(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅰ.治療編 化学療法 CQ10

Ⅰ.治療編

化学療法

CQ10
化学療法による皮膚色素沈着に対する予防としてトラネキサム酸内服は有用か
  推奨グレード
C2
化学療法による皮膚色素沈着に対する予防として,トラネキサム酸を内服することは,エビデンスが乏しいため基本的に勧められない。

背景・目的

化学療法治療を行うことで,皮膚の色素沈着をきたすことがある。化学療法の有害事象である皮膚の色素沈着に対してトラネキサム酸内服により予防が可能かを検討した。

解説

化学療法によって,皮膚の色素沈着をきたすことがある。これは,化学療法薬が基底細胞層に存在するメラノサイトを刺激することによって起こるとされている。色素沈着を起こす薬剤は多岐にわたるものの,フッ化ピリミジン系薬剤やアルキル化薬,抗菌薬性抗がん剤などで頻度が高いと報告されている1)

メラノサイトにおけるメラニン産生には,ケラチノサイトが分泌するプラスミン(メラノサイト刺激因子)が関与しているとされる。トラネキサム酸はこのプラスミンを阻害する作用を有し,肝斑の皮膚色素沈着に対する治療効果があるとされている2)

検索の範囲で,トラネキサム酸が化学療法による皮膚色素沈着に対して予防効果を示すという論文報告は認められなかった。また,健常人を対象として,皮膚の色素沈着に対して,トラネキサム酸が予防効果を示すという論文も認められなかった。

よって,トラネキサム酸内服により,皮膚の色素沈着が予防できるというエビデンスはない。

なお,医療用内服トラネキサム酸の適応症には湿疹およびその類症,蕁麻疹,薬疹・中毒疹における紅斑・腫脹・瘙痒等の症状があるが,予防投与は基本的に保険対象外である。一般用医薬品としてビタミンCなどとの配合薬が肝斑に対して承認されている。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"Tranexamic Acid", "Skin Pigmentation"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“トラネキサム酸”,“色素沈着”のキーワードを用いて検索した。また,ハンドサーチでASCO年次総会の抄録から“Tranexamic Acid”,“Skin Pigmentation”のキーワードを用いて検索した。さらに,UpToDate 2014を参考にした。

参考文献
1)Singal R, Tunnessen WW Jr, Wiley JM, Hood AF. Discrete pigmentation after chemotherapy. Pediatr Dermatol. 1991; 8(3): 231-5.(レベルⅤ)
2)Shankar K, Godse K, Aurangabadkar S, et al. Evidence-based treatment for melasma: expert opinion and a review. Dermatol Ther (Heidelb). 2014; 4(2): 165-86.(レベルⅥ)
 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す