(旧版)これで治す最先端の頭痛治療 「慢性頭痛の診療ガイドライン」市民版

1 頭痛はどのように分類し診断するのでしょうか

推奨 頭痛の分類と診断は、国際頭痛分類第2版にのっとって行います
  グレードA:行うよう強く勧められる

解説
1962年に米国神経学会の頭痛分類が発表されるまで、世界共通の頭痛分類はありませんでした。それまでは各人各様の分類が勝手に使用されていたのです。それまでの頭痛分類にも「片頭痛(へんずつう)」という病名はありましたが、どのような頭痛が片頭痛なのか定義がありませんでした。各医師の判断に任されていたのです。ですから、A医師の片頭痛とB医師の片頭痛が同じものを指すのかは、だれにもわからなかったのです。このような状況では頭痛の治療法の開発や比較研究は満足に行えません。
1988年、国際頭痛学会が国際頭痛分類と診断基準を発表しました。このことによって頭痛診断の国際的な標準化が行われ、診断や治療に関するデータの集積や比較検討が可能となったのです。
2004年には、それまでの研究の進歩とエビデンス、批判と意見を取り入れて、初版を踏襲(とうしゅう)・改良した国際頭痛分類第2版が公表されました。同年には日本語訳も出版されています。国際頭痛分類第2版の概要を箇条書きしますと、
    (1) 第1部、第2部、第3部と付録からなる
  (2) 頭痛は14のグループに分けられている
  (3) 頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に大別される
  (4) 一次性頭痛は頭痛自体が疾患である
  (5) 一次性頭痛は片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、その他の一次性頭痛の4つのグループに分けられる
  (6) 二次性頭痛はくも膜下出血や髄膜炎などのように原因疾患のある頭痛グループである
  (7) 付録には、頭痛分類の新しい提案や将来の変更への提案、代替診断基準が提示されている
頭痛の大分類とそのグループの代表的な病気を表1に示しておきます。第10群のホメオスターシスとは恒常性(こうじょうせい)、生体恒常状態のことです。生体は血圧、酸素濃度、血糖値などを一定に保つ機能があります。これが乱されて起こる頭痛を「ホメオスターシスの障害による頭痛」といいます。グループ11「頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頭蓋の構成組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛」とは眼科、耳鼻科、整形外科、口腔外科の病気による頭痛を指します。

表1 頭痛の大分類(グループ)
第1部 一次性頭痛
      1. 片頭痛
  2. 緊張型頭痛
  3. 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛
  4. その他の一次性頭痛
第2部 二次性頭痛
    5. 頭頸部外傷による頭痛(例:外傷後頭蓋内血腫による頭痛)
  6. 頭頸部血管障害による頭痛(例:くも膜下出血)
  7. 非血管性頭蓋内疾患による頭痛(例:脳腫瘍)
  8. 物質またはその離脱による頭痛(例:薬物乱用頭痛)
  9. 感染症による頭痛(例:髄膜炎)
  10. ホメオスターシスの障害による頭痛(例:高血圧)
  11. 頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頭蓋の構成組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛(例:顎関節症)
  12. 精神疾患による頭痛(例:心身症)
第3部 頭部神経痛、中枢性・一次性顔面痛およびその他の頭痛
    13. 頭部神経痛および中枢性顔面痛(例:三叉神経痛)
  14. その他の頭痛、頭部神経痛、中枢性あるいは原発性顔面痛

サイドメモ
国際頭痛分類第2版の正式名はInternational Classification of Headache Disorders 2nd Editionといいます。略号はICHD-IIです。
国際頭痛分類第2版では初版の訳が変更されています。たとえば機能性頭痛→一次性頭痛、症候性頭痛→二次性頭痛、前兆を伴なわない片頭痛→前兆のない片頭痛、前兆を伴う片頭痛→前兆のある片頭痛、などです。
14の頭痛グループはさらにタイプ、サブタイプ、サブフォームに細分化されます。たとえばグループ1の「片頭痛」は、〈1.1 前兆のない片頭痛〉、〈1.2 前兆のある片頭痛〉のように6つのサブタイプに分かれます。さらに〈1.2 前兆のある片頭痛〉は、〈1.2.1 典型的前兆のある片頭痛〉のように6つのサブフォームに分類されます。すなわち頭痛の分類は動植物の分類に採用されているような階層的な分類体系をとっています。これによって各頭痛は1〜4桁のコードによってあらわされます。ちなみに国際頭痛分類第2版では頭痛は225のサブタイプが挙げられています。
 

図1 新国際頭痛分類(ICHD-II)
図1 新国際頭痛分類(ICHD-II)

 

 
 
 
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