(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅰ.治療編 化学療法 CQ5

Ⅰ.治療編

化学療法

CQ5
化学療法による手足症候群に対する治療として副腎皮質ステロイド外用薬は有用か
  推奨グレード
C1b
化学療法による手足症候群に対する治療として,副腎皮質ステロイド外用薬を積極的に勧める科学的根拠は乏しいが,使用することを考慮してもよい。

背景・目的

化学療法による手足症候群(hand-foot syndrome;HFS)は手掌・足底発赤知覚不全症候群や手掌・足底紅斑,肢端紅斑,手足皮膚反応とも呼ばれ,手掌や足底に疼痛および皮膚変化をもたらす副作用である。症状が進行すると腫れ,水疱,落屑,潰瘍を伴う場合もある。抗がん剤のなかでもカペシタビンは高頻度にHFSを起こすことが知られており,その出現頻度は45~68%との報告1)2)がある。ドキソルビシン塩酸塩リポソーム(注射剤)についても,78.3%との報告3)がある。これらのHFSの発現機序は明らかになっておらず,有効な治療法はまだない。そのなかで,化学療法によるHFSの治療として副腎皮質ステロイド外用薬(以下,ステロイド外用薬)は有用かを検討した(分子標的薬によるHFSに対するステロイド外用についてはCQ14を参照)。

解説

HFSを起こす可能性のある抗がん剤としては,5-FU,ドキソルビシン,シタラビン,ビノレルビン,ドセタキセルなどが知られ,6~67%の出現頻度とされている4)

HFSの明確な発現機序は不明であるが,最も報告が多いフッ化ピリミジン系薬剤で生じるHFSは当初,手掌足蹠・指(趾)腹・足踵にびまん性の浮腫性紅斑を生じ,慢性に経過し,表皮の萎縮(有棘層と角層の菲薄化)による指紋の消失や乾燥の亢進のため手足の腹側全体に亀裂や鱗屑を認め,強い疼痛を伴う。また,手足の辺縁部や指趾関節部に色素沈着が目立つようになる。確立した治療法と予防法はなく,HFSの最も確実な処置は原因薬剤の休薬と減量のみとされている5)。そのため,日常臨床ではHFSに対して保湿薬の塗布が行われたり,感染予防のための創部ケア等が中心に行われたりしている。

検索の範囲で,化学療法によるHFSの治療として,ステロイド外用薬が治療効果を示すという報告は認められなかった。そのため,ステロイド外用薬を積極的に推奨する科学的根拠は乏しい。一方で,スニチニブやソラフェニブのようなマルチキナーゼ阻害薬のHFSに対し,ステロイド外用薬(0.01%clobetasol軟膏)による治療を推奨している文献6)はあるが,エキスパートオピニオンとしての推奨であり,その有用性について実際に前向き臨床試験として検討した報告はない。

なお,効能・効果に手足症候群を明記するステロイド外用薬はないが,ステロイド外用薬の多くが手足症候群に対応する湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症などを含む),薬疹,皮膚瘙痒症等の適応病名をもつ。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"hand-foot syndrome", "Emollients", "clinical trial"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“手足症候群”,“皮膚保湿剤”,“尿素”,“乳酸”等のキーワードを用いて検索した。

参考文献
1)Heo YS, Chang HM, Kim TW, et al. Hand-foot syndrome in patients treated with capecitabine-containing combination chemotherapy. J Clin Pharmacol. 2004; 44(10): 1166-72.(レベルⅣb)
2)Abushullaih S, Saad ED, Munsell M, Hoff PM. Incidence and severity of hand-foot syndrome in colorectal cancer patients treated with capecitabine: a single-institution experience. Cancer Invest. 2002; 20(1): 3-10.(レベルⅣb)
3)Katsumata N, Fujiwara Y, Kamura T, et al. PhaseⅡ clinical trial of pegylated liposomal doxorubicin (JNS002) in Japanese patients with mullerian carcinoma (epithelial ovarian carcinoma, primary carcinoma of fallopian tube, peritoneal carcinoma) having a therapeutic history of platinum-based chemotherapy: a PhaseⅡ Study of the Japanese Gynecologic Oncology Group. Jpn J Clin Oncol. 2008; 38(11): 777-85.(レベルⅣa)
4)Nagore E, Insa A, Sanmartín O. Antineoplastic therapy-induced palmar plantar erythrodysesthesia ('hand- foot') syndrome. Incidence, recognition and management. Am J Clin Dermatol. 2000; 1(4): 225-34.(レベルⅥ)
5)Scheithauer W, Blum J. Coming to grips with hand-foot syndrome. Insights from clinical trials evaluating capecitabine. Oncology (Williston Park). 2004; 18(9): 1161-8, 1173; discussion 1173-6, 1181-4. (Review)
6)Lacouture ME, Wu S, Robert C, et al. Evolving strategies for the management of hand-foot skin reaction associated with the multitargeted kinase inhibitors sorafenib and sunitinib. Oncologist. 2008; 13(9): 1001-11.(レベルⅤ)
 
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