(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

文献ID:S0007694 PMID: 11413434

著者

Atlas SJ/Keller RB/Chang Y/et al.

出典: Spine/ 26巻, 10号, 1179-87頁/ 発行年 2001年05月

研究デザイン

5. CCT (Controlled Clinical Trial)

Evidence Level

Level 5

研究施設

ハーバード大学マサチュセッツ総合病院総合内科、医療行為評価センター、ボストン、メイン州医学評価機構、オーガスタ、メイン州、ワシントン大学内科、シアトル、ワシントン州

目的

腰椎椎間板ヘルニアが原因で下肢痛を発症した患者に外科的治療あるいは保存治療を行った症例の5年経過成績を検討すること。

研究期間

1990-1992

対象患者

メイン州全域の診療における職業作業療法士、整形外科医、脳神経外科医を受診した下肢痛を有した患者。参加者は下肢痛を有する18歳以上である。下肢痛の診断は医師により成され、腰椎手術の既往、馬尾症候群、先天性脊椎奇形、脊椎骨折、感染、腫瘍、脊椎症、妊娠、精神病については除外した。参加する際には画像診断の必要なし。

症例数

507

追跡率(%)

79.3

介入

治療法は患者と医師で決定した。保存治療を選択したが3ヵ月以内に手術を行った患者は手術群として解析した。術前評価、3、6ヵ月後と術後1年毎にアンケート用紙を郵送し評価。

主要評価項目とそれに用いた統計手法

開始時には性別、年齢、就労、障害状況、症状経過、神経学的所見、身体所見などの詳細を聴取。腰背部の機能状況は改訂したローランドスコアを、全体の健康度はSF-36を使用。Follow-upは疼痛に関しては毎回7点式で点数化した。満足度に関しても全般的な生活の質と現状の状況に対する満足度を7点式で点数化した。障害の程度と就労状況も毎回調査した。
統計はx2test、Fisher's exact testなど

結果

当初、保存治療を選択してその後3ヵ月評価以前に手術治療を選択した患者は38人存在したが、これらは手術治療群として評価した。5年経過を観察できた患者は402人(79.3%)で220人(80%)が手術治療を、182人(78.4%)が保存治療を選択していた。手術群と保存群を比較すると症状はより強く障害の程度も強く、SF-36もより低値であった。5年経過時までに、再手術例は手術群で19%、保存群で16%であった。手術群の再手術までの期間は平均19ヵ月であった。保存群の手術例は平均10ヵ月であった。5年経過時での評価は、腰痛の改善は手術群69.8%、保存群54.8%、下肢痛の改善は手術群71.4%、保存群56.1%、全般改善は手術群70.4%、保存群56.1%、生活の質の改善は手術群79.4%、保存群56.3%、現状に満足しているのが手術群63.0%、保存群45.9%といずれの項目でも手術群の方が良好であった。経時的に下肢痛の頻度やローランドスコアを比較する1年から2年目までは両者の差が縮まる傾向があるが、それ以降は差が縮まらず、現状の満足度に関しても両群とも経年的に改善傾向があるが、1年以上経過するとその差は変化なく経過している。

結論

中等度あるいは高度の下肢痛を伴う患者については、外科治療が保存群よりも良好な改善を示していた。手術群の改善は経時的に低下していくが、保存群よりも良好であった。

コメント

経過観察期間が長く、参加人数は多いが、手術治療は多施設で様々な医師が行い、保存治療法も一貫しておらず、治療法の統一性に疑問が残る。しかし、ヘルニアの保存治療と手術療法を比較するためにはこの様な手法しか現実的でないのかもしれない。

作成者

波呂浩孝

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