(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版
Ⅱ.日常整容編
CQ36 |
放射線治療による皮膚障害に対して,安全な日常的スキンケア方法は何か | |
推奨 放射線治療に伴う皮膚障害に対して,泡を用いて愛護的に洗うようにし,すすぎは十分に行い,タオルを軽く押し当てるようにして水気をふき取る。洗浄料は弱酸性のものにこだわる必要はない。また,「無添加」や「敏感肌用」にも明確な定義はなく,これらのスキンケア製品やスキンケア方法にこだわる必要はない。 |
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推奨グレード B |
洗浄料を用いて強く擦らないように洗うことが勧められる。 | |
推奨グレード C1b |
弱酸性の洗浄料を使用することを否定しない。 | |
推奨グレード C1b |
「無添加」「敏感肌用」の表示があるスキンケア製品を用いて保湿を行うことを否定しない。 |
●解説
1.洗浄方法について
放射線照射中の乳房や頭皮の皮膚洗浄に関しては,それを禁止した場合と比較して,放射線皮膚炎が軽快する報告はあっても,増悪する報告はない(CQ31参照)。
放射線による急性期障害が生じている患者に対する日常的スキンケアの方法は,レビューをもとにした提言1)2)やガイドライン3)4)に示されている。例えばUnited Kingdom Oncology Nursing Societyでは,皮膚の摩擦を避けるために,石鹸と水を用いてやさしく洗い,タオルを軽く押し当てて水分を取り除くことを推奨している3)。
2.洗浄料の使用について
洗浄料のpHは,洗浄料に含まれる界面活性剤自体の性質によっても影響されるため,単純に洗浄料のpHだけで安全性を議論することはできない。照射野の皮膚に対する弱酸性洗浄料の使用を否定しないが,弱酸性にこだわる必然性はない(CQ34参照)。
放射線治療に関して,洗浄料を比較した試験はない。ただし,放射線治療の期間中,洗浄料を含めて制限を設けずに患者自身の方法による通常のスキンケアを行った群と「温水洗浄のみ」を行った対照群とでは,皮膚反応の重症度に差がなかったことが確認されている5)。
3.「無添加」「敏感肌用」のスキンケア製品について
処方された保湿料は,その用量・用法を順守して用いる。市販のスキンケア製品を用いる場合においても,「無添加」「敏感肌用」の表示には明確な定義がなく,各製造販売業者の裁量によって決定されているに過ぎないので,特にこだわる必要はない(CQ35参照)。
検索式・参考にした二次資料
PubMedにて,"Radiotherapy", "Radio dermatitis", "radiation dermatitis"と,"Skin Care", "skincare", "Cosmetics", "body washing", "body wash"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“癌患者”,“がん患者”,“放射線療法”,“放射線治療”,“放射性皮膚炎”と“スキンケア”,“化粧品”のキーワードを用いて検索した。さらに,保有する文献を参考にした。
参考文献 | |
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1) | Aistars J. The validity of skin care protocols followed by women with breast cancer receiving external radiation. Clin J Oncol Nurs. 2006; 10(4): 487-92.(レベルⅠ) |
2) | McQuestion M. Evidence-based skin care management in radiation therapy. Semin Oncol Nurs. 2006; 22(3): 163-73.(レベルⅤ) |
3) | Skin care advice for patients undergoing radical external beam megavoltage radiotherapy. Society of Radiographers. 2015. http://www.sor.org/(レベルⅥ) |
4) | Bernier J, Bonner J, Vermorken JB, et al. Consensus guidelines for the management of radiation dermatitis and coexisting acne-like rash in patients receiving radiotherapy plus EGFR inhibitors for the treatment of squamous cell carcinoma of the head and neck. Ann Oncol. 2008; 19(1): 142-9.(レベルⅥ) |
5) | Meegan MA, Haycocks TR. An investigation into the management of acute skin reactions from tangential breast irradiation. Can J Med Radiat Technol. 1997; 28(4): 169-173, 78.(レベルⅢ) |