(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版
Ⅰ.治療編
放射線治療
CQ28 |
頭頸部領域の放射線皮膚炎に対して副腎皮質ステロイド外用薬は有用か | |
推奨グレード C1b |
他の領域に比べ放射線治療の線量が高い(70Gy相当)頭頸部領域では放射線皮膚炎に対して副腎皮質ステロイド外用薬が有用であることを示すエビデンスは乏しいが,行うことを考慮してもよい。 |
●背景・目的
頭頸部腫瘍の治療において,放射線療法および化学放射線療法は有効性が確立された治療法である一方,その代表的な副作用として放射線皮膚炎および粘膜炎がある。これらが原因で起こる放射線治療の休止は治療効果を減弱させることが知られており,対策が必要である。なかでも放射線皮膚炎は外見にも現れる副作用であることから,その対策が急務である。
●解説
50~60Gyが総線量である乳腺領域では,ステロイド外用薬の効果を示す論文が存在する1)2)。一方,70Gy相当の放射線治療が施される頭頸部領域では,前向きにデザインされた臨床試験でステロイド外用薬の効果を示したものはないため,本領域では使用する根拠に欠ける。
また,ステロイド外用薬自体が創傷治癒遅延に関与する懸念があることや,好中球減少など易感染状態に陥っている化学放射線療法時にステロイド外用薬を使用することで余計な感染が危惧されることから,使うべきではないという意見もある。しかしながら,創傷治癒遅延をきたす,もしくは感染が増加することを示す明らかなデータはなく,実臨床において使用を控えるように強く勧告する根拠は乏しい。
頭頸部領域で行われた放射線皮膚炎に関する第II相臨床試験では,洗浄と保湿処置のみでステロイド外用薬は使用しておらず3),放射線治療自体を完遂するためにステロイド外用薬が必須ではないというのが現時点でのエビデンスに基づいた結論である4)5)。
検索式・参考にした二次資料
PubMedにて,"Head and Neck Neoplasms", "Brain Neoplasms", "radiotherapy", "radiodermatitis", "steroids"等のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“頭頸部”,“放射線皮膚炎”,“治療”等のキーワードを用いて検索した。
参考文献 | |
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1) | Campbell IR, Illingworth MH. Can patients wash during radiotherapy to the breast or chest wall? A randomized controlled trial. Clin Oncol (R Coll Radiol). 1992; 4(2): 78-82.(レベルⅡ) |
2) | Boström A, Lindman H, Swartling C, Berne B, Bergh J. Potent corticosteroid cream (mometasone furoate) significantly reduces acute radiation dermatitis: results from a double-blind, randomized study. Radiother Oncol. 2001; 59(3): 257-65. |
3) | Zenda S, Ishi S, Kawashima M, et al. A Dermatitis Control Program (DeCoP) for head and neck cancer patients receiving radiotherapy: a prospective phaseⅡ study. Int J Clin Oncol. 2013; 18(2): 350-5.(レベルⅡ) |
4) | McQuestion M. Evidence-based skin care management in radiation therapy. Semin Oncol Nurs. 2006; 22(3): 163-73.(レベルⅤ) |
5) | Wong RK, Bensadoun RJ, Boers-Doets CB, et al. Clinical practice guidelines for the prevention and treatment of acute and late radiation reactions from the MASCC Skin Toxicity Study Group. Support Care Cancer. 2013; 21(10): 2933-48.(レベルⅡ) |