(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅰ.治療編 化学療法 CQ9

Ⅰ.治療編

化学療法

CQ9
化学療法による皮膚色素沈着に対する治療としてビタミンC内服は有用か
  推奨グレード
C2
化学療法による皮膚色素沈着に対する治療として,ビタミンCを内服することは,エビデンスが乏しいため基本的に勧められない。

背景・目的

化学療法治療を行うことで,皮膚の色素沈着をきたすことがある。化学療法の有害事象である皮膚の色素沈着に対してビタミンC内服により治療が可能かを検討した。

解説

化学療法によって,皮膚の色素沈着をきたすことがある。これは,化学療法薬が基底細胞層に存在するメラノサイトを刺激することによって起こるとされている。色素沈着を起こす薬剤は多岐にわたるものの,フッ化ピリミジン系薬剤やアルキル化薬,抗菌薬性抗がん剤などで頻度が高いと報告されている1)

検索の範囲で,化学療法による皮膚色素沈着に対してビタミンCが治療効果を示すという論文報告は認められなかった。また,健常人を対象として,皮膚の色素沈着に対して,ビタミンCを使用したという論文が2つ報告されている。一つは,日本からの報告で,肝斑患者12例に対してトラネキサム酸1,500mg/日とビタミンC3,000mg/日で3カ月まで投与したところ,1カ月ごとの皮膚の色素濃度評価(著者が独自に開発したSkin Tone Color Scale)が有意に改善したとの報告であった2)。他には中国からの報告で,肝斑のある患者に対して,無治療30例,ビタミンC300mgを1日3回,ビタミンE20mgを1日3回内服に加えてDiweiクリーム(市販のクリーム)3カ月投与したところ,肝斑の範囲と色素斑のスコア(詳細は記載なし)が有意に改善したとの報告がある3)。これらの報告には,ビタミンC単独で肝斑の色素沈着改善効果が得られるかは不明であること,臨床的に意味のある色素沈着の改善効果なのかも評価されていないこと,比較試験ではないなどの問題点がある。よって,これらをもとに,皮膚色素沈着にビタミンCが効果を示すと結論付けることはできない。

なお,医療用ビタミンC内服薬の適応症には,ビタミンC欠乏または代謝障害が関与すると推定される薬物中毒,ならびに炎症後の色素沈着がある。ただし,効果がないのに月余にわたって漫然と使用しないこととされている。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"Ascorbic Acid", "Vitamin C", "Skin Pigmentation"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“アスコルビン酸”,“ビタミンC”,“色素沈着”のキーワードを用いて検索した。また,ハンドサーチでASCO年次総会の抄録から“Ascorbic Acid”,“Vitamin C”,“Skin Pigmentation”のキーワードを用いて検索した。さらに,UpToDate 2014を参考にした。

参考文献
1)Singal R, Tunnessen WW Jr, Wiley JM, Hood AF. Discrete pigmentation after chemotherapy. Pediatr Dermatol. 1991; 8(3): 231-5.(レベルⅤ)
2)Konishi N, Kawada A, Morimoto Y, et al. New approach to the evaluation of skin color of pigmentary lesions using Skin Tone Color Scale. J Dermatol. 2007; 34(7): 441-6.(レベルⅣb)
3)Shi HF, Xu B, Guo XC, Qiu XW, Zhang YP, Ding XJ. Effect of Gan-Pi regulatory needling in treating chloasma. Chin J Integr Med. 2010; 16(1): 66-70.(レベルⅣb)
 
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