メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版

 
 診療ガイドラインの発刊にあたって(初版)

診療ガイドラインの発刊にあたって(初版)

メニエール病は,難聴,耳鳴,耳閉感などの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する典型的な内耳性めまい疾患であり,その病態は内リンパ水腫である。長期にわたりめまい発作が反復し,経過とともに難聴が進行することから患者の社会生活上の影響がきわめて大きく,1974年に厚生省(当時)特定疾患(難病)に指定され,現在も厚生労働省難治性疾患克服研究事業前庭機能異常に関する調査研究班により研究活動が継続されている。

これまで,メニエール病に対する種々の診断・治療法が提唱されているが,統一的な診療基準は本邦および世界的にも策定されていない。今回,前庭機能異常に関する調査研究班はメニエール病診療の標準化と普遍化を図ることにより同疾患の診療水準が向上することを目標に,メニエール病診療ガイドラインを作成した。

各種疾患の診療ガイドラインが作成された当初は,記載事項のエビデンスの存在が重視されていた。しかし,メニエール病では二重盲検による臨床試験などのエビデンスによる研究は多くはない。このような場合,診療ガイドライン作成にあたっては現時点での最高レベルの研究成果を渉猟し,これらを十分に吟味して推奨される診療に関する情報を提供することが重要である。本ガイドラインはこのような考え方を基本に作成した。

本ガイドラインの作成にあたっては,まず,メニエール病の診断基準を呈示した後に,メニエール病診療の実際を質疑応答形式で解説し,次いでメニエール病の疫学,歴史的経過と基礎的研究などのメニエール病の理解に必要な事項について解説することとした。本ガイドラインは,卒後2年の前期研修を修了し,耳鼻咽喉科専門医としての研修を行い,耳鼻咽喉科の専門医試験を受験する医師の水準を対象として構成した。まず本疾患の基本的概念を述べた後に,発症時からの症状,検査,診断,治療に至るメニエール病の基本的診療が理解でき,日常診療に応用できるように記述した。したがって,高度の知識,技術を要する専門的な検査,治療については本書の内容からさらに研鑽と経験を重ねて,メニエール病の専門的な診療にあたることを期待したい。

また,メニエール病の発作時に受診する可能性がある,内科,神経内科,脳神経外科,総合診療科などの耳鼻咽喉科以外の医師にも理解しやすいよう,耳鼻咽喉科専門用語の解説を加えるなどの配慮をしている。

本ガイドラインが,メニエール病診療の一般的知識の普及と診療技術の向上に役立てば幸甚である。

2011年3月
前庭機能異常に関する調査研究班 研究代表者渡辺 行雄
 
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