メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版
11.リリース前のレビュー
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11.1 外部評価者によるレビュー
本診療ガイドラインの公開に先立ち,耳鼻咽喉科以外の医師2名を外部評価者とし,メニエール病と遅発性内リンパ水腫の診療に関わる耳鼻咽喉科専門医の5名を内部評価者とし,評価を行った。
外部評価者 | |||||||||||||||||
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内部評価者 | |||||||||||||||||
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このうち,外部評価者1名と内部評価者1名に,AGREEⅡ(Appraisal of Guideline for Research & Evaluation Ⅱ)に基づいて,独立して評価を行った。また,外部評価者1名と内部評価者4名には,特に評価方法を指定することなく,ドラフト版の評価を依頼した。ガイドライン作成委員会は,評価に基づき本診療ガイドラインの最終版を修正した。
11.2 外部・内部評価者による指摘点とガイドライン作成委員会の対応
指摘1 | |||||||
AGREEⅡ領域2(利害関係者の参加):患者/一般市民の価値観や希望の調査が積極的には行われていない。 | |||||||
対応1 | |||||||
日本めまい平衡医学会のホームページ上に本診療ガイドラインのドラフト版を2019年10月7日から10月21日まで掲示して,患者や一般市民からのパブリックコメントの調査を行った。 | |||||||
指摘2 | |||||||
AGREEⅡ領域3(作成の厳密さ):文献の検索範囲の時期が明示されていない。 | |||||||
対応2 | |||||||
該当箇所(各CQ「文献の採用方法」)に文献の検索範囲の時期に関する記載を追加した。 | |||||||
文献検索対象期間は2018年3月31日までである。 | |||||||
指摘3 | |||||||
AGREEⅡ領域3(作成の厳密さ):推奨を作成した最終決定にいたる具体的な方法の記載がわかりにくい。 | |||||||
対応3 | |||||||
該当箇所(p.12)に推奨と推奨度の最終決定にいたる過程に関する記載を追加した。 | |||||||
推奨と推奨度については,2015~2017年度AMED研究班の班会議と2016~2017年度厚労科研研究班の班会議で班員ごとにエビデンスのレベル,エビデンスの質,エビデンスの一貫性(複数の研究による支持),臨床的有用性,臨床上の適応性,害やリスクに関するエビデンスを考慮し検討を行い,無記名で投票を行った。その投票結果を基に日本めまい平衡医学会メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版作成委員会(以下,ガイドライン作成委員会)が決定した。 | |||||||
指摘4 | |||||||
CQに副腎皮質ホルモン,炭酸水素ナトリウム注射液(メイロン),アセタゾラミドナトリウム(ダイアモックス)の治療を採用してはどうか。 | |||||||
対応4 | |||||||
ガイドライン改訂時に,CQとして採用するか検討する。 | |||||||
指摘5 | |||||||
メニエール病の疫学の疫学的知見について,根拠となる文献が示されていない。 | |||||||
対応5 | |||||||
該当箇所(p.19)に文献を追加した。 | |||||||
6) | 水越鉄理,將積日出夫,渡辺行雄:メニエール病の疫学 本邦の疫学研究を中心に. Equilibrium Res 56: 219-233, 1997. | ||||||
7) | Shojaku H, Watanabe Y, Yagi T, Takahashi M, Takeda T, Ikezono T, Ito J, Kubo T, Suzuki M, Takumida M, Takeda N, Furuya N, Yamashita H; Peripheral Vestibular Disorder Research Committee of Japan: Changes in the characteristics of definite Meniere's disease over time in Japan: a Long-term survey by the Peripheral Vestibular Disorder Research Committee of Japan, formerly the Meniere's Disease Research Committee of Japan. Acta Otolaryngol 129: 155-160, 2009. | ||||||
指摘6 | |||||||
図12のMRIにシェーマを加えるべきである。 | |||||||
対応6 | |||||||
シェーマの代わりに矢印で蝸牛水腫を,矢頭で前庭水腫を示した(p.37)。 | |||||||
指摘7 | |||||||
メニエール病治療のアルゴリズムの序文で,このようなアルゴリズムになった経緯が示されていない。 | |||||||
対応7 | |||||||
該当箇所(p.41)に文献を追加し,経緯に関する記載を追加した。 | |||||||
これは,Sajjadi et al., 2008がLancetに報告したメニエール病の治療アルゴリズムを基に,メニエール病診療ガイドラインや日本めまい平衡医学会のメニエール病難治例の診療指針に取り上げられた間歇期の治療方針である。 | |||||||
1) | Sajjadi H, Paparella MM: Meniere's disease. Lancet 372: 406-414, 2008. | ||||||
指摘8 | |||||||
図の番号の順番が違う。 | |||||||
対応8 | |||||||
訂正した。 | |||||||
指摘9 | |||||||
本邦ではベタヒスチンメシル酸塩は6mgと12mgの2製剤あるため,「CQ:抗めまい薬は有効か?」の最終行は不要。 | |||||||
対応9 | |||||||
「また,本邦のベタヒスチンメシル酸塩は1日量36mg(6錠)で使用すべきであり,1日量18mg(3錠)では効果が低い可能性がある。」を「また,本邦のベタヒスチンメシル酸塩は1日量36mgで使用すべきであり,1日量18mgでは効果が低い可能性がある。」に訂正した(p.49)。 | |||||||
指摘10 | |||||||
CQ中耳加圧治療のGürkovの論文の結果の記載がない。 | |||||||
対応10 | |||||||
該当箇所(p.56)に以下の記載を追加した。 | |||||||
治療群ではプラセボ群に比べてめまい重症度の改善が認められた。 |
11.3 パブリックコメント
本診療ガイドラインの最終版を,日本めまい平衡医学会のホームページに2019年10月7日から2019年10月21日の期間,掲載し,パブリックコメントを募った。ガイドライン作成委員会は,パブリックコメントの指摘に対して,本診療ガイドラインの最終版を修正した。
11.4 パブリックコメントとガイドライン作成委員会の対応
指摘1 | |||||||
CQに有酸素運動,漢方薬,ステロイドの鼓室内注入などの治療を含めて欲しい。 | |||||||
対応1 | |||||||
ガイドライン改訂時に,CQとして採用するか検討する。 | |||||||
指摘2 | |||||||
メニエール病の有病率を記載してほしい。 | |||||||
対応2 | |||||||
該当箇所(p.19)に文献を追加し,有病率に関する記載(下記)を追加した。 | |||||||
メニエール病の有病率は,受療圏が限定的と考えられる特定地区(新潟県糸魚川,同県佐渡,岐阜県高山地区)の総合病院の受診患者を対象に1995年から経時的に調査が行われ,地区ごとに若干の異動はあるが人口10万人対35~48人程度と推定された8)。 | |||||||
8) | 厚生労働省難治性疾患克服研究事業前庭機能異常に関する調査研究班(2008年~2010年度)編:メニエール病の有病率.メニエール病診療ガイドライン2011年版.金原出版,東京,p.71,2011. |