(旧版)女性下部尿路症状診療ガイドライン
6
治療
Clinical Question
CQ 7
過活動膀胱に対する行動療法と薬物療法の併用は推奨されるか?
過活動膀胱に対する行動療法と薬物療法の併用は推奨されるか?
要約
過活動膀胱における行動療法と薬物療法の併用療法についてのRCT は限られている。併用療法と行動療法単独の比較では症例数は少ないながら,併用療法の有効性が認められている(レベル2)。また,併用療法と抗コリン薬単独の比較でも併用療法の一定の有用性は認められている(レベル2)。
過活動膀胱における行動療法と薬物療法の併用療法についてのRCT は限られている。併用療法と行動療法単独の比較では症例数は少ないながら,併用療法の有効性が認められている(レベル2)。また,併用療法と抗コリン薬単独の比較でも併用療法の一定の有用性は認められている(レベル2)。
推奨グレードB
過活動膀胱と行動療法との併用療法については50 の論文が抽出され,このなかから,RCT の論文6 編を引用した。
薬物療法はすべてが抗コリン薬であった。
Park らによる併用療法と行動療法の比較の検討では,膀胱訓練(24 例),トルテロジン4 mg(24 例)と併用療法(26 例)の12 週間の治療が比べられている1)。治療によって改善しなかったのはそれぞれ,12 例,10 例,8 例と併用群で少なかったが,症例数が少なく,有意差は認められなかった。副作用はそれぞれの群で0 例,6 例,7 例認められている。Szonyi らはプラセボ+膀胱訓練(30 例)とオキシブチニン(5 mg)+膀胱訓練(30例)の2群で57日間の試験を行っている2)(II)。治療により治癒しなかったのはそれぞれ25 例,20 例であり,改善しなかったのは14 例と7例であった。24 時間の排尿回数は併用群で有意な改善が認められている。
併用療法と抗コリン薬単独群の比較では,前述のPark らの報告1)に加えて,Mattiasson らはトルテロジン4 mg(257 例)とトルテロジン4 mg+膀胱訓練(244 例)の大規模比較試験を行っている3)(I)。改善しなかった症例数はそれぞれ73例と57例であり,有意差は認められなかったが併用療法群のほうが少なかった。排尿回数の減少率は33% と25%(p<0.001)であり,1 回排尿量の増加率は31% と20%(p<0.001)であった。しかし,尿意切迫感や尿失禁回数の変化率には有意差が認められなかった。また,Song らは139 例の女性過活動膀胱患者を対象に,トルテロジン4 mg 単独群と膀胱訓練群,併用療法群の比較を行い,12 週後には,排尿回数の減少量は併用群でトルテロジン単独群あるいは膀胱訓練単独群よりも有意に大きかったが,尿意切迫感については,トルテロジン単独群に対し有意差が認められなかったとしている4)(I)。最近Mattiassonらは,ソリフェナシン単独群(323例)とソリフェナシンと膀胱訓練の併用群(320例)の比較を行っている5)(I)。両群とも過活動膀胱症状を有意に改善し,治療8 週後には排尿回数の減少量で併用群のほうが有意に勝っていたが,16 週後の結果では,いずれのパラメータにおいても両群間で有意差は認められていない。Millard は,トルテロジン4 mg 単独群(252 例)とトルテロジン+骨盤底筋訓練群(223例)を24週間の治療により比較している6)(I)。改善しなかった症例数はそれぞれ36 例と41 例であり,有意差はなく,24 時間排尿回数,尿失禁回数にも両群間に有意差がみられていない。
Park らによる併用療法と行動療法の比較の検討では,膀胱訓練(24 例),トルテロジン4 mg(24 例)と併用療法(26 例)の12 週間の治療が比べられている1)。治療によって改善しなかったのはそれぞれ,12 例,10 例,8 例と併用群で少なかったが,症例数が少なく,有意差は認められなかった。副作用はそれぞれの群で0 例,6 例,7 例認められている。Szonyi らはプラセボ+膀胱訓練(30 例)とオキシブチニン(5 mg)+膀胱訓練(30例)の2群で57日間の試験を行っている2)(II)。治療により治癒しなかったのはそれぞれ25 例,20 例であり,改善しなかったのは14 例と7例であった。24 時間の排尿回数は併用群で有意な改善が認められている。
併用療法と抗コリン薬単独群の比較では,前述のPark らの報告1)に加えて,Mattiasson らはトルテロジン4 mg(257 例)とトルテロジン4 mg+膀胱訓練(244 例)の大規模比較試験を行っている3)(I)。改善しなかった症例数はそれぞれ73例と57例であり,有意差は認められなかったが併用療法群のほうが少なかった。排尿回数の減少率は33% と25%(p<0.001)であり,1 回排尿量の増加率は31% と20%(p<0.001)であった。しかし,尿意切迫感や尿失禁回数の変化率には有意差が認められなかった。また,Song らは139 例の女性過活動膀胱患者を対象に,トルテロジン4 mg 単独群と膀胱訓練群,併用療法群の比較を行い,12 週後には,排尿回数の減少量は併用群でトルテロジン単独群あるいは膀胱訓練単独群よりも有意に大きかったが,尿意切迫感については,トルテロジン単独群に対し有意差が認められなかったとしている4)(I)。最近Mattiassonらは,ソリフェナシン単独群(323例)とソリフェナシンと膀胱訓練の併用群(320例)の比較を行っている5)(I)。両群とも過活動膀胱症状を有意に改善し,治療8 週後には排尿回数の減少量で併用群のほうが有意に勝っていたが,16 週後の結果では,いずれのパラメータにおいても両群間で有意差は認められていない。Millard は,トルテロジン4 mg 単独群(252 例)とトルテロジン+骨盤底筋訓練群(223例)を24週間の治療により比較している6)(I)。改善しなかった症例数はそれぞれ36 例と41 例であり,有意差はなく,24 時間排尿回数,尿失禁回数にも両群間に有意差がみられていない。
参考文献 |
1) | Park JT, Song C, Choo M. The effects of bladder training, tolterodine, and bladder training with tolterodine in female atients with overactive bladder; prospective, randomized study. Neurourol Urodyn 2002; 21: 434-435(Abstr 119) |
2) | Szonyi G, Collas DM, Ding YY, Malone-Lee JG. Oxybutynin with bladder retraining for detrusor instability in elderly people: a randomized controlled trial. Age Ageing 1995; 24: 287-291(II) |
3) | Mattiasson A, Blaakaer J, Høye K, Wein AJ, the Tolterodine Scandinavian Study Group. Simplified bladder training augments the effectiveness of tolterodine in patients with an overactive bladder. BJU Int 2003; 91: 54-60(I) |
4) | Song C, Park JT, Heo KO, Lee KS, Choo MS. Effects of bladder training and/or tolterodine in female patients with overactive bladder syndorome: a prospective, randomized study. J Korean Med Sci 2006; 21: 1060-1063(I) |
5) | Mattiasson A, Masala A, Morton R, Bolodeoku J for the SOLAR Study Group. Efficacy of simplified bladder training in patients with overacticve bladder receiving a solifenacin flexible-dose regimen: results from a randomized study. BJU Int 2010; 105: 1126-1135(I) |
6) | Millard RJ. Clinical efficacy of tolterodine with or without a simplified pelvic floor exercise regimen. Neurourol Urodyn 2004; 23: 48-53(I) |