メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版
26.メニエール病の治療のClinical Question 3
26.メニエール病の治療のClinical Question
| |||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||
●解説● | |||||||||||||||||||||||
メニエール病に対する抗ウイルス薬の投与法としては,経中耳(鼓室内投与)法と経口法がある。RCTとしては,経中耳(鼓室内投与)法に関して1件,経口法に関して1件の研究が報告されている。鼓室内投与によるものとして,Guyot, et al., 2008は,通常の薬物治療でコントロールできず手術目的に紹介された症例に,ガンシクロビル50mg/mLあるいは,生理食塩水を鼓室内投与し,その効果を比較したが,両群におけるめまい症状の改善に有意差を認めなかった1)。経口投与によるものとして,Derebery, et al., 2004は,ファムシクロビル250mgあるいはプラセボを1日3回10日間経口投与し,さらにファムシクロビル250mgあるいはプラセボを1日2回80日間経口投与し,効果を比較した2)。めまい発作の改善には両群に有意差を認めなかった。症例集積研究として,Gacek, 2015は,メニエール病症例31例にアシクロビル800mgあるいはバラシクロビル1gを1日3回3週間経口投与し,12例において聴力の改善を認めたとしている3)。聴力改善を認めた症例では,めまい発作も完全にコントロールされたと報告している。 | |||||||||||||||||||||||
◆文献の採用方法 | |||||||||||||||||||||||
文献検索対象期間は2018年3月31日までとした。文献検索には,PubMed,Cochrane Library,医学中央雑誌を用いて実施した。PubMedでは,「Meniere's disease」,「antiviral」をキーワードとして組み合わせて検索した。研究デザインや論文形式による絞り込みは行っていない。Cochrane Libraryでは,「Meniere's disease」をキーワードとしてシステマティックレビューとRCTを検索した。医学中央雑誌では「メニエール病」,「抗ウイルス薬」をキーワードとして組み合わせて検索した。その結果,英語文献では14編を抽出した。和文文献では,会議録を除く12編を抽出した。それらの中からRCT2編を抽出した。さらに要旨のレビューを行い,症例報告1編を追加し,3編を採用した。 | |||||||||||||||||||||||
◆推奨度の判定に用いた文献 | |||||||||||||||||||||||
Guyot, et al., 2008(レベル1b),Derebery, et al., 2004(レベル1b),Gacek, 2015(レベル5) | |||||||||||||||||||||||
参考文献 | |||||||||||||||||||||||
1) | Guyot JP, Maire R, Delaspre O: Intratympanic application of an antiviral agent for the treatment of Ménière's disease. ORL 70: 21-27, 2008. | ||||||||||||||||||||||
2) | Derebery MJ, Fisher LM, Iqbal Z: Randomized double-blinded, placeco-controlled clinical trial of famciclovir for reduction of Ménière's disease. Otolaryngol Head Neck Surg 131: 877-884, 2004. | ||||||||||||||||||||||
3) | Gacek RR: Recovery of Hearing in Meniere's Disease after Antiviral Treatment. Am J Otolaryngol 36: 315-323, 2015. |