(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2006年版
文献ID:S0020207
Evidence Level
II
目的
ゲムシタビンと経口のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるErlotinib (Tarceva) の併用療法を検討した。
研究施設/組織
17カ国の140施設
研究期間
2001年11月〜2003年1月までに569例を登録したが,解析時までに485例が死亡した。
対象患者
切除不能進行膵癌 (腺癌) で全身化学療法治療歴がないこととした。登録に際してEGFR発現状態は問わなかった。施設,病期 (局所進行 vs 転移性) およびPS (ECOG 0,1 vs 2) で層別化した。
介入
患者 (n=569) を二重盲検下でゲムシタビン (1,000mg/m2,30分点滴静注,週1回,8週間中7週間,その後4週間中3週間)+Erlotinib (100mg/日,経口投与) またはプラセボ投与群に1対1の割合で割り付けた。
主要評価項目
プライマリエンドポイントは生存期間,セカンダリエンドポイントは無増悪生存期間 (PFS),QOL,奏効率 (CR+PR+SD),毒性および腫瘍細胞のEGFR発現と治療効果の相関とした。
結果
生存期間はErlotinib併用群で有意に長く (P=0.025; log-rank検定),ハザード比は0.81 (95% CI 0.67-0.97) であった。1年生存率はErlotinib併用群で24%,プラセボ群で17%であった。PFSもゲムシタビン+Erlotinib併用群で有意に長く,ハザード比は0.76 (P=0.003) であった。腫瘍コントロール率 (CR+PR+SD) は,Erlotinib併用群で57.5% (CR+PR=9%),プラセボ群で49.2% (CR+PR=8%) であった。
結論
本試験結果から,EGFRチロシンキナーゼ阻害剤上乗せにより進行性膵癌患者の生存期間および無増悪生存期間を延長することが初めて示された。Erlotinib併用群で毒性発現頻度が上昇していたが,容認できる範囲であった。皮疹が強く認められた症例で,治療効果が良好であった。
作成者
船越顕博,澄井俊彦
コメント
今回初めてゲムシタビン単独治療に勝る治療法が報告されたという点で,その意義は非常に大きい。しかしその差は極めて僅少であり,そのまま実地臨床に導入できるかどうかは難しい。