(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅱ.日常整容編 CQ47

Ⅱ.日常整容編

CQ47
化学療法に伴う爪のもろさに対して,安全な日常的ケア方法は何か
  推奨
患者から相談が寄せられる抗がん剤治療による爪変化のなかに,爪甲の脆弱化,菲薄化がある1)。もろくなった爪を整えるためにネイルファイル(爪やすり)を使用したり,保護するためにマニキュア(ネイルポリッシュ・ネイルエナメル等)を用いてもよい。ただし,エビデンスはない。また,爪の水分含有量を最適化するため,保湿することが勧められる。
  推奨グレード
C1a
エビデンスはないが,ネイルファイルを使用することは勧められる。
  推奨グレード
C1a
エビデンスはないが,マニキュアを塗布することは勧められる。
  推奨グレード
C1a
高いエビデンスはないが,保湿薬や一般的な化粧品(ハンドクリーム,オイル等)を用いて保湿することは勧められる。

解説

1.ネイルファイルの使用について

爪切りで爪を切るという行為は,場合によって爪に亀裂を生じさせたり,欠けさせたりすることがある2)。したがって,爪の長さや形を整える際には,爪切りではなくネイルファイルを使うことを推奨する。ただし,ネイルファイルを使用しても,爪のもろさは改善しない。

2.マニキュアの使用について

マニキュアを用いて爪甲上に被膜をつくることにより,爪の厚さを増し,補強することができる。ネイルハードナーやネイルストレンスナーと呼ばれる製品であれば,より強度のある被膜を形成できる。いずれも,爪の補強を目的に繊維等が配合されている。

ただし,アクリルネイルやジェルネイルと称される硬化性樹脂製爪化粧料を用いて強化するのは勧められない(CQ49参照)。

3.保湿薬や一般的な化粧品(ハンドクリーム,オイル等)による保湿について

爪の弾力,柔軟性は,水分量と関係がある3)。直接的に爪のもろさの改善とはならないが,割れや欠けの防止につながる爪の水分含有量を最適化するために,乾皮症用の保湿薬や一般的な化粧品(ハンドクリーム・オイル等)を用いて保湿することが勧められる。爪専用の化粧品(美容液・クリーム・オイル等)を使用することも否定しない。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"cancer", "gel", "remover", "care", "polish", "cosmetic makeup", "therapy", "cover makeup", "treatment", "makeup", "nail", "nails", "patient", "cosmetic camouflage", "neoplasms", "radiotherapy"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“癌”,“メイクアップ”,“爪”,“癌治療”,“ネイルケア”,“ネイルメイク”,“マニキュア”,“除光液”,“ネイル”,“腫瘍”,“化学療法”のキーワードを用いて検索した。さらに,保有する文献を参考にした。

参考文献
1)Baran R, Fouilloux B, Robert C. Nail abnormalities in oncology practice. In: Lacouture ME, editor. Dermatologic Principles and Practice in Oncology: Conditions of the Skin, Hair, and Nails in Cancer Patients. Hoboken: Wiley-Blackwell; 2013. p.115-6.(レベルⅤ)
2)菅沼 薫.健康で美しいネイルへのアドバイス,爪切りを使うと爪がいたみます.月刊LABO.1987; 22: 18-24.(レベルⅥ)
3)菅原 享,川相みずえ,細川 均,鈴木敏幸.爪中の水分と爪の力学的特性.粧技誌.1999; 33(4): 283-9.(レベルⅥ)
 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す