(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版
Ⅱ.日常整容編
CQ43 |
化学療法終了後に再発毛し始めた患者に対して,縮毛矯正(ストレートパーマ)は施術してもよいか | |
推奨 化学療法終了後に再発毛し始めた患者に対する,安全な縮毛矯正の方法に関するエビデンスはないが,縮毛矯正をすることにより患者のQOLが向上するならば,十分に毛髪が伸びた後,技術力のある理容師・美容師に施術してもらうことを否定しない。 |
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推奨グレード C1b |
専門家による縮毛矯正(ストレートパーマ)を行うことを否定しない。 | |
推奨グレード C1b |
カーリング料をストレートパーマに使用することを否定しない。 |
●解説
1.縮毛矯正(ストレートパーマ)について
化学療法終了後に再発毛し始めた患者の約半数において,再発毛のくせ毛化やちぢれが観察される1)。その原因は不明であるが,治療後の毛髪の形状変化は,日常のQOLを損なう一つの要因であり,くせ毛や縮れを伸ばし,治療前同様の頭髪にしたいとの患者からの要望がある。くせ毛や縮れを伸ばす美容的な方法として,縮毛矯正がある。縮毛矯正はパーマネント・ウエーブ用剤(パーマ剤)を用いて,くせ毛,ちぢれ毛またはウェーブ毛髪を伸ばし保つ美容施術である。縮毛矯正に用いるパーマ剤は,ウェーブに使用するパーマ剤と同様に,毛髪のケラチンたんぱく質の架橋構造を形成するジスルフィド結合(S-S結合)に作用し,毛髪を変形させる2)。この変化は不可逆性のものであり,洗髪などでもとに戻ることはない。パーマ剤は医薬部外品として分類されており,頭皮に刺激を与え,毛髪の強度低下や水分量低下をもたらすことがある3)~5)ため,使用に際しては注意が必要である。また,そのため十分な技術力のある理容師・美容師が,施術に適した長さまで成長した毛髪に対して施術することが求められる。パーマ剤が頭皮につく可能性を低くするため,頭皮から1~2cm離した位置から毛髪に塗布するとよい。
2.カーリング料を用いたストレートパーマについて
ヘア化粧料としてシステアミン塩等を配合したカーリング料が,ストレートパーマに用いられることがある。医薬部外品として扱われるパーマ剤に比較し,カーリング料は,より規制の緩やかな化粧品カテゴリーに分類され,髪へのダメージが少ないとされている。しかしながら,配合されているシステアミン塩等の還元剤には頭皮への刺激や感作性が報告されている6)7)。そのため使用に際しては,医薬部外品のパーマ剤の使用同様の注意が必要である。
検索式・参考にした二次資料
PubMedおよびJ-STAGEにて,"cancer", "therapy", "treatment", "scalp", "hair", "patient"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“癌治療”,“頭皮”,“髪”,“毛”,“癌患者”のキーワードを用いて検索した。さらに,保有する文献を参考にした。
参考文献 | |
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1) | Yoshida Y, Watanabe T, Yagata H, et al. Patients' recognition of long-term chemotherapy-related changes in their hair and differences among drugs. 2015 MASCC (Multinational Association for Supportive Care in Cancer) Annual Meeting. http://www.csp.or.jp/hor/seika/yoshida_2015.pdf |
2) | 柿澤恭史.ヘアケア製品.皮膚臨床.2014; 56(11); 1658-70.(レベルⅥ) |
3) | クラーレンス・R・ロビンス著(山口真主訳).第3章 毛髪の還元 ストレートニングとヘアストレートナー製品.毛髪の科学.第4版.東京:フレグランスジャーナル社;2006.p.165-9.(レベルⅥ) |
4) | 辻野義雄.第13章 頭髪化粧品.宮澤三郎編著.コスメティックサイエンス-化粧品の世界を知る-.東京:共立出版;2014. p.187-9.(レベルⅥ) |
5) | Gan HF, Meng XS, Song CH, Li BX. A survey on health effects in a human population exposed to permanent-waving solution containing thioglycolic acid. J Occup Health. 2003; 45(6): 400-4.(レベルⅥ) |
6) | Landers MC, Law S, Storrs FJ. Permanent-wave dermatitis: contact allergy to cysteamine hydrochloride. Am J Contact Dermat. 2003; 14(3): 157-60.(レベルⅥ) |
7) | 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「システアミン塩酸塩を配合した洗い流すヘアセット料の安全性に関する調査結果報告書」平成25年度第6回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会.2013. http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000032318.html(レベルⅥ) |