。外国ではバルプロ酸ナトリウム以外の抗てんかん薬も片頭痛予防薬として使用されています(推奨のグレードA)。
●抗うつ薬(アミトリプチリン)
抗うつ薬は抑うつ状態がなくても、片頭痛に関係の深いセロトニンの代謝を改善することにより片頭痛の予防に有用です。とくに緊張型頭痛を合併している片頭痛に高い有効率が示されています。抗うつ薬のなかでは三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンはエビデンスも十分にあり、広く使用されています(推奨のグレードA)。
三環系抗うつ薬は、抗コリン作用による副作用(眠気、口渇等)がありますが、低用量から用いることにより副作用を軽減できます。新しいタイプの抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、三環系抗うつ薬にみられやすい副作用は少なく、今後のエビデンスの蓄積が期待される薬剤です。