(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2006年版
文献ID:S0020240
PMID:
7284971
Evidence Level
II
目的
切除不能膵癌に対して高線量 (60Gy) の放射線治療単独と中等度の線量 (40Gy) を用いた化学放射線療法と高線量 (60Gy) を用いた化学放射線療法の有効性を比較検討する。
研究施設/組織
The Gastrointestinal Tumor Study Group.
研究期間
不明
対象患者
組織学的に証明された切除不能膵癌194例 (放射線治療単独群: 25例,40Gyの放射線治療と5-FU併用群: 83例,60Gyの放射線治療と5-FU併用群: 86例) ,106例登録時点で放射線治療単独群の成績が有意に悪いため,それ以降放射線治療単独群は中止した。
介入
放射線治療は1回2Gy,2週間で20Gy後に2週間の予定休止期間があった。5-FUは20Gyの放射線治療の開始3日間毎に500mg/m2/dayを急速静注した。化学療法併用群では維持化学療法として放射線治療終了4週後から500mg/m2を毎週2年間または病気の増悪まで続けた。
主要評価項目
生存期間,増悪までの時間,有害事象
結果
放射線治療単独群は3コース目 (40〜60Gy) の治療完遂の割合が48%と60Gyの化学放射線療法群の79%に比し,有意に低かった。主な理由は遠隔転移の出現や全身状態の悪化によるものであった。有害事象として,嘔気/嘔吐がよく認められ,重篤な嘔気/嘔吐は放射線治療単独群で0%,40Gyの化学放射線療法群で5%,60Gyの化学放射線療法群で4%であった。骨髄毒性は放射線治療単独に比し,化学療法併用群でその頻度と重篤な割合が高い傾向であった。3群での比較時点での増悪までの期間中央値は放射線治療単独群で12.6週,40Gyの化学放射線療法群で30.4週,60Gyの化学放射線療法群で33週で,有意に放射線治療単独群が短かった。引き続いた2群での増悪までの期間中央値は40Gyの化学放射線療法群で23.2週,60Gyの化学放射線療法群で33.7週で,両群に有意差はなかった。3群での比較時点での生存期間中央値は放射線治療単独群で22.9週,40Gyの化学放射線療法群で42.2週,60Gyの化学放射線療法群で40.3週で,有意に放射線治療単独群が短かった。引き続いた2群での生存期間中央値は40Gyの化学放射線療法群で36.5週,60Gyの化学放射線療法群で49.4週で,両群に有意差はなかった。初回再発形式は局所と肝転移が多く認められ,群間で局所や遠隔転移の制御の差は認めなかった。多変量解析による予後因子で有意な因子はPS (0,1),治療前のCEA レベル (5.0ng/mLより低い) であった。
結論
切除不能膵癌において,5-FU併用放射線治療は放射線治療単独に比し,有意に生存期間,増悪までの期間がよかった。
作成者
伊藤芳紀,唐澤克之
コメント
ランダム化比較試験である。局所進行膵癌に対して5-FU併用放射線治療が放射線治療単独よりも生存期間において優位性があることを証明した報告である。