(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版
Ⅱ.日常整容編 CQ41
Ⅱ.日常整容編
CQ41 |
手術瘢痕をカモフラージュする方法としてメイクアップは有用か | |
推奨グレード C1a |
がん患者の手術後の瘢痕に対しメイクアップがカモフラージュ方法として有用であるという十分なエビデンスはない。しかし,QOLが向上するというランダム化比較試験の報告がある。手術後の瘢痕に対するQOL改善の方法の一つとしてメイクアップを行うことは勧められる。 |
●解説
手術瘢痕は,術後早期には色調の異常があり,時間の経過とともに肥厚や幅の拡大による形態の異常が起こることがあり,その醜形が患者のQOLを低下させる。メイクアップは,外観に障害をもつ患者のQOLを高める方法である1)。手術後の瘢痕以外にも,色調や形態の変化により,顔に何らかの障害をもつ患者に対してメイクアップをすることは,カモフラージュ療法として広く行われている。がん患者に対するメイクアップの安全性についてのエビデンスはないが,メイクアップを否定する報告もない。
海外においては,小規模ながら,顔面の皮膚悪性腫瘍手術後の女性患者に対するQOL向上のランダム化比較試験があり,メイクアップによる外観のすぐれたカモフラージュ効果,自己像の大きな改善がみられ,メイクアップの果たす重要な役割が報告されている2)。そして,国内においても,前後比較試験であるが,メイクアップによるQOL向上の報告がある3)4)。
以上により,手術後の瘢痕に対してメイクアップを行うことは,患者のQOLを向上する方法の一つとして勧められる。
検索式・参考にした二次資料
PubMedにて,"cosmetic", "make up", "camouflage", "scar", "surgery", "adverse reactions"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“メイク”,“瘢痕”,“副作用”,“安全性”のキーワードを用いて検索した。
参考文献 | |
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1) | Holme SA, Beattie PE, Fleming CJ. Cosmetic camouflage advice improves quality of life. Br J Dermatol. 2002; 147(5): 946-9.(レベルⅥ) |
2) | Nicoletti G, Sasso A, Malovini A, et al. The role of rehabilitative camouflage after cervicofacial reconstructive surgery: a preliminary study. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2014; 7: 43-9.(レベルⅡ) |
3) | 原田輝一,浅井真太郎,川名誠司,提橋義則,松本 梓.瘢痕カバー用ファンデーション使用による火傷・外傷・ざ瘡後瘢痕患者のQOL改善効果.日形会誌.2011; 31(9): 605-12.(レベルⅥ) |
4) | かづきれいこ,百束比古.美容外科治療後のメイクアップ療法の有用性について 満足度調査から.日美容外会報.2014; 36(3): 107-11.(レベルⅥ) |