(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅱ.日常整容編 CQ39

Ⅱ.日常整容編

CQ39
がん治療に伴う皮膚障害をカモフラージュする方法としてメイクアップは有用か
  推奨
がん治療に伴って生じた皮膚障害について,被覆の要望がある。バリア機能の低下した皮膚に対して,ファンデーション等のメイクアップ製品を使用しても,問題は多くはないと推測されるため,メイクアップを行うことを容認できる。
  推奨グレード
C1a
エビデンスはないが,化学療法による色素沈着をカモフラージュするためにメイクアップをすることは勧められる。
  推奨グレード
C1a
エビデンスはないが,分子標的治療によるざ瘡様皮疹をカモフラージュするためにメイクアップをすることは勧められる。

解説

1.色素沈着に対するカモフラージュメイクアップについて

がん治療に伴う皮膚障害をカモフラージュする方法として,メイクアップが挙げられる。これまで,がん患者の皮膚障害に対するメイクアップの有用性については,大規模な研究がなく,使用するメイクアップ製品の安全性に関する文献等での報告例や先行研究もほとんどみられない。しかし,メイクアップを禁止するエビデンスもなく,小規模ではあるが,がん患者のQOL向上の効果があるとの報告がある1)。また,接触皮膚炎やアトピー性皮膚炎患者を対象にした敏感肌用ファンデーションでの使用実績2)から,がん治療によってバリアー機能の低下した皮膚へのファンデーション等のメイクアップ製品を使用することも,問題は少ないと推測される。加えて,肝斑や雀卵斑などの皮膚変色をファンデーションやコンシーラー等のメイクアップ製品により隠すことは一般的に行われており,化学療法による色素沈着に対しても使用できるものと考える。ただし,極度の色素沈着に対しては,母斑や血管腫等をカモフラージュすることを目的として設計された,隠ぺい力の非常に高いタイプのファンデーションを使用することが勧められる。また,ファンデーションの塗布および除去に際しては,過剰な摩擦や刺激を避けるようにする。

2.ざ瘡様皮疹に対するカモフラージュメイクアップについて

分子標的治療によるざ瘡様皮疹に対して,化粧品成分やメイクアップが及ぼす直接的な影響に関する研究は報告されてない。しかし,尋常性ざ瘡に対しては,化粧(メイクアップ)がその治療に影響を及ぼさず,患者の精神面でのQOLを改善するとの報告があり3)4),尋常性ざ瘡治療ガイドラインでも化粧指導が推奨されている5)。尋常性ざ瘡と異なり,無菌性であるざ瘡様皮疹に対しても,特にメイクアップを制限する根拠は見当たらない。

カモフラージュに用いられるファンデーションやコンシーラー等の製品種類の選択については,尋常性ざ瘡に準じてもよい5)。ただし,実際に使用するメイクアップ製品に関しては,症例ごとに判断する必要がある。一般に,ファンデーション処方を構成する粉体以外の成分は,通常,スキンケア製品を構成する成分とほぼ同様な成分が用いられるため,スキンケア製品が使用できる皮膚状態であればファンデーションも使用できると推測される。

メイクアップをする際には,ファンデーションを清潔な指もしくはスポンジに適量とり,優しく軽く肌におくようにして塗布することを推奨する6)。ざ瘡様皮疹部位では,皮疹をつぶさないように,軽く表面にのせるように塗布するとよい。

メイクアップの除去にはメイク落とし料を用い,過度な摩擦を避けながら,肌に化粧料が残らないように丁寧に行う。除去時に,ざ瘡がつぶれ出血した場合には,二次感染を引き起こさないよう洗顔後,手指などの接触を避けて清潔を保つ。メイクを落とした後のスキンケアは,分子標的薬によるざ瘡様皮疹に対するスキンケアのCQ(CQ35)に記載された方法に準じる。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"neoplasms", "cancer", "makeup", "cosmetic camouflage", "cover makeup", "therapy", "treatment", "patient", "oncology patient"等のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“癌”,“メイクアップ”,“カモフラージュ”,“癌治療”,“容貌”,“癌患者”,“化粧品”等のキーワードを用いて検索した。さらに,保有する文献を参考にした。

参考文献
1)土方遼子,鈴木裕美子,竹内裕美,他.化学療法の美容上の副作用に対する美容ケアによる乳がん患者のQOL改善効果.日本香粧品学会誌.2013; 37(3): 171-6.(レベルⅤ)
2)松永佳世子,早川律子,須貝哲郎,他.接触皮膚炎の既往を有する患者ならびにアトピー性皮膚炎患者を対象とした敏感肌用メーキャップ化粧品の使用試験.皮の科.2004; 3(6): 597-611.(レベルⅥ)
3)Hayashi N, Imori M, Yanagisawa M, Seto Y, Nagata O, Kawashima M. Make-up improves the quality of life of acne patients without aggravating acne eruptions during treatments. Eur J Dermatol. 2005; 15(4): 284-7.(レベルⅥ)
4)Matsuoka Y, Yoneda K, Sadahira C, Katsuura J, Moriue T, Kubota Y. Effects of skin care and makeup under instructions from dermatologists on the quality of life of female patients with acne vulgaris. J Dermatol. 2006; 33(11): 745-52.(レベルⅥ)
5)林 伸和,赤松浩彦,岩月啓氏,他.尋常性痤瘡治療ガイドライン.日皮会誌.2016; 126(6): 1045-86.(レベルⅥ)
6)Rayner VR. Camouflaging skin lesions and other disfiguring conditions. Shai A, Maibach HI, Baran R, editors. Handbook of Cosmetic Skin care. 1st edition. London: CRC Press; 2001. p.241-50.(レベルⅥ)
 
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